レビュー
» 2009年12月28日 19時00分 公開

IPS×WUXGA×10ビット対応DisplayPort:これぞ“正しい”広色域ディスプレイ――24.1型WUXGA液晶「FlexScan SX2462W」に迫る (3/4)

[前橋豪, 撮影:矢野渉,ITmedia]

Adobe RGB色域とsRGB色域での画質は?

 ここからは実機の画質をチェックしていこう。初期状態の表示を見ると、同じくIPSパネルを搭載した上位機「ColorEdge CG243W」に比べて、原色が強めで派手な発色だ。CG243Wはガンマカーブを全階調で測定して調整し、Adobe RGBに近い色域で全体的な表示が均一になるよう厳密にチューニングされているため、発色が落ち着いているのだろう(SX2462Wは一定値でガンマ調整されている)。

 初期状態でSX2461Wと見比べると、白が少し赤みがかっているSX2461Wに対し、SX2462Wは赤みが取れ、若干緑が強い。無論、視野角による色度変位は少なく、縦位置でも画面の上下端で色が違って見えるようなことはない。

SX2462Wの表示例。縦位置で表示したり、かなり急な角度を付けて画面を見たりしても、画面表示の色味が変わらないのはさすがIPSパネルだ。もっとも、SX2461Wが採用していたVAパネルの視野角特性もよく、画面を見る角度による色度変位はかなり小さい

 前述の表示安定化技術が生かされ、画面の輝度ムラや色度ムラはほとんど気にならない。低価格帯の液晶ディスプレイでは、24型くらいに画面サイズが大きくなると、画面の左右や特定の領域で多少のムラが発生することは少なくないが、さすがに表示の均一性は高い。CG243Wに比べると、画面4辺、特に画面下端が少し輝度落ちしているが、こうした傾向は競合機種にも見られる。通常はアプリケーションのウィンドウやタスクバーが表示される部分なので、実作業では問題にならないだろう。

 多階調ガンマ補正機能のおかげで、階調表現力もなかなかのものだ。黒にごく近い暗部はつぶれるものの、カラー/モノクロのテストパターンは問題なく表示できた。厳密にCG243Wと見比べると、SX2462Wはわずかにバンディングが散見されるが、この価格帯のディスプレイとしては優秀な画質といっていい。

 階調表現の実力は、エックスライトのカラーマネジメントツール「i1Pro」によるソフトウェアキャリブレーションの結果からも明らかだ。Adobe RGBの色域を再現するのに向いたUser 1モードで、輝度を120カンデラ/平方メートルにセットしてキャリブレーションしたところ、目標値に非常に近い好結果が得られた(輝度の設定値は36%)。RGB出力のグラフも乱れがなく、全階調でグレーバランスが整っていることが分かる。もっとも、SX2461WをCustomモード(SX2462WのUser 1〜3モードに相当)でキャリブレーションしても結果は良好だった。

Adobe RGBに近い色域で表示するモードを選び、輝度を120カンデラ/平方メートルにセットした状態で、i1Proによるソフトウェアキャリブレーションを実施した。左がSX2462W(User 1)、右がSX2461W(Custom)の結果だ。SX2462WのRGB信号の入出力グラフを見ると、階調の再現性はかなり高い。PCからの入力(input)に対し、画面の出力(output)がリニアに変化し、ほぼ直線となった。色温度、ガンマ、輝度はいずれも目標値に非常に近い。SX2461WについてもSX2462Wと同様、良好な結果が得られた

i1Proで作成したAdobe RGBに近いモードでのプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティ(色域のグラフ表示が可能なソフト)で読み込んだ。左がSX2462W、右がSX2461Wの結果だ。Adobe RGBの色域は下にグレーで重ねて表示している。SX2462WはAdobe RGBより緑の色域が少しだけ狭く、赤から青にかけて広いという結果だ。SX2461Wは緑と青の色域を中心に、Adobe RGBの色域よりやや狭くなっている。実際の画面表示はこれらのプロファイルと多少の誤差があるだろうが、作成されたプロファイルを見比べた場合、SX2462WはAdobe RGBの色域をほとんどカバーしているのが分かる

SX2462WのUser 1モード(キャリブレーション後)で、カラーとモノクロのグラデーションを表示した例。優秀な調整結果から予想される通り、階調表現力は高い。なお、デジタルカメラでの撮影およびWebブラウザ上での表示では、SX2462Wの発色を高精度に再現できないため、写真は参考程度に見てほしい

 大きな違いが見られたのは、sRGB色域の再現性だ。sRGBはCRTディスプレイの時代に標準化された規格なので、定義されている輝度は80カンデラ/平方メートルと低い。

 そこで、輝度を80カンデラ/平方メートルにセットしてsRGBモードでキャリブレーションを行ったところ、SX2462Wは80カンデラ/平方メートル(輝度の設定値は13%)までしっかり下げられたが、SX2461WはsRGBモードで最大まで輝度を下げても108カンデラ/平方メートルが限界だった(Customモードでは80カンデラ/平方メートル以下まで下がる)。RGB出力グラフのズレもSX2461Wのほうが目立つ。

 液晶ディスプレイでは、sRGBモードであっても100〜120カンデラ/平方メートル程度の輝度で使っているケースは多いだろうが、CRT時代からの表示傾向に近づけたいユーザーにとって、SX2462Wでの改善はありがたいはずだ。

sRGBモードを選び、輝度を80カンデラ/平方メートルにセットした状態で、i1Proによるソフトウェアキャリブレーションを実施した。左がSX2462W、右がSX2461Wの結果だ。SX2462WのRGB信号の入出力グラフを見ると、赤がやや明るく出ているが、目標値に近い結果が得られた。一方、SX2461Wはグラフの低階調部が少しゆがんでしまったほか、輝度も目標値まで下がらず、108カンデラ/平方メートルとなった。sRGBモードの精度はSX2462Wに軍配が上がる

i1Proで作成したsRGBモードのプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ。左がSX2462W、右がSX2461Wの結果だ。sRGBの色域は下にグレーで重ねて表示している。SX2462Wは青の色域が少しだけ飛び出したが、それ以外はsRGBの色域にかなり近い。SX2461Wは青の色域が足らず、sRGB色域からのズレがSX2462Wより大きい

SX2462WのsRGBモード(キャリブレーション後)で、カラーとモノクロのグラデーションを表示した例。Adobe RGBモードに比べて、シアンやマゼンタ、グリーンなどの発色が落ち着き、sRGB色域に近い表示になっているのが分かる。この状態でもグラデーションの階調性は保たれている

 応答速度に関してもSX2461Wより少しよくなった印象を受ける。映像コンテンツ内の左右に流れるテロップなどで、SX2461Wは輪郭に少し偽色が発生することがあったが、SX2462Wで同じ映像を見ても偽色が出なかった。そのため、動く映像に残像が少しあっても、映像の違和感は少ない。動画の高度な編集やモニター用途には向かないが、動画入りのコンテンツ制作などにも十分活用できそうだ。本来の使い方とは離れるが、Blu-ray Discの映画タイトルなどを視聴してみても、PCディスプレイとしては十分精細で臨場感ある動画が味わえた。

 そのほかにもキャリブレーションした状態で画質を細かくチェックしたが、上記の調整結果が示す通り、SX2461Wからの進化は確実だ。SX2461WはVAパネルを採用していたが、SX2462Wではまったく別のIPSパネルに切り替えたことも、画質面に多少の影響を与えていると思われる。

 昨今の液晶ディスプレイは、表面処理の乱反射や粒状感が問題視されることもあるが、この点についてもSX2462Wは改善が見られる。白や明るいグレーなど明度が高い表示では、表面にうっすらと光の細かな反射が見られ、顔を画面に近づけると気づきやすくなるが、使っていくうちに慣れていくこともあり、画面と一定の距離を保って作業をしているぶんにはまったく問題なく、目の疲れも感じなかった。

 SX2461Wは一昔前の同社製VAパネル搭載機に比べて、画面上の光の乱反射は緩和されているが、SX2462Wはそれよりさらに表面処理のクセが気にならない。もっとも、こうした表示傾向による眼精疲労の感じ方は人それぞれだ(筆者はかなり鈍感なほう)。PC作業で目が疲れやすく、少しでも自分の目に合ったディスプレイを選びたいというユーザーは、店頭で実機を見比べて判断するしかないだろう。

マイクロスコープで液晶パネルの画素形状を確認してみた。左がSX2462W、右がSX2461Wだ。ここまで拡大すると、画素の形状が大きく違うのが分かる。なお、マイクロスコープで画面をそのまま撮影すると、ノングレアパネルの表面処理によって、画素形状がぼやけてしまうので、透明なフィルムを画面に張って撮影した

 次のページでは、今回のレビューを総括する。

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