消費電力に関しても、使うアプリケーションによってその差は変わるものの、すべてのベンチマークテストでPhenom II X6 1055Tの95ワット版は、ほかと比べて一段低い。アイドル時の消費電力も低い。
ただ、ここでPhenom II X6 1090Tの消費電力について注目しておきたい結果がある。多くのテストで、最高のベンチマークテストの結果を出す一方で、消費電力も最も高い値を示している。ただ、TMPGEnc Xpressで測定した消費電力と処理にかかる時間を検討すると興味深い傾向が確認できた。もちろん、消費電力が最も多いのがPhenom II X6 1090Tであるのは変わりないが、高い性能を発揮できるPhenom II X6 1090Tは処理時間も最も短く、Phenom II X6 1055T(125ワット版)より20秒早く処理が終わっている。
その結果、処理時間で積算した消費電力を比較すると、Phenom II X6 1055T 125ワット版が最も多く、Phenom II X6 1090Tはその次となる。処理完了後に自動的にシャットダウンする設定を想定し、処理完了時までで積算を終えてみると両者の差はさらに広がり、Phenom II X6 1090Tの積算消費電力は、Phenom II X6 1055T 95ワット版に近づいていく。
Webブラウジングやメール、ドキュメントの作成などのアイドル時間が多いアプリケーションでは、より低消費電力なCPUを組み込んだシステムは電力量も少ないが、高性能なCPUを使って短時間で完了する処理が多くなる場合には、より高性能なCPUを組み込んだシステムでも消費電力が少なくて済むことがありえることを、この傾向は示している。もっとも、バッチ処理のような“特定目的特化PC”でない限り、基本的にはPhenom II X6 1055T 95ワット版が最も消費電力が低いということになるだろう。
Phenom II X6 1055Tの95ワット版は、30ワット低い消費電力で125ワット版と同じパフォーマンスを発揮している。しかし、この付加価値の分だけ95ワット版の実売価格は125ワット版より高く設定されている場合もある。ただ、この“併売状態”は長くは続かず、125ワット版は終息に向かうという予測もある(すでに取り扱いが終わったショップもある)。
インテルの6コアCPUは、ラインアップが2モデルになったが依然として高値で、購入するには“かなりの覚悟”がいる。パフォーマンス面でのギャップはまだまだあるが、AMDの6コアCPUは省電力に低価格と、インテルとはまったく別次元のメリットを持つ。
マルチタスク処理を重視するが省電力であってほしい利用を想定しているユーザー、ハイエンドPhenomを使っているが、このところの猛暑でどうにもPCが参っているようだ、というユーザーにとって、Phenom II X6で95ワット版が登場したのは、1つの朗報となるのではないだろうか。
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