多くのベンチマークテストにおいて、Core i7-875KもCore i5-655Kも、オーバークロックした分だけ着実にスコアが伸びている。ただ、一部のテストではオーバークロックの効果が確認できない、あるいはスコアを落としているケースもあった。これは、Kモデルのオーバークロックが、CPUが自ら動作クロックを制御するTBTに依存していることが大きく影響している。倍率を上げすぎてしまうと、TBTがクロックアップを行える上限以上にシステム温度が上昇して動作クロックが上がらないわけだ。
PCMark VantageとPCMark05では、どちらもデュアルコアのCore i5-655Kが最も高い結果を示している。PCMark05の個別テストを確認すると、マルチスレッドテストではオーバークロック設定にしたCore i7-875Kが、シングルスレッドテストではオーバークロック設定にしたCore i5-655Kがそれぞれトップになっている。特にシングルスレッドテストにおけるCore i5-655Kの飛びぬけた好成績がマルチスレッドテストでCore i7-875Kを下回った結果をカバーして余るほどだ。デュアルコア構成のClarkdaleでは、コア数が少ないぶんTDPに対する余裕は大きく、かつ、32ナノメートルプロセスルールを採用しているアドバンテージも加わったと考えることもできるだろう。とにかく高クロック動作を求めるのであれば、Core i5-655Kが向いている。一方、Cinebench R11.5や3DMarkVantageの結果では、マルチスレッドのスコアとなるため、Core i7-875Kが有利となる傾向が確認された。
KモデルのCPUでオーバークロックを試してみて、TBTの上限を変更するチューニングは「なかなか奥が深い」と感じた。マルチスレッドテストでは安定して動作したものの、シングルスレッドテストで一気に倍率が上がるとシステムがエラーを起こしたり、ベンチマークテストによってはその逆だったりと、マルチコア動作、シングルコア動作ともに、ベンチマークテストが完走する限界を見極めるために試行錯誤を繰り返すことになった。また、PCMark05のようにマルチスレッド動作とシングルスレッド動作が混在するベンチマークテストでスコアを伸ばすためには、マルチコア動作とシングルコア動作における倍率のバランスも重要だ。
このように、Kモデルのオーバークロックは、手がかかるものの「チューニングを詰めていく楽しさ」は相当なものといえる。さらにいえば、自分がよく使うアプリケーション環境に合わせてシングルコアに特化した設定、もしくは、マルチコアに特化した設定も可能だろうし、通常動作におけるクロック設定を引き下げるとともにTBTで有効になるクロックの上限を引き上げれば消費電力のカスタマイズもできるはずだ。
そして、もう1つ注目しておきたいのが価格だ。Core i7-875Kは1000個ロット時の単価で342ドル、Core i5-655Kは216ドルと“Extreme Editionシリーズ”の999ドルから比べて大幅に安い。LGA1156対応マザーボードの価格と合わせて倍率変更によるオーバークロックができるインテル製のCPUを低価格で購入できることになる。オーバークロック機能を実装したハイエンドP55マザーを所有するユーザーにとって、“Kモデル”は、「存分に遊べるCPU」になるのではないだろうか。
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