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» 2002年04月19日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン(78):経営者が求めるこれからの技術者 ビジネスを語れるエンジニアの必要性

[三浦優子(コンピュータ・ニュース社),@IT]

 普段、私が取材対象として会うのは、IT業界の経営者層や管理職の方であることがほとんどである。だから、@ITの記事を読んで、技術者の方の生の声を記事にしたものを目にすると、非常に新鮮な感じがする。やはり、経営者層と現場の技術者層では、それぞれの思惑に隔たりがあるように思うのだ。

技術の進展で収益が悪化する地方のSI業者

 特に地方に取材に行くと、東京以上に経営者層は大きな悩みを抱えている。会計や販売管理などの基幹系システムの構築サービスを提供している事業者はここ10年、大きな環境の変化にさらされてきた。

 大企業が少ない地方では、ユーザー企業のほとんどが中小規模の会社だ。ご存知の通り、日本の中小企業ユーザーはその昔、プロプライエタリなオフィスコンピュータを使ってきたわけだが、1990年代以降はパソコン、クライアント/サーバ、オープンシステムと移行してきた。オープンシステムとなるとハードメーカーも、従来のオフコン時代のような支援は行わないし、個々の技術はものすごいスピードで進化する。この技術の進化が速すぎて、コストが合わなくなっているというのだ。

 以前、あるディーラーの社長さんから、こう言っていた。

 「あるメーカーの認定試験に関してだが、実際に現場でシステムを組む能力があるのはそうした資格をもっていない人間だったりする。確かに資格者を揃えること、勉強をさせることの重要性は感じるが、勉強や受験のためにスタッフの時間を割かれるのは非常に痛い。資格試験を実施しているメーカーのトップの話を聞くと、確かに道理に叶ったことを言っているし、共感できる部分も多かった。しかし、実際に地方で仕事をしていると、理想通りには進まないことも多いんだ。COBOLは1回修得すれば、10年ビジネスができた。そうした意味では地方で商売をする者に適した技術だった……」

 東京でメーカー取材をして新しい技術の話を聞いていると、最新技術こそ正義という気分になるが、実際のビジネスにおいては技術進展が速すぎて収益的に合わない面も多々出てくる。特にユーザー企業が少ない地方では、この傾向が顕著だろう。

 もちろん、地方に拠点をもちながら、東京進出を行うことで、地方企業が先進技術を売り物にビジネスを行うことは可能だろう。だが、地方にもユーザー企業は存在する。地方ユーザー企業を相手にビジネスを行うSI事業者やディーラーにとって、どんなスキルを身につけることが最適なのだろう。

技術よりもコミュニケーション能力が必要という声

 実は最近、相次いでこんな言葉を耳にした。

 「技術の説明ができるスタッフよりも、ユーザー企業の経営をよくするための助言が行えるスタッフが欲しい」

 表現は多少異なるものの、複数のシステムインテグレータの経営者層が、「きちんとユーザーとコミュニケーションをとることができて、客先でプレゼンテーションができる人員が欲しい」と口を揃える。

 逆に、「これだけ技術が難しくなってくると、以前のような営業マンのプレゼンテーションだけでは物足りない」という声もある。

 従来のように、営業職と技術職を完全に分離し、それぞれの仕事だけをこなしているだけで十分ではなくなっているのである。きちんと技術的背景をもちながら、顧客の立場に立ってビジネス上の提案ができ、プレゼンテーション、コミュニケーションがとれるスタッフを確保したいと経営者層は考えるようになっているのである。

 みずほ銀行のトラブルの例を持ち出すまでもなく、ビジネスとITはもやは切り離せなくなっている。本気でビジネスデザインをしようとすればIT抜きということはあり得ず、IT活用を情報システム部門だけが考えるという時代でもなくなっている。それに応じてSI事業者側でも、ユーザー企業の経営者が納得するようなプレゼンテーション、コミュニケーションがとれるスタッフが必須になっているだ。

逆にIT業界に進出する経営のプロたち

 こうした話を聞いて、地方でITビジネスを行う企業が目指すべきは、ITを経営に生かすための助言ができるスタッフの育成なのではないかと感じている。経営に助言ができるスタッフとなれば、技術の進展が激しくとも必要性は薄れないはずである。

 もちろん、経営の助言ができる人材の育成は簡単に行えるわけではない。だが、最近では公認会計士や税理士といった経営指南のプロが、ITコーディネータのようなIT活用をした経営助言をするための資格の取得に積極的だと聞く。実際、大企業をターゲットとしたマーケットでは、経営コンサルティングやシンクタンクが本業だった会社がSIの上流工程にあたるITコンサルティング事業でビジネスを伸ばしている状況を見れば、中小企業向けにもこれまでとは出自の違う異業種からのSI事業者が生まれてくる可能性は十分にある。

 IT業界側も、従来のように自分の専門分野だけが完璧だったらそれでいい……というわけではなさそうだ。経営者にとっても難しい時代だが、SI会社に勤務するスタッフにとっては、今まで以上の努力と研さんが必要な大変な時代になってきた。

Profile

三浦 優子(みうら ゆうこ)

株式会社コンピュータ・ニュース社

1965年、東京都下町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。

メールアドレスはmiura@bcn.co.jp


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