そのポケモンGOをプレイするために必要なスマホ側も、ブームにあやかろうとする動きが相次いでいる。真っ先に反応したのは、MVNOのDTI。同社は、ポケモンGOのデータ通信量が1年間無料になる「DTI SIMノーカウント」を発表した。これは、LINEなどのメッセンジャーアプリの通信量をカウントしない、いわゆる「ゼロレーティング」を導入したサービスを、ポケモンGOへ応用したものだ。通信の秘密やネットワークの中立性の侵害への懸念はあるが、こうしたサービスは他社にも広がっていくだろう。実際、同じくMVNOのFREETELも、ポケモンGOを無料通信の対象に含めると発表しているほか、日本通信の会長である三田聖二氏も、Twitter上で同様の施策を行うことを示唆している(三田氏のコメント)。
ゼロレーティングを採用しない会社でも、ポケモンGOへの期待は高い。25日にIP電話での通話定額を発表したイオンモバイルを率いる、イオンリテールの住居余暇商商品企画本部 デジタル事業部長の橋本昌一氏は、ポケモンGOの登場がMVNOにとって追い風になると語る。橋本氏によると、子どもがポケモンGO欲しさに、ゲーム機に代わってスマホを購入する可能性が高いとのこと。その際に、端末や通信料が安価な、MVNOが選ばれる余地が大きいという。
同様に、CCC傘下のトーンモバイルの石田宏樹社長も、同社の主力機種である「TONE(m15)」に「もっとも安心してポケモンGOを遊んでいただける環境を既に整えている」と語る。石田氏によると、TONE(m15)には、歩きスマホ防止機能や子どもが危険な場所に入らないようにするジオフェンシング機能が盛り込まれており、不満点として挙がっていたバッテリーの持ちも、新たに配信するソフトウェアアップデートで150〜200%向上するという。
ここまで影響力が高くなると、ポケモンGOが端末やネットワーク選びの“基準”になる可能性もある。端末に関しては、Androidの場合、Android 4.4以上でかつ2GB以上のメインメモリが必要。iOSは、8以上のバージョンで、iPhone 5以降の端末が対応環境として挙げられている。古い端末を持つユーザーが、ポケモンGOをプレイしたいがために、機種変更するということもありそうだ。
また、ポケモンGOはAR機能を利用するために、ジャイロセンサーが必要となる。一部のミッドレンジ以下のSIMロックフリースマホはこの機能に対応していないため、選択肢から外れてしまう恐れもある。バッテリーの持ちのいいスマホに人気が集中することも十分ありうる。既に一部家電量販店ではポケモンGOコーナーができ、モバイルバッテリーの売れ行きが上がっているという。かつては、LINEを利用するためにフィーチャーフォンからスマホに変える動きがあったことを考えると、ポケモンGOを快適に遊べる機種が選ばれるようになっても不思議ではない。
一方で、大手3キャリアは、現状だと先に述べたような歩きスマホの注意喚起を出すにとどまっている。MVNOのようなゼロレーティングは、通信の秘密やネットワークの中立性の問題をはらんでいるため、手を出しにくいはずだ。ただ、新機種への買い替えを促進できたり、データ量の大きなプランに変えることを促せたりと、今は千載一遇のチャンスが広がっている。諸外国に比べて低いスマホ率を向上させられる可能性もあるだろう。かつてソフトバンクがIngressでNianticと提携したように、キャリアショップへの誘導にもポケモンGOが一役買うかもしれない。
従来は、ネットワークがあり、そこにつながって動く端末があり、コンテンツはこうした下位レイヤーの影響を大きく受けていた。速度が遅ければ容量は小さくなるし、端末の処理能力が低ければ描画はチープになる。もちろん、ポケモンGOも、既存のネットワークと端末で動くため、構造は変わっていないという見方もある。しかしながら、ネットワークサービスに変化を促し、端末選びの基準が変わってくるという点で、下位レイヤーに大きな影響力を与える存在であることも確かだ。業界にどのような変化をもたらすのか、今後の展開も期待して見守りたい。
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