SYSMark 2007 Patch-4の結果で、965 BEはCore i7 920にあと1ポイントというところまで達している。955 BEとの比較では、Phenom II X4で高いスコアが出る傾向のVideo Creationであまり変化がなかったが、E-LerningやProductivity、3Dの各項目で確実にスコアが向上している。PCMark 05 v1.2.1とPCMark Vantage v1.0.1のOverallでも965 BEのスコアはCore i7 920を超えた。
CPUの演算能力を測定するSandra 2009 SP3とCinebench R10の結果でも、クロックが上がった分に見合ったスコアの向上が見られる。Sandra 2009 SP3のMulti-Media Int x8 aSSE2の結果では、Core i7 940をも上回っているし、Cinebench R10のShadingでもCore i7 920と同等だ。
しかし、965 BEをもってしても、多くのテストでCore i7 920に差をつけられているのも事実だ。特に、3DMark Vantage 1.0.1のCPU TestでCore i7 920に大きく離されている。
TDP140ワットとなった965 BEで、システムの消費電力がどれだけ変わるのかも気になるところだ。今回もワットチェッカーによる目測で計測している(CPUによる省電力機能は有効にし、マザーボードの省電力機能は無効にしている)。
TDPが15ワット異なる955 BEとの比較では、Sandra 2009 SP3のCPU Arithmetic Benchmarkを実行している時点で11ワット、アイドル時で4ワットほど増加したことが確認できた。また、Core i7 920との比較において、Sandra 2009 SP3のCPU Arithmetic Benchmarkの実行時で965 BEは21ワットほど消費電力が多く、アイドル時で7ワットほど少ないという結果となった。
これまで、Phenom II X4シリーズはCore i7 920に対してベンチマークテストのスコアでほとんど太刀打ちできなかったが、965 BEでは、特にアプリケーション系のベンチマークテストでCore i7 920に追いつき、いくつかの個別テストでは追い越すこともできた。
とはいえ、965 BEには課題もある。その1つが“955 BEに対して明確なアドバンテージがあるのか”という点だ。955 BEが生産終了になれば、965 BEの存在意義は明確になるが、965 BEと955 BEの併売が続き、倍率変更で955 BEが965 BEと同等スペックに化けてしまうようであれば、より安く購入できる955 BEが支持されるのは容易に予想できる。「絶対定格動作。でも、高速駆動」というユーザーなら965 BEを選ぶ理由がある。ただし、その場合でも、先ほど説明したように、TDPが140ワットという違いに注意する必要がある。
2009年8月時点における965 BEの実売価格は2万6000円前後で、Core i7 920とほぼ同じ価格帯だ。955 BEが登場した当時は、Core i7 920より実売価格は安く、コストパフォーマンスという面を訴求することができた。しかし、965 BEは性能面でも価格面でもCore i7 920とまともに競合することになる。“Nehalem”世代と互角の性能を発揮するAMDプラットフォームを求めているユーザーに、965 BEは支持されることになるだろう。
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