「Android One」がヒット、SIMフリー端末販売も強化――好調Y!mobileの戦略を聞く(1/4 ページ)

» 2017年03月09日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 ソフトバンクのサブブランドとして誕生したY!mobileが、“格安スマホ”市場を席巻している。1月に開催された春商戦向けの発表会では、大手3キャリアを除くスマートフォン販売台数シェアが全体の約4割であることが明かされ、その強さを見せつけた格好だ。2月24日には、春モデルの第1弾となるシャープ製の「Android One S1」を発売。3月10日には、京セラ製で赤外線に対応した、京セラ製「Android One S2」の発売も控えている。1月の発表会では、学割やYahoo!プレミアムの無料化など、ユーザーメリットのある施策も、矢継ぎ早に送り出した。

 一方で、SIMロックフリー端末の拡大を受け、“SIMカードのみの販売”にもアクセルを踏み始めた。当初から、SIMロックフリー端末での利用を想定したサービス設計になっていたが、ここに力を入れることで、ボリュームが拡大。ラインアップの中の1機種ぶん程度の規模に成長いたという。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのY!mobileだが、同社(ソフトバンク)はどのような戦略で事業を展開しているのか。ソフトバンクでY!mobile事業を統括する、Y!mobile事業推進本部 執行役員本部長の寺尾洋幸氏がインタビューに応えた。

Y!mobile Y!mobile事業推進本部 執行役員本部長 寺尾洋幸氏

507SHがヒットしたのは予想外だった

――(聞き手:石野純也) 発表会では、格安スマホ市場で4割というシェアが公開されました。やはり勢いがありますね。

寺尾氏 どう受け取るかにもよりますが、お店を持っているのと、価格はやはり強みになっています。以前の格安SIMを使う方は、少しリテラシーが高く、こういう言い方はよくないのかもしれませんが、よく理解されている方でした。ただ、かなりの方がスマホは安くしたいけどできない。それが、少しずつ目に見えるようになってきました。調べれば分かることなのかもしれませんが、その後ろにいる方々が増えてきた結果、お店が効果を発揮してきました。

―― 躍進したといわれていますが、具体的にはどの段階で火がついたのでしょうか。この1年をあらためて振り返ってください。

寺尾氏 去年(2016年)の今ごろ、大きなトピックが2つありました。1つは総務省のガイドラインで、これが厳しくなった結果、お客さんの意識がスマホの値段に行きました。僕らも含め、MVNOの料金が安いとなり、動きが出始めました。もう1つは、昨年3月に「iPhone 5s」を導入したことです。このiPhoneからスタートして、そこから先は6月に「ワンキュッパ割」を入れ、それと同時にCMを開始してからはずっと上がり調子です。

―― ソフトバンク全体としては、ARPUが落ちています。

寺尾氏 ソフトバンク全体としてどう見ていくのかは、すごく難しい。僕らが増えると確かにARPUは下がりますが、全体の数は増えることになります。ただ、大手側に難しさは出てきているのは確かで、いろいろなところでどう価値を出していくのか、これは大きなテーマになっています。これは、(ソフトバンクだけでなく)ドコモさん、auさんもいろいろとやられているのだと思います。

―― iPhone 5sがヒットした一方で、「Android One」の第1弾「507SH」も好調だと伺いました。この成功要因は、どこにあったのでしょうか。

Y!mobile 2016年7月に発売され、好調に売れた「507SH」(シャープ製)

寺尾氏 実質0円などの売り方がありましたが、507SHに関しては、ちゃんと値段をつけて売り続けてきました。世間から見て、高いか安いかは分かりませんが、(実質)1万円相当の値段はつけています。ただ、それでも販売台数は、ほかの廉価端末と変わらないぐらいです。

 これ(507SHのヒット)は、外の皆さんから見ると、「ふーん」という感じかもしれませんが、中から見ると大変なサプライズでした。常識では、一番安い機種が一番売れるからです。その中で、安くもない端末が売れた。一時期はiPhoneより売れていたぐらいで、GfKのデータを見ても分かるように、今もずっと上位にランクインしています。

 成功の要因は、正直ブランディングだと思っています。(レビューで)普通の端末だと書かれていましたが、その通りで普通なんです(笑)。ただ、安心して使っていただけるスペックで、そこそこ気後れせずに使える。自分自身も、プライベートはこの端末にして、ゲームなどをやっています。

 これは、コンセプトがすごくよかった。夏に発表した際には、既に今回の春モデルまで決めていました。シリーズで3モデル決めていて、こういうふうにすることで店員さんのモチベーションも上がりますし、何より分かりやすくなる。基本的なUXは変わらないとなると、非常に売りやすいのだと思います。

―― Android Oneですが、S1はワンセグもなく、もっと普通になってしまいました。

寺尾氏 より価格がこなれています(笑)。これで、いわゆる最廉価ゾーンに放り込めるようになりました。スペック自体はほぼ横ばいで、価格を下げ、もう一段買いやすくなる。最初に出したのがミッドレンジで、ローエンドに2モデルあるというのが、われわれのポートフォリオです。iPhoneはiPhoneとしてありながら、ミッドレンジモデルからローエンドまであるというのは、お客さんから見てもバリエーションになりますし、経営側から見てもいいことです。

Y!mobile フルHD(1080×1920ピクセル)IGZOディスプレイを搭載する「S1」(シャープ製)
Y!mobile 「S2」(京セラ製)は耐衝撃性能を持ち、赤外線通信を搭載した

SIMロックフリー端末は完全にはサポートできない

―― Android OneとiPhoneの2本柱を立てた一方で、SIMフリー端末と組み合わせる使い方も広がっています。こちらについては、いかがでしょう。

寺尾氏 ジワジワと伸びていますね。正直なところ、これはトライマーケットでした。今はSIMフリー端末がものすごく出ていて、HuaweiさんやASUSさんなど、いいものもあります。その端末を使えるようにするというのが、1つの答えです。もちろん、それを全員が使えるとは思っていません。APNという言葉を言った瞬間に「無理」となる人はいます。ただ、せっかくいい端末がある中で、それを閉ざす必要はありません。

 これは発表会でも申し上げたことですが、(サービス設計として)最初からそう作ってありました。端末とネットワークを分離させ、APN情報も開示して、Androidに関してはテザリングもできるようにしていました。これは、近い将来、そういう時代が来ると思っていたからで、実際に来ていますよね。今後、これがどこに向かうのかは、正直なところ分かりません。端末セット型の買い方が続くのかもしれませんし、逆にPCのように、本体だけ買っていくようになるのかもしれない。いろいろなことをトライしながら進めていきます。

Y!mobile Y!mobileオンラインストアではHuaweiの「P9 lite」とSIMのセット商品が販売されているが、P9 liteをはじめとするSIMロックフリー端末は、Y!mobileのサービスが利用できるスマホとしては保証されていない

―― それにしても、規模が大きくなってきましたね。何が効いているのでしょうか。

寺尾氏 量販店の店頭で売らせていただいているのが大きいですね。Y!mobileのショップでも、特にHuaweiさんの商品はやらせていただいています。SIMフリー端末とSIMカードという形ですが……(言葉を濁す)。

 なぜモゴモゴ言っているかと言うと、サポートやサービス連携など、全部確認できていないところがあるからで、これはよく分かっている方へのメッセージとして出しています。完全にサポートしてフォローはできず、少しお客さま側にお願いするところが出てきてしまいますからね。初めてスマホを使われる方など、できるだけサポートをご希望される方には、こちら(Android One)の方が安心してお話ができます。

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