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» 2013年03月25日 17時40分 UPDATE

1局のユーザー数は他社の半分以下:“小セル化”でパケ詰まりを解消、接続率1位は「偶然ではなく必然」――ソフトバンク孫氏

1月末の決算会見で携帯電話の通話接続率1位を明らかにしたソフトバンクモバイル。通信網の小セル化でパケット通信の接続率も向上し、他キャリアと首位を争うまで品質が改善したという。

[平賀洋一,ITmedia]
photo ソフトバンクグループの孫正義代表

 ソフトバンクモバイルは3月21日、モバイルネットワークに関する説明会を開催し、同グループ代表の孫正義氏が通信品質の改善結果をあらためて報告。傘下に収めたイー・アクセスのLTE網をソフトバンク端末でも利用できる「ダブルLTE」や、グループのインフラを活用した通信網の“小セル化”によって「接続率1位は偶然ではなく必然のこと」と述べた。

 ソフトバンクは2010年3月に「電波改善宣言」を発表して以来、通信品質の改善に取り組んできた。それが一段と進んだのは、900MHz帯を使ういわゆる「プラチナバンド」サービスを2012年7月に開始してから。

 当初の計画では900MHz帯の基地局を2013年3月末までに1万6000局設置する計画だったが、実際は2カ月速く1月末には1万6000局を達成し、この3月末には約2万局まで到達するという。孫氏は、「大雪でも工事をあきらめずに基地局を黙々と設置した。結果、ギネスブックものというスピードでプラチナバンドの基地局を立ち上げることができた」と振り返る。

photophotophoto 3月末に達成する基地局数(写真=左)。音声とパケットの接続率は引き続き1位(写真=中央、右)

 孫氏は1月末に行われた2012年度第3四半期の同社決算会見で、音声接続率/パケット接続率/データ通信速度の各調査結果がNTTドコモやKDDI(au)を上回る国内ナンバーワンになったことを明らかにしている。

 そこでは接続率1位について、“一時的かもしれない、錯覚、調査の失敗かもしれない”と前置きしたが、今回は「毎日調査結果を見ていると、毎日ナンバーワンという訳ではいかないが、パケットの接続率も1位2位を争っている。かつては大きく下回っていて悔しい思いをしたが、直近の結果を見ているとナンバーワンを争える位置にいることは間違いない」と述べ、通信品質を着実に改善していることを強調した。

photophotophoto パケット通信速度も3社のなかで1番速い(写真=左)。全体では0.1%程度の差だが、iPhone 5に限ると他社(au)との差は広がる(写真=中央、右)

 またKDDIも販売するiPhone 5に限った比較でもソフトバンク版のほうが成績が良く、キャリア全体では0.1%台に迫る各社の差が、iPhone 5に限れば2%近くまで広がると説明。機種ごとに通信時の特製が違うため、早くからiPhoneを販売するソフトバンクに一日の長があるという。なおW-CDMA版のiOS 6.1.1には3G接続が不安定になるバグがあり、iOS 6.1.1がリリースされた直後は接続率が落ち込んでいる。孫氏はこのバグについて、「最初に見つけたのはソフトバンクで、Appleにはすぐに対処してもらった」と振り返った。

 これらの調査の公平性については、音声接続率が調査会社イプソスによるもの、またデータ通信速度も第三者のイードが配信している通信速度測定アプリ「RBB TODAY SPEED TEST」を使った結果であり、「それぞれ第三者機関が調査したこと」(孫氏)と客観性の高いデータであると強調。またパケット接続率についてはグループ企業のアプリ(ヤフーの「防災速報」と、Agoopの「ラーメンチェッカー」)の通信ログを元に分析したものだが、アプリはマーケットで配信していて誰もがインストールできるもので、キャリア3社のサンプル数が同じあること。また月間1億5000件の通信ログから無作為に抽出した結果であり、「ソフトバンクの都合の良いデータを用意したわけではない」と説明した。

 音声接続率は通話に関する品質の指標だが、スマートフォンの普及で顕著なのがデータ通信の爆発的な増加。全国の平均トラフィック量は2008年4月から5年で60倍に増え、特に都市部でのトラフィックは約100倍の伸びを見せている。その結果問題となっているのが、スマホの「パケ詰まり」と言われる現象だ。

 孫氏はパケ詰まりについて「アンテナバーが“バリ3、バリ5”という状態にも関わらず、パケットが降りてこない状態」と定義付け、「これは非常にイライラする」とコメント。その原因について「バックボーンやノードの問題もあると思うが、その多くは(基地局と端末を結ぶ)無線アクセス部にあると理解している」と述べ、解決には基地局を利用するユーザーを少なくして混雑を防ぐ「小セル化」が最も効果的とした。

photophotophoto スマホシフトでデータ量が激増している(写真=左)。基地局を細かく設置する「小セル化」戦略(写真=中央、右)

 「スマホ時代のネットワーク強化とは、データ、パケット通信の強化に集約されるといってもいいのではないのか。トラフィックが60倍になっても、60倍の電波が使えるわけではない。そこでさまざまな工夫が必要になるが、パケ詰まりに効果的な対策は『小セル化』だ。ソフトバンクの基地局数は他社の倍くらいあり、これをユーザー数で比較すると1局あたりのユーザー数は約4分の1。道路でいえば混雑しにくい状態」(孫氏)

photophotophoto 1つの基地局あたりのユーザー数は、他社の半分以下(写真=左)。さらにAXGPやWi-Fiを使ってオフロードを図っている(写真=中央、右)

 この小セル化戦略には経営破綻によってソフトバンクグループ入りしたウィルコムのマイクロセル基地局とその運用ノウハウも役立っている。「小セル化したモバイルデータ通信の元祖といえばウィルコム。特に都心では新しい基地局を建てる場所はもうなく、ウィルコム買収が(小セル化には)効いている。LTEは世界の標準技術で各キャリアが使える。良い設備や良い端末はお金をたくさん使えば調達することができる。そこで我々は、小セル化のノウハウが一番大きな差別化ポイントになると考えている」(孫氏)

 増強中のLTEとW-CDMAの基地局に加えて同社が利用するのが、「SoftBank 4G」というサービス名で提供されている「AXGP」のネットワーク網で、その基地局数は全国で2万5000局。また外出時に無線LANが利用できる「ソフトバンクWi-Fiスポット」が全国で45万局あり、さらにユーザー向けに配布したWi-Fiルーターが約340万台に上り、このうち210万台がアクティブなユーザーだという。

 特にWi-Fiスポットについては、「ユーザー向けに配布しているWi-FiルーターはFONと提携しているため、ほかのユーザーが設置したスポットも設定なしで利用できる。単に自宅へWi-Fiスポットを置いたのとは訳が違う。そしてヘビーユーザーの場合、Wi-Fiにオフロードすることで(携帯電話網への)トラフィックを半分にできる」と自信を見せた。

 こうした「徹底的に小セル化を意識したネットワーク戦略」(孫氏)を取る同社だが、増加するスマホのデータ通信に対して対策が十分とは判断していない。そこで開始したのが、iPhone 5とiPad/iPad miniを対象としたイー・アクセスの1.7GHz帯を使ったLTE網の“拡充”だ。まずは都市部の駅前など混雑したエリアから対応させ、今後1年をかけて全国に広げる。21日時点では、具体的には東京・池袋の駅前などが対応しているという。

photophotophoto イー・アクセスのLTE網を使う「ダブルLTE」

 ソフトバンクモバイルのLTEサービスは2.1GHz帯が使われており、現時点でiOS端末のみが対応。AndroidについてはAXGP(SoftBank 4G)と明確にすみ分けを図るという。「イー・アクセスのLTE網は貴重な帯域であり、もっとも使われているiPhone向けに活用していきたい。1.7GHz帯(※)はLTEでは世界標準といえる帯域であり、W-CDMA版のiPhone 5は最初からサポートしている」と述べ、ソフトバンクモバイルのiPhoneユーザーはOSのアップデートや特別な設定なく利用できるとした。さらに、ソフトバンクモバイルとイー・アクセスが標準的な規格を元にインフラや端末を調達していることが、W-LTEの実現に有利に働いたとアピールした。

※イー・アクセスの1.7GHz帯は、LTE向けの「Bnad 3」と呼ばれる1800MHz帯に内包されている

 「LTE網の拡張は、イー・アクセスの買収による効果が絶大だ。(買収で電波を集めるのは不公平という批判に対して)ユーザー数からいくと帯域の割り当ては今でも不公平だと感じる。もう1つのプラチナバンドである700MHz帯もドコモとKDDIに与えられた。イー・アクセスについては当初、KDDIが正式に買収の申し入れをしていた。もしそこで我々がアクションを起こさなかったら、(1.7GHz帯はKDDIのものになり)より不公平になっていた」(孫氏)

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