AMDから「Radeon HD 5870」と「Radeon HD 5850」が発表された。どちらもDirectX 11に対応した初のGPUになる。DirectX 11も気になるところだが、パフォーマンスや先日明らかにされたATI Eyefinityなど、Radeon HD 5870の正式発表前から気になっていたユーザーも多いはずだ。
Radeon HD 5800シリーズは、ハイエンドラインアップでは初めて40ナノメートルプロセスルールを採用した(Radeon HDシリーズとしては2009年4月に登場したRadeon HD 4770が最初のモデルになる。Radeon HD 4770の詳細は40ナノ世代に突入した「Radeon HD 4770」の“正体”を知るを参照のこと)。プロセスルールの微細化によってトランジスタ数は21億5000万個と、9億5600万個だったRadeon HD 4870と比べて実に2.25倍も詰め込まれた計算になる。それでいて、ダイサイズはわずかに大きくなっただけで、Radeon HD 4870の300平方ミリを上回る334平方ミリとなった。
| GPU | Radeon HD 5870 | Radeon HD 5850 | Radeon HD 4890 | Radeon HD 4870 | Radeon HD 4850 |
|---|---|---|---|---|---|
| 製造プロセス | 40ナノメートル | 40ナノメートル | 55ナノメートル | 55ナノメートル | 55ナノメートル |
| トランジスタ数 | 21億5000万個 | 21億5000万個 | 9億5600万個 | 9億5600万個 | 9億5600万個 |
| 統合型シェーダユニット | 1600 | 1440 | 800 | 800 | 800 |
| GPUクロック | 850MHz | 725MHz | 850MHz | 750MHz | 625MHz |
| メモリ | GDDR5 | GDDR5 | GDDR5 | GDDR5 | GDDR3 |
| メモリ接続バス幅 | 256ビット | 256ビット | 256ビット | 256ビット | 256ビット |
| メモリクロック | 1200MHz | 1000MHz | 975MHz | 900MHz | 1000MHz |
| メモリ帯域幅 | 153.6GB/sec | 128.0GB/sec | 124.8GB/sec | 115GB/sec | 64GB/sec |
| ROPs | 32 | 32 | 16 | 16 | 16 |
| テクスチャユニット | 80 | 72 | 40 | 40 | 40 |
| 最大消費電力 | 188W | 170W | 190W | 160W | 110W |
| アイドル時消費電力 | 27W | 27W | 60W | 90W | 30W |
統合型シェーダユニットの数はRadeon HD 4870の2倍になる1600基を実装する。これに合わせて、ROPsもテクスチャユニットもそれぞれ2倍の32基、80基を搭載している。GPUコアクロックはRadeon HD 4890と同じ850MHz、グラフィックスメモリクロックはこれまでのRadeon HD シリーズの中で最高となる1200MHz(GDDR5)となっている。

Catalyst Control Centerで表示させたRadeon HD 5870のスペック。動作クロックは定格のコア850MHz、メモリ1200MHz。グラフィックスメモリ容量は1Gバイトを示しているRadeon HD 5870の最大消費電力は188ワットと、Radeon HD 4890の190ワットより低く、Radeon HD 4870の160ワットより高いレベルに設定されている。しかし、Radeon HD 4870で90ワット、改善されたRadeon HD 4890でも60ワットと、これまでのRadeon HD 4800シリーズでウィークポイントとされてきたアイドル時の消費電力が、Radeon HD 5870でわずか27ワットになったのは高く評価できるだろう。


Radeon HD 5870の冷却機構はフラットな形状を採用する。後部にエアインテークのようなデザインが施されている(写真=左)。補助電源コネクタはカード上部に設けられた。これまで、Radeon HDのシングルGPU搭載カードではカード後部についていたが、冷却機構の変更にともなって移動したとみられる(写真=中央)。冷却機構の内部は極太のヒートパイプ4本とシロッコファン、ヒートシンクで構成される(写真=右)

リファレンススカードのレイアウトは従来とあまり変わっていない。グラフィックスメモリはSamsungの「K4G10325FE-HC04」を載せていた。5Gbps対応の製品で1チップあたり1Gビット。電源部のCPL2-4は4フェーズのパワーインダクタだもうひとつ、Radeon HD 5800シリーズで導入された機能で注目したいのが、先行して2009年9月11日に公開された「ATI Eyefinity」だ(詳細はEverGreenで7680×3200ドットの未知なる視界がっ!──日本AMD、ATI Eyefinityライブデモを公開を参照のこと)。これは、1枚のグラフィックスカードから同時に3面までのディスプレイ出力を可能にする機能だ。Radeon HD 5870のリファレンスカードでは、DVI-I×2に加え、DisplayPortとHDMIもそれぞれ1基搭載し、このうち3基にディスプレイを接続して同時出力を可能としている。なお、AMDでは、6基のDisplayPortを備えた特別モデルも用意しており、Radeon HD 5870では、余裕のあるGPUパワーを生かして6面同時出力が可能であると説明している。


AMDでは1枚のグラフィックスカードで6画面同時表示が可能な特別モデルも用意する予定だ。6画面出力で視野を覆うほどの大迫力でゲームが楽しめる。リファレンスカードのブラケットにはDVI×2、DisplayPort、HDMIが搭載されており、最大で同時3面出力が可能となるRadeon HD 5870で導入されたソフトウェア機能で最も重要なのはDirectX 11への対応だ。DirectX 11で追加される機能としては、Tessellation、Shader Model 5.0、DirectCompute 11、HDR Texture Compression、そして、最適化が進んだというMulti Threadingがある。Radeon HD 5800では、これらの機能に対してハードウェアレベルで対応することが表明されている。“ハードウェアレベルでの対応”とわざわざ述べている理由は、DirectX 11で用意される機能は、DirectX 10.1対応GPUやDirectX 10対応GPUでもソフトウェアレベルで実行できるためだ。AMDでは、ハードウェアレベルでサポートされることで、ソフトウェアでサポートする場合よりパフォーマンスが向上する説明している。
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