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» 2009年05月27日 21時15分 UPDATE

“有給&残業”攻略法:「年間600時間の時短」「1000万円の人件費削減」――デジタルペンで働き方はどう変わる?

「アノトペンで年間600時間の労働時間短縮につながった」「1000万円の人件費を削減できた」。デジタルペン「アノトペン」を現場に導入した企業では、働き方はどう変わったのか。

[杉本吏,Business Media 誠]

 「アノトペンで年間600時間の労働時間短縮につながった」「1000万円の人件費を削減できた」。5月27日、アノトコンソーシアムは公開定例会を開催し、デジタルペン「アノトペン」の企業導入事例などを紹介した。

 アノトペンは、専用用紙に印刷された微小なドットパターンをペン先で読み取ることで、紙に書いた内容をPCなどに転送できるデジタルペン。「書き込んだデータの位置認識が正確で、帳票などへの記入に適している」(アノト・マクセルの山中照雄社長)のが特徴で、主に製造/金融/医療/教育分野などに向けて提供している。

ts_anoto1.jpg アノト方式。微小なドットが入った用紙に専用ペンで書き込んだデータを、デジタルデータとして保存できる

労働時間を600時間短縮――西日本高速道路の事例

 高速道路の建設や管理を行う西日本高速道路は、アノトペンを現場に導入して1年になる。導入したのは高速道路の維持管理事業、具体的にはトンネル照明と道路照明の点検の現場だ。作業員が照明を目で見て、手で触って状態を確認し、実施日、対象灯具の管理番号、点検個所、点検結果などを用紙に記録する業務である。

ts_yoshikawa.jpg 西日本高速道路 保全サービス事業本部の吉川和利氏

 導入の決め手は「紙を用いた従来からの点検スタイルで導入が可能だった点」(西日本高速道路 保全サービス事業本部の吉川和利氏)だ。PDAなどのデジタル端末の導入とは異なり、スムーズな移行が可能となる。

 ペン端末の不具合などでデータが欠損しても、紙による記録が残るのもポイントだ。また、以前は現場ごとに作成していた記録用紙を、全社的に統一できる契機にもなったという。

 「アノトペンの導入により、点検用紙のデータ化の作業時間を従来の2分の1以下に短縮できた」(吉川氏)。取り込んだデータは自動で集計され、提出資料やDB(データベース)ファイルを自動作成できる。

 課題もある。現場では足場が不安定な高所で記録作業を行うため、文字の読み取りエラーが発生しやすい点だ。「取り込んだデータのチェックや修正にも時間が必要」(吉川氏)。そのため、データ化の作業時間は2分の1程度になったが、全行程での作業時間は従来の約80%ほど。それでも年間で約600時間の短縮に成功したという。

1000万円の人件費削減――住商アイナックスの事例

 業務用クリーニング機器の販売と保守/メンテナンスを行う住商アイナックスは、アノトペンの導入でコスト削減に成功している。

ts_nakao.jpg 住商アイナックス 総務経理部の中尾幸蔵副部長

 住商アイナックスでは、クリーニング機器を販売する営業部門と、販売先の店舗を回って機器の保守サービスを担当するメンテナンス部門がある。アノトペンは、メンテナンス部門の担当者が作業報告書を作成するために利用されているという。

 「メンテナンス担当者は、客先で行った業務を作業報告書としてまとめ、控えを顧客(クリーニング店)に渡して帰ってくる。さらに、帰社したらこの作業報告書をPC経由で提出させ、全国のメンテナンス担当者の業務内容を管理したいというニーズがあった」(住商アイナックス 総務経理部の中尾幸蔵副部長)。

 だが、客先で手書きで作成した作業報告書を、帰社後にもう一度PCで入力し直すのでは二度手間だ。携帯情報端末を利用するという手もあるが、その場合は顧客へ控えを渡すためにプリンタまで持ち運ぶ必要が出てくる。そこで目を付けたのがアノトペンだ。

 アノトペンであれば、紙とペンによる報告書の作成手順はそのままに、帰社後にペンをPCにUSB接続するだけで社内システムにデータを転送できる。ただし、「当初はまったく使い物にならなかった」(中尾副部長)。ドット入りの専用記録用紙は、一度書くと追記ができなかったためだ。記録用紙を作成した大日本印刷と検討を繰り返し、何度でも追記できる方式に変更して、この問題をクリアしたという。

ts_anoto2.jpg 住商アイナックスで使用している帳票(作業報告書)のイメージ。

ts_anoto3.jpg アノトペン導入後の運用フロー

 「アノトペンの導入により、メンテナンス担当者は1日15分の作業報告書入力業務を削減できた。試算では、年間1000万円の人件費削減につながった」(中尾氏)。また、全国で作業するメンテナンス担当者の活動状況を、本社の経営層がシステム上で把握できるようになり、メンテナンス部門と営業部門の情報共有もスムーズになったという。


ts_yamanaka.jpg アノト・マクセルの山中照雄社長

 「アノトペンの特徴は、書き込んだデータの位置認識がきわめて正確であること。帳票への書き込み時には、この精度が低いのは致命的だ。他社のデジタルペンと比較しても、業務利用にはアノトペンに優位性がある」(山中社長)。

 ぺんてるの「airpen」やMVPenテクノロジーズの「MVPen」などの他社製デジタルペンでは専用紙が必要なく、ノートや手帳に書き込んだ内容をデータ化できるというメリットがある。こうした点について山中社長は、「最近はドット入りのアノト用紙を印刷できる対応プリンタが増えてきた。今後さらに対応メーカーが増えて、必要なときに自分で用紙を作成できるようになれば、利便性では普通紙とあまり変わらなくなる」とコメント。

 山中社長は、アノトペンを利用したプレゼンテーションソフトやアノトペン付きホワイトボードなどの製品が増えてきたことにも触れ、「今後は業務利用だけでなく、よりエンドユーザーにアピールできるような展開を考えていきたい」と語った。

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