今回の検証ではオーバークロック利用を想定した“K”モデルを使用している。Sandy Bridge世代のCPUでオーバークロックはどこまで手を出すことができるのだろうか。今回の作業で使ったマザーボード2モデルのうち、オーバークロック利用に適しているのはIntel P67 Expressを搭載したDP67BGだ。Intel H67 Expressを搭載するDH67BLはオーバークロック関連の設定項目が簡素で、今回の検証作業に実装されているBIOSでは、コア電圧すら変更できなかった。
今回の評価作業でDP67BGに実装されていたBIOSでは、倍率変更は可能だが、Turbo Boost Technologyが効いていない状態の倍率は定格以上に設定できず、Turbo Boost Technologyが有効になっている状態での倍率だけが設定可能だ。なお、初期状態で、DP67BGの設定は従来のBIOSと同じユーザーインタフェースになっているが、Unified EFIも有効にできる。しかし、Unified EFIを有効にしてもユーザーインタフェースはBIOSと同じテキストベースのままだ。
PerformanceタブではFSBを設定する「Host Clock Frequency」とCPU関連の設定を行う「Processor Overrides」、メモリ関連の設定を行う「Memory Overrides」、そして、PCHやCPUの各部電圧を設定する項目が用意されている。今回の評価作業では、Host Clock FrequencyとProcessor Overridesを変更した。
Processor OverridesのメニューにはCPU電圧や倍率を変更する項目に加え、LGA 1156世代から登場した「TDC Current Limit Override」や「Sastained Mode Power Limit」などTurbo Boost Technologyの挙動に影響する項目もあるが今回は変更していない。
今回のオーバークロック検証では、4コア動作から1コア動作までのTurbo Boost Technology倍率をすべてそろえることで、Turbo Boost Technologyが効いていない状況を作ってみた。試したのは40倍と41倍の2通りで、FSBが100MHzなので、動作クロックはそれぞれ4GHzと4.1GHzとなる。この設定はコア電圧を1.25ボルトにすることで空冷でも成功した。
一方でHost Clock Frequencyは、最小値100MHz〜最大値120MHzとレンジが狭く、133MHzという設定ができない。Sandy BridgeではクロックジェネレータがCPU上に統合されて、FSBの変更が難しくなるといわれているが、実際に設定してみると、103MHzを超えたあたりで頭打ちになった。
FSBクロックの変更がわずかしかできないとすれば、オーバークロックしたいユーザーは、“K”モデルを購入して倍率を変更することになる。これは、独自に用意したオーバークロック設定機能で競合製品との差別化を図るマザーボードベンダーにとっても厳しい条件といえるだろう。
IDFなどのイベントで技術的な情報が公開されていたといっても、“Tock”開発フェースのSandy Bridgeで、アーキテクチャの変更が性能向上にどれだけ影響するのかが、ユーザーとしては最も気になるところだ。実際に測定してみると、その性能はWestmere世代のClarkdaleから明らかに向上している。CPUの性能はもちろん、グラフィックスコアのパフォーマンスもアップした。DirectXのサポートが10.1までだが、統合型グラフィックスコアを利用しているユーザーにとって、DirectX 11を必要とする局面はまだ少ない。
LGA 1155の採用で、マザーボードまで変更しなければならないという初期投資の負担はあるものの、外付けGPUを必要としてないユーザーに、エンコードやトランスコードなど、これから“ごく普通のユーザーにも”利用が多くなると思われる利用場面で性能が大幅に向上したSandy Bridge世代のCPUは、コンシューマーユーザーにおけるPCの使い方を、さらに広げてくれる可能性をもっているといえるだろう。
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