「LINE」で何が起こっているのか(4)小寺信良「ケータイの力学」

» 2012年09月24日 03時30分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 前回は「LINE」内で行なわれるコミュニケーションについて考察した。意図した相手とのコミュニケーションなら問題ないが、LINEの仕組みでは意図しない相手と友だちや知り合いになってしまい、コミュニケーションが可能になる状況が発生し得る。

 1つの例としては、電話番号の持ち主が変わってしまっている場合がある。携帯電話の番号は、契約者が変わると数年間は再割り当てされずに寝かされたのち、別の新規に電話番号が欲しい人に振り出されるようになっている。

 あなたのアドレス帳には、5年から10年電話したことがないという人も、まだ入っているのではないだろうか。最近はSNSがあるので、電話しなくても連絡が付くことも多く、すでに電話番号が違っている人も一定数あるはずだ。

photo この表記からは、「友だち自動追加」で起こりうるトラブルを事前に予想することは難しい

 LINEの設定で「友だち自動追加」がオンになっている場合、あなたのアドレス帳にある番号でLINEの利用者がいれば、自動的に友だちとして登録してしまう。したがって、全然知らない人をこちらから友だち登録している可能性がある。

 逆の立場として、もしあなたが新規の電話番号を持ったとしよう。あなたの番号は、以前は誰かほかの人の電話番号であったわけだから、その誰かさんの友人・知人のアドレス帳には、その番号が入ったままになっていることはあり得る。あなたがLINEを利用する際に、「友だちへの追加を許可」がオンになっていると、誰かさんの友人・知人は、LINEであなたを友だちとして登録することができる。もちろん、あなたの知らない、以前その番号を持っていた人としてだ。

 こうなると、全然知らない人と友だちになっていたり、「知り合いかも?」に現われるという状況が発生することになる。実際に知らない人と通話したり、チャットしたりした例(知らない人が出てくるLINE「知り合いかも?」の仕組み解説まとめ)も少しあるようだ。今はまだ笑い話で済むレベルだが、いつまでも性善説でやれるような利用者数ではなくなってきているので、啓蒙が必要な部分だろう。

 携帯電話の番号はすでに枯渇状態にあり、総務省ではPHSに割り振っていた070番を携帯用に使うという案に対してのパブリックコメントを募集している。実施は平成26年とまだ少し先のことだが、これが実施されると、かつてPHSユーザーだった人の人違い番号が、LINEに大量に流れ込んでくる可能性がある。

出会い系化勢力との攻防

 子を持つ親として、コミュニケーションの仕組みで常に懸念するのは、いわゆる「出会い系」に利用されるのではないか、という点だ。

 LINEの利用規約では、禁止事項12.8として、

性行為やわいせつな行為を目的とする行為、面識のない異性との出会いや交際を目的とする行為

 を禁じている。それに違反したペナルティに関しては具体的な記載がないが、同13.2に、

当社が必要かつ適切と判断する措置を講じます。

 とある。おそらくアカウント停止措置がとられるのだろう。

 ただiOS版では電話番号なしで登録できるし、キャリアメールはアドレスの変更が可能なので、違反者が再登録してくる行為をどのように防止するのかは、よく分からない。規約には、

当社は、かかる違反を防止または是正する義務を負いません。

 とあるので、努力はするが完全には防止できないという状況であろう。

 LINEを出会い系として利用する手段としては、LINE外のサービスやアプリを使って、連絡先を教え合うという方法がある。LINEでは各ユーザーが固有のIDを登録することができ、このIDを教えるだけで、相手はこちらを友だちとして認証できる。外部のサービスは、このIDを交換し合うシステムになっている。

 今年5月には、LINE公式ブログでこれらの外部サービスとアプリに対して、名指しで利用しないよう呼びかけている。ただ利用者がわざわざ公式ブログなど見るか、ということもあり、この警告もほとんど伝わっていないものと思われる。

 またNHNも、LINE内のユーザーに対しては利用規約などで縛れるが、LINEの外側で行なわれている情報交換に関して規制する権限はない。App StoreやGoogle Playに申し入れしたとしても、おそらくそれぞれのガイドラインに違反しない限りリジェクトすることは難しいだろう。事実上、外側からのアプローチには手が付けられない状態が続いている。

 次回は、出会い系アプリの実態と、その対策状況などを調べてみたい。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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