各種設定は前面のガラスフレーム内に配置されたタッチセンサ式ボタンで行う。静電式タッチセンタの感度に問題はなく、使い勝手はまずまずだ。画面の調整項目は、明るさ、コントラスト、ズーム、シャープネス、カラー設定などを備えているが、色温度やガンマの数値設定には対応していない。
カラー設定は、PC接続用の「グラフィックス」とAV機器接続用の「ビデオ」から選択する仕組み。PC接続時のカラー設定は、プリセットの画質モードである「標準」「マルチメディア」「ゲーム」「暖色」「冷色」「sRGB」のほか、RGBの値を個別に設定できる。AV機器接続時のカラー設定は、「ムービー」「スポーツ」「自然色」となり、色相と彩度を調整できる仕様だ。
SP2208WFPと同様、むやみに画質モードを変更すると、ガンマカーブやシャープネスが強調されすぎてアクの強い表示になるので、基本的には「標準」モードを常用し、表示するコンテンツに応じて別のモードを順次試していくのがベターだ。
sRGBモードは広色域パネルの色域をsRGBに擬似的に狭めて表示するモードだ。インターネットコンテンツの標準がsRGBの色域である現状では、広色域パネル搭載のモデルであってもsRGBモードの実装は極めて有効で、同モードの採用は高く評価したい。
しかし、このsRGBモードを実際に試したところ、彩度が低下しすぎて階調性も崩れてしまい、sRGBの色域を再現する画質モードとしては正確さに欠ける印象を持った。Webにアップする画像データを狭い色域の旧型ディスプレイで見た場合、どのように見えるのかを確認する程度には使えるかもしれないが、今後はより精度の高いsRGBモードを期待したいところだ。
1680×1050ドット以外の解像度を入力した際のスケーリング機能は充実しており、アスペクト比を無視した全画面拡大表示(充填)、アスペクト比を16:9に維持した状態での全画面拡大表示(16:9)、アスペクト比を4:3に維持した状態での全画面拡大表示(4:3)、ドットバイドット表示(1:1)から選択できる。全画面拡大表示モードがなぜ「充填」なのかは不明だが、恐らく誤訳と思われる。
さらに、11段階(等倍表示を含む)で表示の拡大が可能なズーム機能を備えているのはありがたい。ズーム機能を使うことで、ドットバイドット表示の設定から黒帯部分を減らして少しだけ大きく表示したり、全画面拡大表示の設定からTVのオーバースキャンのように周辺部分を少しカットするなどの柔軟な調整ができる。


1080pの映像も上下に黒帯を入れて16:9できちんと表示できる(写真=左)。1080pの映像をズーム機能で少しカットした表示例(写真=中央)。720pの映像をドットバイドットで表示した例(写真=右)液晶ディスプレイ市場は価格競争が激しく、ボディにかけられるコストは限られており、各社ともデザインより機能性を重視したシンプルなケースを採用しているのが一般的だ。こうした中でDELL CRYSTALほどボディにコストをかけた製品が登場するのは珍しく、没個性的な外観のデザインが並ぶ市場に一石を投じる新タイプのディスプレイであることは間違いない。こうした製品がデルから登場するのだから、時代は変わったものだ。
とはいえ、この製品が1系統入力に対応した1680×1050ドット表示の22インチワイド液晶ディスプレイということを考えると、14万9000円という価格はかなり割高といわざるをえない。液晶ディスプレイ市場のプライスリーダーとして認知されているデルとしては、異例といえる“プレミアム”な価格設定だ。
この価格であれば、視野角で有利なVA方式のパネルや豊富なインタフェースを採用した1920×1200ドット(WUXGA)表示の24〜27インチワイド液晶ディスプレイが買えてしまうので、ディスプレイの本分である表示性能を重視するとかなり分が悪い。逆にいえば、デルはそれほどまでにDELL CRYSTALのデザインに自信を持っているのだろう。個人的に見ても確かにこれは物欲を刺激するものがあると思う。
DELL CRYSTALは、良くも悪くもデザインを最優先させた液晶ディスプレイだ。それだけにこの対価を払ってでも所有したいと思うほどデザインが気に入ったユーザーでなければ、購入は積極的におすすめできない。例えば、「部屋のインテリア1つ1つをこだわり抜いて選んでいるのに、PC回りの風景はどうしても武骨さが残る」などと考えている人だったら、検討してみる価値はあるだろう。今後はこのデザインに最高性能のパネルや機能を凝縮した“真のプレミアムモデル”のリリースも期待したい。
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