青少年のネット依存を考える(1)小寺信良「ケータイの力学」

» 2012年10月22日 13時55分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 インターネットユーザー協会(MIAU)で作成したインターネットリテラシー読本「“ネット”とうまく付き合うために」は、2008年に公開し、少しずつアップデートを続けているが、当時からすでにメール依存は保護者の間で問題となっていた。だがこれは主に、中学生で初めてケータイを持ったという時期的な要素の強い問題であり、広く一般的な傾向として現われた現象ではなかった。

 今年5月にはソーシャルゲームで仕組みの問題が指摘され、射幸性というキーワードが浮上するも、依存傾向に関して踏み込んだ報道は少なかったようである。だがそれ以前にも、ネットでは“ミクシィ疲れ”や“Twitter依存症”といった言葉が登場していることから、なんとなく依存傾向を問題視する傾向は出ていたように思う。

 ネット依存の問題に関して、体系的な研究や対策が進んでいるのは、韓国である。急速な経済成長に後押しされて、日本よりも早い段階で高速なインターネット網が整備されたが、それ故に依存の問題が国家的な規模で発生した。すでに2002年の段階で、依存に対する予防相談センターが設立されるなど、取り組みを進めている。

 福岡県のNPO「子どもとメディア」では、今年の2月に日韓共同で、“「メディア中毒」からの脱出”というテーマでフォーラムを開催した。これから数回にわたって、このフォーラムでの講演および資料をベースに、韓国のネット依存に対する分析と実態を見ながら、日本でどのような予防が可能なのかを考えてみたい。

韓国における「ネット中毒」とは

 「ネット中毒」とはどのような状態を指すのか。そもそも中毒とは、「毒に中(あ)たる」という意味で、人体にとって毒性があるものを誤って摂取した場合に起こる、身体的な不全症状を指す言葉である。

 インターネットによる健全な社会育成をめざすMIAUとしては、ネットがそもそも毒物であるかのような言い回しは受け入れられない。しかしすでに多くのメディアが、韓国でのネット依存に対する取り組みに対して「ネット中毒」と翻訳しているようだ。おそらく依存よりも強い意味で、中毒という言葉を使っているのだろう。本稿では特に支障がない限り、当該の現象をネット依存と呼ぶことにする。

 まずネット依存の類型として、5つのパターンがある。

韓国のネット依存 5つの類型

  1. ネットゲーム
  2. Webサーフィン
  3. 賭博
  4. チャット・SNS
  5. 買い物

 ここにないものとして、「アダルトサイト」を上げている資料もあるが、これはWebサーフィンの中に入れてもいいだろう。韓国ではこのうち、7〜8割がネットゲーム依存である。

 では何をもって、その人が依存状態にあるかを判断するのか。そのために韓国では、2003年に独自の尺度である「K尺度(Korean Scale)」を開発し、状況を見ながらアップデートしている。具体的には15の項目への該当性をチェックする仕組みだが、6つの因子に分類できるようだ。なお分類は筆者の考察に基づいたものも含まれるため、もしかしたら齟齬があるかもしれない。

分類 事例
禁断症状 ネットを使用する途中でやめると、また始めたくなる。
ネットができないと落ち着かず焦りを感じてしまう。
耐性 ネット使用時間を減らそうとしたが失敗した。
ネット使用を減らさなければならないと強く感じてはいる。
適応機能障害 ネット使用によって体調が以前より悪くなった。
ネットを頻繁に使用するため頭が痛い。
ネットができないと不安になる。
嗜癖的自動思考 ネットができないと生活は退屈で楽しくない。
ネットを使用していない間もネットのことが頭によく浮かぶ。
ネット使用のためにお金をより多く使うようになる。
逸脱行動 周りの人たちは私がネットを使用しすぎだと指摘する。
ネット使用によって計画したことを計画通りにできなかったことがある。
仮想的対人関係指向 実で知り合った人たちよりネットで知り合った人たちをよりよく理解できる。
オフラインよりオンラインで私を認めてくれる人が多い。

 また、依存状態には、3つの段階があるという指摘も興味深い。

状態 事例
好奇心段階 チャット、アダルト、ゲームに好奇心から参加。定期的に接続しながら仲間と情報交換。
代理満足段階 現実にない楽しさをネットで満喫。暴力性、邪悪性、淫乱性の内在的本性を発揮。ゲームの達人としてその世界で尊敬される。
現実逃避段階 もっぱら接続状態だけを渇望。仮想世界の幻想にとらわれ現実認識に障害。現実世界のすべての秩序を否定。

 日本と違い、韓国はPCの利用率が非常に高い。日本では子どもがケータイばかりのぞき込んでいるといったイメージが先行するが、そのような状況とは違う点に留意する必要がある。とはいえ、日本でも参考になる部分は多い。

 次回は依存状態に至る原因と、社会状況などについて調べてみたい。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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