ファブレットを訴求するau春モデル/Tizenと明暗分かれるFirefox OS/ソフトバンクの新料金プランはお得?石野純也のMobile Eye(1月20日〜1月31日)(1/3 ページ)

» 2014年02月01日 12時06分 公開
[石野純也,ITmedia]

 春商戦が本格化しつつある、1月20日から31日にかけての2週間。この間、KDDIは春モデル5機種を発表した。目玉は「ファブレット」と呼ばれる、6インチ台のディスプレイを搭載した2機種。冬モデルとして発売した「GALAXY Note 3」と合わせ、KDDIはこの分野の拡大を狙う。また、同発表会ではKDDIが開発を進めている「Firefox OS」を搭載した端末の狙いも明かされた。本連載では、あらためてTizenとの違いにフォーカスしていきたい。春以降の施策としてソフトバンクモバイルが発表した、パック型のプランもこの2週間で話題を集めたトピックの1つだ。本料金プランにKDDIやドコモはどう対応していくのか。プランの詳細とともに、他社の動向も紹介していく。

同質性の中の違いを訴え「ファブレット」をアピールするKDDI

 KDDIは、1月22日に春モデルの発表会を開催した。新たに披露されたモデルは全部で5機種。スマートフォン4機種、タブレット1機種の内訳で、うち2機種はスマートフォンとタブレットの“いいとこ取り”をした「ファブレット」となる。新たに発表したファブレットは曲面ディスプレイを搭載した「G Flex LGL23」と、Xperia Zシリーズのデザインを受け継ぐ6.4インチの「Xperia Z Ultra SOL24」。標準的なサイズのスマートフォンとして「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」や「URBANO L02」を、タブレットとして「AQUOS Pad SHT22」も用意する。

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photophotophoto KDDIの春モデルは全5機種。左上から「G Flex LGL23」「Xperia Z Ultra SOL24」「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」「URBANO L02」「AQUOS PAD SHT22」。ファブレットを充実させたのが特徴だ

 ファブレットとは、電話とタブレット、両方の特徴を兼ね備えた端末のこと。語源は英語の造語で、「Phone」と「Tablet」という2つの単語を組み合わせて「Phablet」と表記される。とはいえ、スマートフォンやタブレット以上に明確な定義はなく、海外では、5インチ以上7インチ未満の端末で電話ができるものをファブレットと呼ぶのが一般的だ。この定義に沿うと、秋冬モデルの多くもファブレットということになるが、Androidのスマートフォンで5インチ前後が主流になっている事情もあり、KDDIはそれより一段大きな5.5インチ以上で電話機能を備えた機種に限定しているようだ。

photo 目玉となるファブレットは6インチの「G Flex」と、6.4インチの「Xperia Z Ultra」を用意した

 この分野を切り開いてきたのが、Samsung電子だ。同社は2011年に「GALAXY Note」を投入(日本展開は2012年から)。その後、毎年後継機を投入し、2013年の秋冬モデルでは、「GALAXY Note 3」がドコモとKDDIの2社から発売される。現状、日本ではまだ大ヒットに至っていないが、海外のハイエンドモデルでは徐々にスタンダードになりつつある。特にファブレットが強いのはアジア市場で、メーカー関係者からは「アジアでは小さな画面の端末は性能も劣っていると認識され、大画面に人気が集中している」との声が聞こえてくる。実際、旅行や出張でアジアに行って街角を観察してみると、行きかう人の多くが大画面のスマートフォンを使用しているのが分かる。

photo 冬モデルの「GALAXY Note 3」は、ファブレットの代表格。この分野を切り開いてきたシリーズだ

 Samsung電子やLGエレクトロニクスに加え、中国メーカーの多くもファブレットを相次いで投入しているのは、そのためだ。2013年6月にソニーモバイルが発表したXperia Z Ultraにも、同様の狙いがある。同社はあえてファブレットの主戦場である北京で発表会を開催し、Xperia Z Ultraを大々的にデビューさせた。一方で、先に述べたように、ファブレットが日本で定着しているとはいいがたい。GALAXY Noteシリーズには根強いファンがついているものの、爆発的にヒットしているわけではない。

photo ソニーモバイルは、ファブレットの主戦場ともいえるアジア市場で「Xperia Z Ultra」を発表した。写真は6月当時のもの

 ただ、こうした状況も少しずつ変わってきた。KDDIがファブレットを相次いで投入する狙いも、ここにある。同社の代表取締役社長 田中孝司氏は5インチ以上の端末を利用するユーザー数の推移を示しつつ、「どうもお客さんは少しずつ大画面にシフトしている」と語った。実数は伏せられていたため、規模は推し量れないが、Android端末の販売実績を追っていけば、その傾向は確かにみて取れる。また、2台目のタブレットとデータ利用量をシェアできる「データシェアプラン」(現在はキャンペーン期間中でシェアはされない)を導入以降、「タブレットもダメかと思っていたが、そうではない。伸びている」という。特にスマートフォンに慣れたユーザーの、大画面に対するニーズが高まっているというわけだ。

photophoto 5インチ以上のスマートフォンやタブレットの稼働数は右肩が上がりとなっている(写真=左)。タブレットについては、データシェアの導入で伸びが顕著になったという(写真=右)

 また、今の市場を見ると、大手3社の端末に差がなくなりつつある。これが、KDDIがファブレットに力を入れるもう1つの理由だ。田中氏が「iPhoneはソフトバンクとauだけだったが、ドコモからも発売された。『3社横並びでは?』という声が聞こえる」と語っているように、“iPhoneを持っていること”だけでの差別化が難しくなった。一方のAndroidはドコモが充実していた状況だったが、KDDIもiPhoneが横並びになる状況を見越してラインアップを拡充したため、「Xperia Z1」や「GALAXY Note 3」といった目玉の端末では差がつかない。

photo iPhoneが3社から出そろい、端末ラインアップは横並びになりつつある

 そのような中、ファブレットは、ドコモもソフトバンクも手薄だ。田中氏は記者会見で、次のように語っている。

 「3社横並びじゃないの? という声が聞こえてくるが、そうじゃない。違った軸を頑張って打ち出していく。G Flexもそうだが、スマホはまっすぐなものだけではない。サイズもこれで本当にいいのかという思いがある。(中略)お客様はいろいろな側面で各自業者を比較する。それぞれのアイテムで違ったことができないのか、提案させていただいた」

 ただ、KDDIとしても、市場がいきなりファブレット一辺倒になるとは考えていない。田中氏は30日に開催された決算会見で、「もちろん、そんなにたくさん売れるとは思っていない」と本音を明かした。やはりAndroidでも売れ筋はAQUOS PHONE SERIE miniや、秋冬モデルのような、中型のスマートフォンと考えているようだ。一方で、すでにG FlexやXperia Z Ultraは販売が開始されており、「Xperia Z Ultraはポジに出ている(予想以上に売れている)」という。目新しさを打ち出せただけでなく、販売面でも一定の成果があったことがうかがえる。

 差別化の軸は端末だけではない。田中氏が「一押しはネットワーク」と述べているように、800MHz帯のLTEを中心にした同社のネットワークは、エリアと速度のバランスが取れており評判も上々だ。また、データシェアやauスマートバリューで料金を、auスマートパスでサービスを、auスマートサポートでユーザーサポートをというように、各分野で違いを打ち出している。ファブレットの強化は、この戦略の一環なのだ。

photo 各分野でどのような差別化をしてくのかをまとめた表は、決算会見で披露されたもの

 ただし、ここまで述べてきたように、日本ではまだファブレットが市場のメインストリームになっているとはいえない。海外では一般的だが、「特殊な市場」と評されることの多い日本で、どこまでシェアを伸ばせるのかは未知数だ。ファブレットという分野を定着させるには、KDDIだけでなく、他社も含めて複数の機種がきちんと売れる必要がある。その意味で、春商戦以降の動向にも引き続き注目しておきたい。

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