「Centrino」はどこに飛んでいく(1/2 ページ)

» 2009年06月23日 19時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

日本のコンピュータ市場は堅調、改善の兆しもある

 インテルは、6月23日に定例の記者説明会を行い、6月2日から行われたCOMPUTEX TAIPEI 2009で紹介された次世代プラットフォームや先日発表された内蔵タイプWiMAXモジュールによるノートPCコンピューティング、そして、超薄型ノートPC向けプラットフォームの取り組みなどが説明された。

 インテル代表取締役社長の吉田和正氏は、日本のコンピュータ市場の状況について堅調であると述べ、特に、低価格化のきっかけとなったNetbookや薄型ノートPCなどのモバイル関連製品の販売が貢献していると説明、Atomの需要も好調であると語った。サーバ市場でも現在企業で稼働している製品の買い替え需要がまもなく高まり、省電力タイプのサーバ需要も拡大していくだろうという見通しを示した。

 世界のGDP成長率とインテルの研究開発費の推移を重ねたグラフでは、GDP成長率が時折、前年を大きく下回ることがあっても、インテルの研究開発費は常に増加していることを示しながら、「新製品の開発が(インテル成長の)キー」(吉田氏)と、継続的な研究開発投資を行っていることがインテルの成長につながっているとアピールした。

 インテルが2003年に立ち上げたプラットフォームブランド「Centrino」によって、ノートPCが標準で無線LANを内蔵するようになり、ノートPCの普及台数がデスクトップPCを上回るようになったが、その一方で、ノートPCの多くがデスクトップPCのリプレースに過ぎなかったと吉田氏は振り返る。Netbookをきっかけとして、2008年から7〜13型ディスプレイを搭載するモデルの台数がノートPCに占める割合で増えるなど、携帯利用を意識したモバイルノートPCが普及し始めたが、吉田氏は、ユーザーが扱うデータ量が増えてくると今度はNetbookの性能では間に合わなくなるという考えも示している。吉田氏は、パフォーマンスが高く、省電力で、軽量スリム、デザインも優れた「真の意味でのモバイルノートPCの登場が必要」と主張する。また、携帯するノートPCを十分に活用するには、「ノートPCとWiMAXとは切り離せない関係」と、これから登場する予定のWiMAXモジュール内蔵ノートPCの有効性も訴求している。

吉田氏が示した世界のGDP成長率とインテルの研究開発費の推移(写真=左)。同じく、吉田氏の説明で紹介された7〜13.3型ディスプレイ搭載ノートPCの台数がノートPC全体に占める割合の推移(写真=右)

「潜在しているニーズ」を実現するノートPCが求められている

 インテル マーケティング本部 本部長の江田麻季子氏は、吉田氏が述べた超薄型ノートPCについて、「顕在しているニーズ」と「潜在しているニーズ」という側面から、これから求められるノートPCの姿を紹介した。

PCを中心にしたライフスタイルが普及するにつれて(写真=左)、PCが1人1台になる時代が必ずやってくると主張する江田氏は(写真=中央)、これから求められるノートPCについて「顕在するニーズ」と「潜在するニーズ」という切り口で説明した(写真=右)

 顕在しているニーズは「Unmet Needs」と紹介されているが、これは、利用方法はすでに知られていて従来のPCでも行えたけれど、性能が不足していて十分に活用できなかった使い方を示す。江田氏が紹介したデータでは、Pentium M 740(1.73GHz)を搭載した3〜4年前のノートPCとCore 2 Duo P8600(2.4GHz)を搭載した最新のノートPCで音楽CDに収録されたデータをMP3に変換する処理とデジタル画像の編集処理を比べると、それぞれ3倍以上の性能を示し、さらに、旧式ノートPCでは性能や機能の面でできなかった、HDコンテンツの再生、(WiMAXによる)リッチコンテンツのオンライン利用などが最新のノートPCではできるようになったことが取り上げられた。

 潜在しているニーズは「Unaware Needs」という言葉で紹介されているが、これは、現状のユーザーが想像できないような利用方法が、ノートPCの性能向上や機能の進化で可能になることを指す。これには、ハイエンドのワークステーションなら可能だが普及価格帯の製品では実現できない使い方も含まれる。

 この潜在的なニーズを可能にするのが超薄型ノートPCであると江田氏は説明する。その理由として、従来からあるNetbookは携帯での利用に適しているものの非力で利用方法に制約がある一方、通常タイプのノートPCでは、高いパフォーマンスが発揮できるものの、主に13.3型ワイド以上の液晶ディスプレイを搭載するため、携帯して利用されることが少ない。それに対し、超薄型ノートPCは、10.1〜13.3型ワイドのディスプレイを搭載するため携帯利用が容易なのに、性能が高い超低消費電力タイプのプラットフォームを採用しているので、高いパフォーマンスと長時間のバッテリー駆動時間が両立することを挙げている。

顕在するニーズとは、「できなくはないけど性能不足で使いにくい」という使い方を指す。最新のノートPCは、3〜4年前のノートPCより性能が向上し、追加された機能のおかげでできることが増えた(写真=左)。潜在的なニーズとは「やりたいけどできる機材がない」という使い方を指す。携帯は容易で高い性能を発揮し、かつ、価格も抑えられた超薄型ノートPCによって潜在的なニーズに応えることができる(写真=右)

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