スマホの「対応Band」はどうやって決める? 大手キャリアが説明(3/3 ページ)

» 2022年04月12日 17時30分 公開
[井上翔ITmedia]
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構成員からの質疑

 各キャリアからの説明が終わった後、ワーキンググループの構成員からの意見表明や質疑応答が行われた。特に注目すべきやりとりを抜粋してお届けする。なお、分かりやすさを優先するために、やりとりの言い回しや順番を変更している部分もある。

対応Bandが増えると、どれだけコストが増えるの?

構成員A 「(国内で使われている)全周波数帯に対応すると端末のコストが上がるのではないか」という話がありました。サムスン電子が韓国では(韓国の)全周波数帯に対応する端末を出している一方で、日本ではそれぞれのキャリアに対応する端末を出していますが、端末のコスト面で本当に大きな差が出ているのでしょうか。総務省におかれましては、この点をよく調べていただきたいです。

構成員B サムスン電子の端末は、日本でも韓国でもオンラインショップでの価格が出ているので、為替レートの換算は必要でしょうが、幾つかの端末についてオンライン価格の比較だけでも検討いただきたいです。

事務局(総務省) オンライン価格の比較については調査を次回までにしたいと考えています。

大きな値引きができるなら、Band追加で増したコストを吸収できるのでは?

構成員C ソフトバンクの資料には、対応Bandを増やした際のデメリットとして「端末販売価格上昇の影響が懸念され、お客さまが低価格の端末を選択する機会を奪ってしまうことにつながる懸念がある」との記載があります。私の理解では、端末の大幅値引き(参考記事)をしても、端末販売での収支は確保(黒字化)できていると話していたかと思います。それであれば、(対応Bandの)共通化に伴う端末のコスト増も、相当に大きなものでなければ吸収できるのではないでしょうか。他国ではそれが実現できているようですので。

ソフトバンク 上昇するコスト次第だと思います。(対応Bandの追加によるコスト上昇が)どの程度になるのかは、我々には分かりません。おっしゃる通り、コスト増が極めて小さいのであればお客さまへの影響はないかもしれませんし、過大になってしまうのなら影響は出ると思います。いずれにしても「コスト次第」だと思います。

座長 この指摘は、先ほどのコストに関する調査のお願いともつながってくると思います。事務局(総務省)に対する大きな宿題になるでしょう。

Band単位のエリアマップも必要なのではないか?

構成員B 現状だと、(端末をそのまま使って)他社に乗り換えると、端末の対応Bandと基地局の使っているBandの組み合わせによってはつながらなくなることも考えられます。ドコモの提案のように、端末の対応Band情報を一元化して提供するのはもちろんですが、どのエリアでどのBandの電波が射出しているのか確認できるようにする必要もあるのではないでしょうか。ドコモさんは特定の周波数帯(※3)でのみエリア化している場所をマップでしっかりと確認できますが、他社はそうなっていないようです。特に地方にお住まいの人は困ると思うので、特定エリアにおけるBandの整備状況を出すことも検討してみてはいかがでしょうか。

(※3)ドコモのエリアマップでは、Xi(LTE)エリアのうちBand 19でのみ整備された場所を色分けして示している。Band 19非対応の端末の場合、Band 1(とBand 3)さえあれば、そのエリアを避けることで使える

KDDI エリアマップについては、お客さまに分かりやすい表示を心掛けています。ただ、他社における表示ポリシーが弊社ではどうなっているのか、再確認したいと思います。(Band別のエリアを)隠す意図はありませんが、キャリアによってエリアマップの表示ポリシーに異なる面もあります。(Band別のエリアマップが)良いのか悪いのかについて、丁寧な議論も必要かもしれないので、改めて確認したいと思います。

ソフトバンク ご指摘の通り、弊社は現在4G LTEのエリアマップを「4G LTE」としてしか出していません(Band別の表示は行っていない)。ネットワークの構成は(複数のBandで)複合的に作っている面もありますので、どういうことができるのか、今後検討したいと思います。

楽天モバイル 弊社では4G(LTE)が1.7GHz帯(Band 3)だけとなっております。そのため、特にだし分けはしておりません。パートナー回線として(KDDIと沖縄セルラー電話から)ローミングでお借りしているエリアに関しては区別できる形で表記しています。今後、ローミングが終了するエリアについては、対象地域にお住まいのお客さまに個別にご案内を差し上げている状況です。

次回は端末メーカーへのヒアリング 一部非公開の可能性も

 競争ルールの検証に関するWGの次回会合は、4月下旬に開催される予定となっている。この会合では、MVNO(テレコムサービス協会 MVNO委員会)と端末メーカーからのヒアリングを実施される予定だが、出席する端末メーカーは調整中だという。

 コストに関する情報は、経営上センシティブな情報でもある。出席自体をためらうメーカーもあるようで、総務省は会合の一部を非公開とすることで出席を促す方針を取るようだ。今回の議論において一番重要と考えられる端末メーカーの話は、公開されない可能性がある。

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