減収増益のドコモ、スマートフォン好調で“変革とチャレンジ”に手応え

» 2010年10月29日 03時36分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo 決算について説明するNTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏

 10月28日、NTTドコモが2010年度第2四半期の決算を発表。売上高が前年同期比0.4%減の2兆1382億円、営業利益が同9.5%増の5315億円で減収増益となった。

 第2四半期は、スマートフォンやデータ通信端末、Wi-Fiルータなど、新たな市場を開拓する端末が好調に推移して契約数を伸ばしたほか、端末の総販売数も3年ぶりに増加。パケットARPUの伸びや新規事業の成長も奏功して増益を達成した。

 決算概況を説明したNTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏は下期の取り組みとして、スマートフォンのラインアップ拡充や定額制ユーザーの拡大、フィーチャーフォンユーザーのパケット利用の促進、モバイルW-Fiルータや通信対応フォトフレームなどの新デバイス投入を挙げ、さらなるデータARPUの向上を目指すと説明。新たな取り組みとなる電子書籍やカーナビサービス、LTEの商用サービスにも注力する考えだ。

バリュープランの音声ARPUへの影響は、あと1〜2年

 2010年度の第2四半期は、前年同期に比べて売上高は77億円減となったものの、営業費用が539億円減ったことから5315億円の増益となった。売上高に影響しているのは798億円減となった音声ARPUで、このうち550億円はバリュープランが影響。音声ARPUは前四半期の2970円から310円減の2660円となっており、約半分にあたる150円がバリュープランの影響によるものだ。

 基本使用料が半額となる「ファミ割MAX50」などのプランについては、契約比率が8割を超えるなど飽和してきたことから、ほぼ影響がなくなっているが、端末代と通信料を分離するバリュープランの加入者は全契約者の65%で、あと1〜2年はこの影響による減収が続くと山田氏は見る。

 一方、パケットARPUはスマートフォンやデータ通信端末が好調なことや、iモードの底上げ効果が現れはじめたことから、前年同期比で90円増の2540円となった。ドコモは通年のパケットARPU増の目標値を110円としており、下期で追い込みをかけて目標達成を目指す。

 なお、端末販売については、総販売数が前年同期比43万台増の924万台に達したが、昨年に比べて1端末あたりの価格が安くなったことや、単価が安いデータ端末などが出ていることから、販売収入は134億円のマイナスだった。これが売上に影響したものの、海外プラットフォームやネット・モバイル、オークローンマーケティングなどの新規事業分野が好調に推移し、その他収入が364億増となったことから微減で収まったと山田氏は分析している。

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スマートフォンやデータ端末が好調、純増は80万超に

 端末の総販売台数が復調傾向にあるのも、上期の1つのトピックだ。端末の販売方式が変わった2007年から、販売台数は落ち込み続けていたが、今期は3年ぶりに総販売数が増加。前年同期の881万台から924万台まで回復した。これに伴い、ドコモは通期予想の総販売数を、当初の1820万台から1870万台に微修正している。

 販売台数の伸びを支えているのが、コンシューマー向けスマートフォンだ。ドコモが初のAndroid端末として投入したソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの「Xperia」(SO-01B)は、1カ月平均で約10万台程度売れているといい、上半期のスマートフォンの総販売台数は60万台に達したという。10月28日から販売を開始したSamsung電子製の「GALAXY S」(SC-02B)も、予約が5万台強に達しており、山田氏は「(大きな注目を集めた)Xperiaと同じような反響」と自信を見せた。

 ほかにも、データ通信カードやデジタルフォトフレームなどが好調なことに加え、新販売方式が始まってから2年が経過し、“2年縛り明け”ユーザーの買い換えが増えてきたことも、販売増につながっていると分析した。

 スマートフォンをはじめとする新たなデバイスの投入は純増にも好影響を与えており、上期の純増は前年同期の59万から81万に伸びている。ドコモは純増の通期予想についても、当初の137万から177万に修正している。

Photo パケットARPUは前年同期比で90円増加。パケット定額サービスの契約率は58%で、上期で新たに314万契約を獲得した。下期は63%の加入を目指す
Photo ARPUと総販売数の推移

下期は“パケットARPU110円増”に向けて邁進

 この上期のドコモは純増もパケット収入も増加し、新規分野も機軌道に乗り始めるなど、今後の成長に向けた明るい兆しが見えている。山田氏はこの上半期について「(2008年に発表した)中期ビジョンで示した“変革とチャレンジ”の実行の年ということで、その実現に向けて着実に歩んでいることを実感できた」と振り返り、その結果が対前年で462億円の増益につながったと話す。下期は通期の目標である“パケットARPU110円増”に向けて邁進すると意気込んだ。

 データARPUの向上については、スマートフォンだけでなく、フィーチャーフォンのユーザーにも利便性の高いサービスを提供してデータ利用の促進を図る。「iモードでもパケットARPUを上げる努力をする。それは結局、iモードでパケット利用が上がった利用者は“こういうことをするなら、スマートフォンにいってみたい”というように、スマートフォンを買い替える原動力にもなるのではないかと思っている」(山田氏)

 契約数が540万を突破した「iコンシェル」については、中小企業や店舗が低コストでiコンシェルを通じた情報配信を行えるようにするASPサービスを提供し、サービスの活性化を図る。また、11月下旬には、Android端末向けに提供しているコンテンツマーケットのiモード版を提供し、アプリ開発者にオープンな環境を用意する。

 データARPUの向上に貢献するデータ端末については、人気が高まっているモバイルWi-Fiルータの国際ローミング対応端末を年内に投入するほか、LTE/3G対応の端末を2011年度の早い時期に投入すべく準備を進めているという。

 12月下旬の商用サービス開始を予定しているLTEは、2010年度に累計基地局数1000局を設置し、まずはデータ端末を投入。2011年度は基地局を5000局増やし、下期にハンドセット端末を投入する計画だ。

 山田氏が「動画に次ぐキラーコンテンツ」と期待を寄せる電子書籍事業は、大日本印刷と共同でリアル店舗とデジタルを共存させる形で展開。10月28日からトライアルをスタートし、12月末まで雑誌や小説、コミックなどのコンテンツ50種を無料で提供する。

Photo 冬春モデルでは7機種のスマートフォンを投入
Photo データ通信端末の販売数の推移とデータプランの契約数(左)。モバイルWi-Fiルータは年内に国際ローミング対応モデル、2011年度の早期にLTE/3G対応モデルを投入予定だ

Photo 電子書籍やカーナビサービスなどの新サービスもスタート

スマートフォン時代の差別化ポイントは

 ソフトバンクモバイル、ドコモに続いて、いよいよauもスマートフォン事業の本格展開を開始し、冬春モデル以降はAndroid端末のラインアップが拡充するとみられている。今後は、同じモデルをベースとする端末がマルチキャリアで展開されるケースも出てくると予想され、キャリア間での差別化も難しくなってくる。

 こうした競争環境下でのドコモの強みについて、山田氏はエリアの広さや通信速度の速さといったネットワーク品質とアフターサービスを挙げるとともに、キャリアのネットワークに付加価値を付けるサービスを提供していきたいと話す。「キャリアとしては、土管化は何としても避けたい。キャリアとしてのいろいろなサービスをスマートフォンに載せていきたい。キャリア独自のサービスを載せられるかが競争の1つではないか」(山田氏)

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