クルマとケータイ、ドコモが目指す連携の形は:第1回 国際自動車通信技術展

» 2009年10月21日 21時22分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo NTTドコモ 取締役常務執行役員 研究開発センター所長の小森光修氏

 携帯電話サービスの前身となる「自動車電話」サービスが始まったのは、ちょうど30年前の1979年。それから6年後の1985年、移動電話は自動車を降りて独り立ちし、当時は誰も予想しなかったような進化を遂げて今に至っている。

 国際自動車通信技術展の基調講演に立ったNTTドコモ 取締役常務執行役員 研究開発センター所長の小森光修氏は、市場環境と技術革新の面で大きな変革期を迎えた通信業界と自動車業界が、「30年前の原点に戻って結びつき、技術やノウハウ、エコシステムを生かすことで次の飛躍が望め、新たな世界が開けるのではないか」と述べ、自動車業界に積極的にコミットしていく姿勢を明らかにした。

広がる通信モジュールの用途、車載専用モジュールも登場

 ドコモは2010年12月の商用化を目指してLTEサービスの開発を進めている。LTEは下り100Mbps、上り50Mbps以上の高速通信を可能にする次世代モバイル通信規格の1種。ドコモはすでに実証実験で下り約250Mbps、上り約50Mbpの伝送を成功させるなど開発は順調だ。

 高速移動時で下り最大100Mbps、低速移動時で下り最大1Gbpsの高速通信の実現を目指す4Gについても、ドコモは既に実証実験を進めており、2006年12月には低速移動時での下り最大5Gbpsの信号伝送を成功させた。2007年に周波数の割り当てが決まって以来、標準化活動が本格化しているといい、3.9Gと同様、標準化には積極的に関わっていく方針だ。

 このように通信速度が向上し続ける一方で、携帯電話市場はコンシューマー市場が飽和したことなどが要因となり、これまでのような右肩上がりの成長は望めなくなっている。新たな収益源が求められる中、通信キャリア各社が注力し始めているのが通信モジュール分野。「人には行き渡ってしまったが、これからマシンに付く可能性が膨大にある」(小森氏)というわけだ。

 自動販売機や業務用ハンディターミナルは通信モジュールを搭載したものが増えており、業務効率化や人件費削減につながるとして、利用が一般的になりつつあると小森氏。通信モジュール自体も、遠隔監視やエアダウンロードによるソフトウェア更新に対応するなど進化しており、より幅広いシーンで利用できるようになってきたという。

Photo 法人利用で大きな可能性を秘めている通信モジュールビジネス(左)。自販機やハンディターミナルへの搭載も一般的になりつつある(右)

Photo 通信モジュールの導入業種とソリューション(左)。さまざまなニーズに対応できるよう、モジュールの種類も増えてきた(右)

 2008年に発表した車載モジュールは、振動や衝撃、温度の変化などの過酷な条件下でも安定して使えるよう設計されたものだ。動作保証温度−30℃から70℃という高い耐久性を備えながら(一般的なモジュールの動作保証温度は15℃から35℃)、パケット通信に加えて音声通話やテレビ電話に対応。音声通話とパケット通信を同時に行うマルチアクセスに対応するので、通話しながら位置情報などの車両データを送信することも可能だ。さらにFOMAプラスエリアにも対応しており、山間部などでも安心して使えるという。

 車載利用については、フォーミュラ・ニッポンへのサポートを通じて「300キロを超えるスピードと騒音環境下でも、高い品質で使える携帯を目指す」(小森氏)実験を行っており、それがらくらくホンのノイズキャンセル機能の向上や、高速移動時でも途切れることのない通信の実現などに役立っているという。

Photo レースカーに携帯電話やモジュールを搭載し、さまざまな実験を行っている

車載連携とケータイ連携でテレマティクス普及へ

 クルマは国内で8000万台が稼働しているといわれ、その1台1台に通信機能が搭載されれば、大きな市場になる。ドコモもカーテレマティクス分野に注力する考えで、「Vehicle Mobile Convergence」をテーマに、ケータイやPCとクルマを連携させた先進的なサービスの創出を目指す。

 普及のためのアプローチとして小森氏は、「車載連携」と「ケータイ連携」の両面から普及を促すと説明する。車載モジュールは高級車から搭載を進め、車両の遠隔診断やセキュリティなどのサービスを提供。普及クラスのクルマについては、携帯電話と接続して使うナビゲーションサービスや情報検索、カーオーディオなどを展開し、「上下から攻めて、将来は幅広くクルマに通信機能を搭載していきたい」(小森氏)という考えだ。

 さらに、新たな価値創出の一環として、位置情報の統計データを“見える化”して、都市計画づくりに役立てることも検討していると小森氏。約5400万のユーザーが常時、ドコモの電話を持っており、例えば位置情報を統計的に処理することで、刻々と変わる人の流れや人口の推移を“見える化”できると説明する。「こうしたデータは、都市計画や輸送計画など、いろいろなところに応用できると考えている」(小森氏)。

Photo ドコモのカーテレマティクス普及に向けたアプローチ

Photo LTEとクルマのEV化で実現を目指す安全サービス(左)。位置情報を統計処理して“見える化”し、都市計画作りに役立てることも検討している

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年11月03日 更新
  1. ダイソーで1100円の「PD対応20Wモバイルバッテリー」を試す 手頃な価格でそこそこ高速にスマホを充電可能 (2026年10月31日)
  2. 「iPad mini(A20 Pro)」は何が進化した? 「iPhone Duo」とはどう違う? スペックや用途を比較する (2026年11月01日)
  3. KDDIの名機「INFOBAR」に新展開、11月18日に何かを発表――砂原哲氏が明かす (2026年11月01日)
  4. Google マップの新機能「マップに相談」は“知人に聞く”感覚で使える 「Pixel 11 Pro Fold」などフォルダブルとの相性も抜群 (2026年10月31日)
  5. iPhone Duo、最適化できていないアプリに不満の声続出――App Storeでの「強制」により年明けには一気に解消か (2026年11月01日)
  6. あなたの街の「スマホ決済」キャンペーンまとめ【2026年11月版】〜PayPay、d払い、au PAY、楽天ペイ (2026年11月02日)
  7. 「iPhone Duo」は“我慢の連続” 歴代最重254g、Face IDなし……それでも満足できる人の条件が分かった (2026年10月30日)
  8. セブン‐イレブンで最大11%還元や“現金還元”も 新登場「nanacoクレジットカード」のお得度を検証する (2026年11月02日)
  9. 若者が選ぶ流行語「チャッピー構文」ってなんだ? 「結論から言うね」なAIの口癖、実は人間のせいかもしれない (2026年10月30日)
  10. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー