LINEモバイルは3月14日、同社のMVNOサービス「LINEモバイル」に関する発表会を開催した。会では、サービス開始から半年を迎えたLINEモバイルの近況や今後の展開、同社初となるテレビCMに関する発表を行った。
発表会終了後、同社の嘉戸彩乃社長が報道関係者との囲み取材に応じた。この記事では、その模様をお伝えする。
―― 発表会で出ていた「申込完了件数」のグラフで、2月から3月(の第1週)にかけてポンと伸びている理由は何か。
嘉戸社長 まず、3月は商戦期ということもあり、季節的に伸びていることがある。また、私たちも驚くほどに予想を上回る申し込みが毎月あり、その多くがクチコミによるもの。その流れ(クチコミによる加入効果)が、3月に入ってより如実化したこともある。
ネット記事を調べて(LINEモバイルを)買うという「導線」がしっかりできてきたのだと思う。
―― 2016年9月の発表会の時に「(LINEモバイルには)LINEを使っていない人を増やす(LINEに誘導する)というミッションもある」という話をしていたかと思う。サービス開始から半年を振り返って、LINEモバイルで初めてLINEを使う、というユーザーを獲得できている実感はあるか。
嘉戸社長 それを大きく感じることもある。
(LINEモバイルでは)「(回線の)契約者」とは別に「利用者」を登録するようになっていて、(利用者の)年齢が分かるようになっている。60〜80代の利用者が、お子さんが契約した端末をプレゼントされて使い始める、といったケースもあるようだ。
カスタマーサポートにも「初めてLINEを使うが、連携はどうすればいいの?」「どこをスワイプすればトークができるの?」といった質問が寄せられることもある。
―― 契約者の伸びをパーセンテージで示されても、実数が分からないことには……。
嘉戸社長 皆様も(契約者の実数を)開示してほしいと思っているでしょうが、競合との兼ね合いもあるので、公開は控えさせていただきたい。
―― 他社だと「50万契約突破」「100万契約突破」といった節目で公表することもある。具体的な実数でなくとも、目安を突破した段階で発表するといった手法もあると思うのだが、そのような形での公表もしない考えなのか。
嘉戸社長 今のところはない。今後、何らかの分かりやすい数字が出てきたら発表をする可能性はある。状況に応じて、開示する内容は決めていきたい。
―― 今回、「MUSIC+プラン」の強化を発表したが、このプランが全体の契約数に占める割合はどのくらいか。
嘉戸社長 純増(新規契約者)の中で見ると、そこまで大きな数ではない。プランの選択比率では「コミュニケーションフリープラン」「LINEフリープラン」の順に多く、そこにMUSIC+プランが続く、といったイメージだ。
―― のんさんをCMに起用したことについて、事務所の問題などが報じられているが、そこは懸念しなかったのか。
嘉戸社長 事務所に関する問題があることは認識している。(それでも)私たちがなぜのんさんを起用したかというと、「愛と革新」というキャッチコピーを表現できるのが彼女しかいないと確信しているからだ。
―― (のんさんの起用は)社長の意向ということか。
嘉戸社長 そうだ。会社全体の意向でもある。
―― 新しいテレビCMでは「のんさん」「LINE・SNS使い放題」「値段」しか出てこなかったと思うが、コミュニケーションフリープランといったプラン名では訴求しないのか。
嘉戸社長 「LINE・SNS使い放題」「値段」という(重要な情報は)伝えている。できる限りシンプルに伝えることを大事にした。
―― 通話定額オプションは、いくつかプランを用意するのか。
嘉戸社長 詳細については後日発表させてほしい。
―― カウントフリープランが、実際にどのくらい使われているか分かる指標はあるか。
嘉戸社長 ニュースリリースにも記載しているが、LINEモバイルの全通信量の約3割がカウントフリーによる通信となっている(筆者注:報道関係者へのニュースリリース配布は発表会が終了した後に行われた)。
―― ユーザーへの満足度調査で「通信速度」が約40%とのことで、(LINEモバイルが高速であるという評判の割には)低い印象を受ける。
嘉戸社長 それは「LINEモバイルのどの点に満足していますか?」という聞き方だったからだと思う。「とても満足」「満足」「そうでもない」と項目別に聞けば違う結果だったのかなと思う。
―― テレビCMはシリーズ化されることが多いと思うが、のんさんで第2弾以降を作る予定はあるか。
嘉戸社長 検討はしている。決まり次第、改めて発表したい。
―― リアル店舗への展開やテレビCMを始めるのは、今までのWeb主体の募集に限界を感じてのことか。
嘉戸社長 全くそんなことはない。LINEのサービスは小さく始めて、どのようなサービスが良いのか検討し、覚悟や自信を持って提供できると判断した段階で一気に勝負をかけて、より多くの人に知ってもらう。それがもともとの手法の1つだ。
―― リアル店舗は10店舗スタートだが、ビックカメラやヨドバシカメラだけで100店舗まで広げていくのか。
嘉戸社長 違う。(タッチポイントの構築方法は)いろいろな方法があると思っている。サポート拠点であったり、そうではないカウンターであったり、もしくは私たちの旗艦店であったり、さまざまな形のものをお客さまのニーズに合わせて提供する形になると思う。
―― (タッチポイントの)イメージ図では沖縄にも点があったが、展開予定はあるのか。
嘉戸社長 沖縄にも(タッチポイントを)出す可能性はある。
今回の初回10店舗は、人口の多いところからやってみようといことで始めている。
―― 「旗艦店」というのは「LINEモバイルショップ」みたいなイメージか。
嘉戸社長 そうだ。
―― 最近は、渋谷が“熱い”ですが、出店予定地は決めているのか(筆者注:渋谷ではMVNOのショップが増加傾向にある)。
嘉戸社長 渋谷は確かに熱い。場所はまだ検討している。
―― Webと店舗の契約比率はどのくらいになると考えているか。
嘉戸社長 実際にやってみないと分からないところではある。Webでは恐らく(MVNOサービスの中では)上から3番目以内に入っていると思うが、今後は(販路の拡大で)より多くの人に触っていただきたいと考えている。
―― サポート拠点は、具体的にどのような形を考えているか。
嘉戸社長 店舗の詳細については、後日発表とさせていただければと思う。
―― 100店舗達成はいつまでに。
嘉戸社長 できるだけ早く、が一番の答えだともう。
―― 他社ではソフトバンク回線を使ったMVNOサービスを始めるところもあるが、関心はあるか。
嘉戸社長 もちろんある。お客さまにどういった形なら「手が伸びる」のか日々検討を続けている。その中で、一番良いと思うことをやり続ける。
―― (セット販売の)端末の売れ筋は。
嘉戸社長 「LINEフリープラン」では1万円台前半の端末、コミュニケーションフリープランでは3万円以上の端末がよく売れる。その間の価格帯はプランにかかわらずまんべんなく売れる。
最近では、ファーウェイの「nova lite」が人気で、在庫面でお客さまにご迷惑を掛けている状況だ。
―― 契約の実数でなくても構わないので、サービス開始から半年経過した段階での、LINEモバイルならではのユーザー傾向があれば教えてほしい。
嘉戸社長 他社の実態はそこまで詳しくないので推測の域からは出ないが、LINEモバイルは非常に幅広いユーザー層に使われていることが分かってきている。
MVNOは、お昼に一番トラフィックが来てすごく混む。サラリーマンがたくさん使って一気に伸びるという感じだが、(LINEモバイルは)他とはトラフィックの流れが違っている。子供が使う、大学生が使う、30〜40代の働いている人が使う……といったユーザーの多様性があり、(ユーザーの用途別に)プランの割り付けができているのではないかと思う。
―― (親会社の)LINEがMWC 2017でクラウドAI「Clova」を発表したが、それをMUSIC+プランと絡めるといった構想はあるのか(筆者注:Clova搭載製品として、LINEは2017年初夏にスマートスピーカー「WAVE」を発売する予定)。
嘉戸社長 そこは舛田(LINEの舛田淳CSMO)と相談しないといけないところではある。
私たちのミッションは、人と人、人と情報の距離をモバイル通信でつなぐこと。「スマホの次」がもし出てきて、社内で声が上がれば(LINEと)協業していくことになる。
―― MVNOとしてはLINEモバイルは後発。一番の差別化要素はどこにあるか。
嘉戸社長 お客さまからよく言われるのはやはりカウントフリー機能。通信量を気にせず安心して使える。「これだけしか(通信量が)減らなかった」というゲーム感覚に近い部分もある。
―― (カウントフリーは)他社でも同様のサービスを提供しているが。
嘉戸社長 本当の意味で、私たちと同じサービスをしている所はないのではないかと思う。カウントフリーを「カウントフリー」として提供している会社はあるが、データ容量を使い切っても使い続けられるのか(という問題がある)と。それを支えるインフラについても、“パッション”を持って提供しているのかというと、そうでもないのではないか。
―― Webにおいて、自社サイト申し込みとAmazon.co.jp(で購入できるエントリーパック)経由の申し込み比率はどうなっているか
嘉戸社長 具体的な数値は開示できないが、自社サイト申し込みの方がまだまだ多い。
―― 韓国ではLINEキャラクターを使ったスマホが出ている。オリジナル端末として導入はしないのか。
嘉戸社長 オープンに考えてはいます。
―― コミュニケーションフリープランのカウントフリー対象サービスを拡大する予定はあるか。
嘉戸社長 今のところは具体的な予定はないが、「これはコミュニケーションインフラになるものなんだ」というサービスが出てきたら、追加したいと考えている。
―― MUSIC+プランの拡充は、ユーザからの要望によるものか。
嘉戸社長 そうだ。モバイル通信量を気にせず、LINE MUSICだけではなく、自分が使っているサービスも使いたいという声をうかがう機会も多い。ならば、挑戦しようと。
―― 「LINE LIVE」のカウントフリー化はないのか。
嘉戸社長 ちょっとまだ難しい。
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