それでは、これらのテスト結果を考察していこう。まず、CINEBENCH R11.5のレンダリング実行時はGPUコアをほぼ使わず、CPUコアに多大な負荷がかかる。この結果から、TDP Up(VAIO Duo 11における実装の場合)は、シングルスレッドでもマルチスレッドでもCPUコアのターボ状況に影響がないと判断できる。3DMark系のテストでCPUスコアの伸びが鈍い(ほとんど変わらない)ことからも、それは裏付けられる。
一方、3DMark系のテストでも描画関連の項目では差が出ていることから、GPUコアのターボ状況には影響があると判断できる。TDP Downに関してはCPUコア/内蔵GPUコアどちらのターボ状況にも影響しているが、やはりGPUのほうが影響の度合いが大きい。
ところで、TDP Downに比べて、TDP Upの効果が低いと思うかもしれない。これには、Turbo Boost 2.0の仕組みを利用していることの限界がある。Turbo Boost 2.0ではあらかじめ上限の動作クロックが決まっており、温度や電力状況にいくら余裕があっても、その上限を超えたオーバークロックは行わないからだ。
要するに、VAIO Duo 11では標準状態でCPUコアのパフォーマンスをほぼ使い切れる熱設計となっているので、TDP枠を25ワットまで解放してもCPU性能にはほぼ影響がなく、グラフィックス性能が少し上昇するのみにとどまっている。
これはVAIO Duo 11の「標準」設定がもともと「パフォーマンス優先」寄りの内容になっていることもあるが、だいたいのノートPCはこうしたチューニングになっているはずだ。標準状態でベンチマークテストを行えば、同じCPUを搭載しているノートPCはどれも似たようなスコアになることがそれを表している。
例えば、インテルがTurbo Boost 2.0の上限クロックを取り払うか、あるいはPCメーカーがよりアグレッシブにcTDPを活用すること(TDP 14ワットを標準設定にするなど)が許されるならば、「機動戦士ガンダム00」の「トランザムシステム」のように、TDPのUp/Downによってガツンとパフォーマンスが変化するようなPCも実現可能だろう。
それはそれで面白いかもしれないが、標準状態ではCPU名から期待できるようなパフォーマンスが得られなくなり、そういうことが一般化すれば、CPUの名称が標準状態での性能の目安とならなくなるため、ユーザーにとって歓迎できることなのかどうか、微妙ではある。
結局、ガンダム00の「イオリア計画」……いや、cTDPの設定を変えたところで「爆速だぜ!」とテンションが上がるまでの状況には至らないことが分かった。
とはいえ、3D描画性能は少しではあるが、確実にアップすることも確認できた。また、TDP Downはモバイルシーンなどで消費電力を抑えるのに効果的だ。cTDPを生かすことで、キーボードモードとタブレットモード、それぞれに最適なパフォーマンスと省電力の設定を提供できる仕組みが整っているのは特筆できる。
さらに、VAIO Duo 11では難しいことを考えず、「VAIOの設定」から「本体の冷却とパフォーマンス」を切り替えるだけでcTDPの機能が使えるため、例えばゲームをプレイしたいときにサッと設定を変更して描画性能を“ちょい足し”できる。ワンアクションで素早く変形できる独自のスライド機構もそうだが、こうした高度な機能を手軽に使えるよう作り込んでいることが、製品の価値を高めているのだ。
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