Atom搭載MID「Viliv S5」の“進化するキーボード”に迫るこの完成度は侮れない(1/3 ページ)

» 2009年07月28日 15時30分 公開
[坪山博貴(撮影:矢野渉),ITmedia]

小型軽量を追求したAtom搭載MIDが日本上陸

ブルレーが取り扱う「Viliv S5」のWindows XP日本語版モデル。写真は付属のストラップ兼スタイラスを取り付けた様子

 重量500グラムを切るMID(Mobile Internet Device)の新機種として、モバイルPC好きなユーザーを中心に話題となっているのが「Viliv S5」だ。韓国Yukyung Technologiesの製品で、国内ではブルレー(BRULE)がWindows XP Home Edition/Vista Home Premium日本語版プリインストールモデルの予約販売を開始している。

 PC USERでは既にこちらの記事(こんなMIDなら欲しい!?:重量436グラムのAtom搭載ミニPC――「Viliv S5」がやってきた)で製品概要を紹介したので、今回は操作性を中心にチェックしていこう。

 ちなみに使用した機材は、32GバイトSSDとWindows XP Home Edition(SP2)日本語版を搭載したモデル(V-S5-32)だ。一応、そのほかの基本スペックをおさらいしておくと、CPUはAtom Z 520(1.33GHz)、チップセットはグラフィックスコアのIntel GMA 500を内蔵したIntel System Controller Hub(SCH) US15W、メインメモリはDDR2の1Gバイト(増設不可)を採用する。

 通信機能はIEEE802.11b/gの無線LAN、Bluetooth 2.0+EDR、GPS(SiRF StarIII)を標準装備。インタフェースはUSB 2.0×1、データ通信用ミニUSB×1、ビデオ出力(接続ケーブルは別売)、ヘッドフォン端子を備えており、この手のミニPCとしては必要十分な構成といえる。

 キーボードを搭載せず、タッチパネル付きの1024×600ドット表示対応4.8型ワイド液晶ディスプレイと画面周囲のボタンを使って操作する仕様なので、本体サイズは154(幅)×84(奥行き)×24.4(高さ)ミリ、重量は約394グラム(32GバイトSSD内蔵の場合)と小型軽量だ。

「VAIO type P」と「iPhone」を並べてみた。iPhoneに比べるとさすがに大きいが、PCとしては非常に小さい。同じくAtom Z系CPUを採用したVAIO type Pと比べた場合、厚みはあるものの、設置面積はかなり小さい。もちろん、これはViliv S5がキーボードを装備しないからだが、フルのWindows XPがサクサク動くPCでこのボディサイズは魅力だ

上面にはヘッドフォン端子とシーソー式のボリュームボタンを配置(写真=左)。底面には通風口とストラップの取り付け穴が設けられている(写真=右)

左側面はカバーの下にリセットボタン、USB 2.0×1、データ通信用ミニUSB×1、ビデオ出力を用意し、ACアダプタ接続用のDC入力と電源ランプも備えている(写真=左)。右側面には電源スイッチ、バッテリー着脱用スイッチが用意されている(写真=右)

両手持ちで十分使える仮想キーボード&タッチパネル

 Viliv S5の大きな特徴となるのが、Windows XP/Vistaをプリインストールしていながら、キーボードは搭載していないという点だ。タブレットPCをはじめ、従来からキーボードなしのWindows PCはいくつも存在したが、専用アプリケーションを運用するための業務向け製品はともかく、コンシューマー市場で広く受け入れられた印象はない。それだけWindowsのフル機能を利用するうえで、キーボードは重要な存在だともいえる。

ボタン1つで仮想キーボードが起動し、両手の親指で文字を入力できる

 試用したViliv S5にプリインストールされていたOSはWindows XP Home Edition(SP2)で、キーボードなしでの利用を想定したWindows XP Tablet PC Editionではない。タッチパネルを利用した仮想キーボードは独自のソフトウェアで実装されており、画面右の最下段にあるキーボードボタン(四角と矢印を組み合わせたイラストが描かれたボタン)を押すことでオン/オフが行える。

 仮想キーボードはデスクトップの下半分をほぼ占有するサイズだ。もっとも、仮想キーボードは透過表示されるので、文字の入力エリアと仮想キーボードが重なってしまった場合でも、おおむね入力内容を確認しながら操作できる。透過率は設定ユーティリティで変更することも可能だ。

 キーボードのデザインが左右に2分割され、中央に空間が設けられているのは、両手の親指で入力することを想定しているからにほかならない。実際、本体を両手で抱え込むように持つと、2本の親指で左右に分割された仮想キーボード全体をまんべんなくカバーできる。ただし、画面サイズは4.8型ワイド(約105×63ミリ)と小さいため、上下/左右のキーピッチは主要キーで7ミリ程度しかない。親指のツメを立てるようにして押せば、さほど無理なく文字を入力できるが、手が大きいユーザーは隣接するキーを誤って押してしまわないように注意が必要だ。

 仮想キーボードは入力時のクリック感が得られない代わりに、キーを押すと本体がプルプルと震えるバイブレーション機能を用意している。好き嫌いはあると思うが、押した感覚がないタッチパネル上の仮想キーボードでは、バイブレーション機能がそれなりに有効だろう。気に入らなければ、振動をオフに設定することもできる。

 キーレイアウトは独特で、QWERTY配列のアルファベット中心のパネルと、数字や記号キー、ファンクションキーなどが集められたパネルの2つを「Mode」キーで切り替えながら利用する。今回入手したViliv S5は英語配列の仮想キーボードが搭載されていたが、日本語の入力が考えられておらず、IME側の設定を変更しないとIMEのオン/オフができない、数字と外来語の入力によく利用する長音符がアルファベット中心のパネルでは入力できない、といった問題があった。これ以外にもOS側が日本語キーボードの設定になっていると、入力される記号とキートップの表記が一致しないという問題も発生し、常用するには厳しい印象だった。

今回入手した機材に搭載されていた英語配列の仮想キーボード(写真=左)。透過表示が可能になっており、仮想キーボードが重なった部分の情報を確認しながら入力ができる。最上段の数字キー列がなく、日本語入力にはちょっと不便だ。「Mode」キーを押すと、ファンクションキーや数字、記号を入力するパネルに切り替わる(写真=右)

 しかし、この問題はソフトウェアアップデートであっさり解消された。7月に入り、Yukyung Technologiesの製品サポートページにて、日本語を含む7カ国語に対応した仮想キーボードの最新β版がアップされたのだ。

 次のページでは、日本語化した仮想キーボードを検証していく。

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