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» 2012年12月03日 14時00分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:青少年のネット依存を考える(4)

SNSを利用することで、ユーザーは社会的なつながりを実感でき、また友人知人からの賞賛も得られる。こうした人々の関係性が財産であるとするのが、ソーシャルキャピタルという概念だ。

[小寺信良,ITmedia]

 青少年のネット依存の問題で以前から指摘されてきたのが、中高生のメール依存である。通話とは違う、いつでもどこでもを実現するコミュニケーション手段として、子どもたちの間でも広く浸透した。

 しかし今後この傾向は、SNSやメッセージングサービスに形を変えていくものと思われる。SNS依存の問題は、古くて新しい問題だ。かつてパソコン通信時代からすでに、ネットのしすぎで生活を崩壊させる大人が居たことは、今となってはほとんど忘れ去られている。

 SNSを利用するのは、利用することによって満足が得られるからである。これは、マスコミュニケーションを使う理由を説明するためによく使われている、「メディアの利用と満足理論」で説明できる。人は自分の個人的な欲求を満足させるために、選択的にメディアを利用するという理論である。

 SNS利用によって得られる満足としては、ある研究では、娯楽、愛情、問題共有、流行、社交、社会的情報の6つのメカニズムにより、満足を得ているとしている。別の研究に寄れば、社交、娯楽、ステータスの向上、情報の4つの欲求を満たす、とする。

 Facebookは、昔の友人や現在の友人のつながりを維持する、昔の友人の居場所を探す、といった欲求を満たし、Twitterは堅苦しさのない仲間意識という観点から、満足感を得ているという調査もある。

SNSから得られるソーシャルキャピタル

 SNSを利用する理由を端的に表わせば、ソーシャルキャピタルを得る行為だと言える。ソーシャルキャピタルとは、従来型の資本の概念である物理資本(フィジカルキャピタル)、人的資本(ヒューマンキャピタル)と並んで、近年米国の政治学者ロバート・パットナムによって広く知られることになった比較的新しい概念である。

 ソーシャルキャピタルとは、人々が広く関係性を持つ事で、社会の効率性を高めることができるとする考え方で、信頼、地域の安全性、行動規範などに強い影響を与える。端的に言えば、多くの人と知り合いであるということが一つの財産であるという考え方である。

 心理学上で語られるソーシャルキャピタルとは、次の3つに分類される。

  • 内部結束型:近親者から得られる愛情や強い結びつき。
  • 維持型:近親者ほど親しくはないが、既存の人間関係を維持する中で得られるもの。場合によっては支援してくれる程度の関係。
  • 橋渡し型:必ずしも困ったときに支援はしてくれないが、情報提供などで価値をもたらせてくれる人間関係。結びつきとしては弱い。
photo ソーシャルキャピタル

 SNSが自己愛を増幅する装置として機能する可能性については、前回でご紹介した。そして自己愛が過多になると、さらなる自己愛を満足させるために、加速度的にSNSにのめり込んでいくという構造を持っている。

 自己愛的傾向を示すSNS利用者は、他者からの賞賛を常に求めている。そしてそれは、橋渡し型ソーシャルキャピタルから、より多く得られる。なぜならば、そこが一番人数が多いからであり、SNSでの人間関係のほとんどがそこに属しているからである。

 一方で自己愛的傾向が低い人は、内部結束型と維持型のソーシャルキャピタルを重視しており、結果としてSNSに頼らなくても、実社会の中で充足感を多く得ている。従って、SNS依存になりにくいと考えられる。

 ではなぜ自己愛的傾向を示す人にとって、やめたくても自分の意志ではやめられないほど、ネットのコミュニケーションは中毒性を発揮するのか。それは、SNSを利用していれば、薄い人間関係から常に小さな賞賛という形で、少量の精神的報酬が継続的に得られるからである。

 これは延々と続く小さなギャンブルに似ていて、我々の脳に衝動的なエネルギーを補充し続ける。これが積み重なることで、抗いがたい中毒的な傾向を示すようになる。この考え方は、今後日本でも問題になると思われる「ソーシャルゲーム依存」の傾向を分析する際に役に立つだろう。

 また韓国のネットゲーム依存や米国のSNS依存は、スマートフォンの普及と切り離せない問題である。次回はメディア依存のさらに大枠として、テクノロジー依存と呼ばれる問題を考える。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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