最後に、オマケ扱いして恐縮だが、無線LANルータとしての機能を見ていこう。
無線LANは2.4GHz帯のIEEE802.11b/g/n対応で、11n接続時は2ストリーム/最大300Mbpsで無線LAN通信できる。有線LANはギガビット対応で、WAN側×1、LAN側×3を実装する。
このほか、2セッションまでのPPPoE認証、IPsec/PPTPパススルーなどのVPN対応機能、ダイナミックDNSと自動更新機能(同社サービスiobb.netのみ対応)、利用しない時間帯の設定やランプの消灯などを設定することで、最大約67%の省電力化できる「ECOモード」、ネットスターのURLフィルタリングサービスを利用して悪質サイトをルータ側でブロックする「ファミリースマイル」、WPA2-PSK(TKIP/AES)・WPA-PSK(TKIP/AES)・WEP(128ビット/64ビット)の無線LANセキュリティなどの機能を備える。
このように、とりあえず無線LANルータとしては自宅に固定ブロードバンド回線を引いており、複数台のPCやスマートフォンで無線LAN接続して活用する一般利用シーンには十分といえるベーシック志向な仕様だ。
なお、無線LAN設定はWPSのほか、QRコードの読み取りで無線LANの接続設定が行える「QRコネクト」に対応し、無線LANおよびスマートフォン初心者も比較的容易に設定できる工夫も盛りこんでいる。QRコネクトアプリはiOS版、Android版を無償ダウンロードでき、スマートフォンアプリで本体後面にあるQRコードを撮影するだけで接続設定が完了する。
電波の飛び具合は、参考として3階建て鉄筋コンクリート建築の筆者宅、周囲の2.4GHz帯無線LANアクセスポイントは数個のSSIDでわずかにチャンネル干渉がある環境において実チェックする。1階のリビングルームに置いた本機(Androidアプリ「Network Signal Info」で簡易チェックしたシグナル強度:−30dBm)は、2階奥部屋(直線距離約25メートル)までは地デジ視聴の実利用にほぼ問題なし、3階に上がる(直線距離約30メートル:同シグナル強度−90dBm)と、視聴はできるがたびたび映像の遅延が発生した。
続いて「CrystalDiskMark 3.0.1」でLAN間のデータ転送速度を測定する。有線LAN接続は、本機にギガビット有線LAN対応PCを2台有線LANで接続、一方の共有フォルダを他方のPCにネットワークドライブとしてマウントして計測したところ、シーケンシャルリード値で約92Mバイト/秒となった。
なお、電波干渉が少なく、より安定して高速に通信できる可能性の高い5GHz帯無線LANは未サポートとなる。昨今、テレビやレコーダーなど、ネットワーク対応AV機器のハイビジョンコンテンツの視聴・配信用として5GHz帯対応モデルのニーズが高まっている。それと関連し、2.4GHz帯無線LANはユーザーの多そうな都市部駅前や大規模マンションなどでの利用において、電波干渉による速度低下=伝送遅延で、不都合が起こる可能性はやや高い。
こちら、普段の2.4GHz帯無線LAN利用において問題なく速度が出ている家庭なら、本機の地デジ無線LAN伝送も同様に大丈夫と思うものの、この部分はやはり少し心配だ。ルータ機能により高性能を望む中級層以上のユーザーなら、5GHz帯+450Mbps通信対応の上位モデル「WN-AG450DGR」とPC用USBスティック型地デジチューナー「GV-MVP/FZ」の組み合わせで同様の無線LAN地デジ化環境を構築するのもいいだろう。
Wi-Fi TV(WN-G300TVGR)は、テレビの新しい便利さと利用シーン創造の可能性、そしてiPadとの親和性の高さがキラキラと光っている。実売1万3000円前後(2012年4月現在)とほどよく購入しやすい価格帯であることから、iPadで地デジ放送を見たい(ついでに11n対応無線LANルータに買い換えよう)と思うなら候補の筆頭に据えてほしい1台だ。
今後は、無線LANルータの機能をAV機器での利用シーンも含めた「これ1台で家庭内全部OK」となるモデルなどのラインアップ拡充を望みたく、さらにテレビ機能としてもAndroidスマートフォン/タブレットへの対応、録画や番組持ち出し、複数台での同時視聴、3波チューナー化、ダブルチューナー化、ネットワークサービス連携といった機能の追加など、進化の余地もまだある。今後の進化に期待したい。
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