「もう1つのこだわりが『isai』。オリジナルモデルを作っていこうという思いは常にある」(田中氏)と語るように、端末での独自性を打ち出すKDDI。春商戦はファブレットで差をつけた形だが、今後の目玉として「Firefox OS」を搭載した端末も開発している。春モデルの発表会では、KDDIがどのようなFirefox OSスマートフォンを構想しているのかも語られた。
Firefox OSは、Mozillaがキャリアやメーカーと一緒になってオープンソースで開発を進めているOSだ。Samsung電子やドコモ、Intelらが中心となって推進しているTizenと合わせて、「第3のOS」と呼ばれることもある。アプリの言語にWebを記述するための「HTML5」を利用しているのが特徴で、すでにZTEやTCLといった中国メーカーが南米や欧州の一部で端末を発売している。2013年11月には、LGエレクトロニクスもブラジル向けの端末を発売した。
現時点では新興国向けのローエンド端末を開発するプラットフォームになっているが、KDDIの端末はこれとは違い、スマートフォンに慣れ親しんだヘビーユーザーを狙っているようだ。田中氏によると、「少し違った世界をご提案できるもの、auらしさを大事にしたもの」になるという。端末はiPhoneやAndroidなど、従来のスマートフォンとは大きく異なる特徴を持ったものになりそうだ。田中氏は次のように語っている。
「(フィーチャーフォンからの移行の受け皿という立ち位置を目指していた)ドコモさんとは、スタンスが違う。Android、iOSの次という感じではなく、Firefox OS特有の差別化要素を生かし、ギーク層(コンピューターに詳しい先端ユーザー)をドカンと狙っていく。『ここまで尖っているのか』というものにしていきたい」
端末の発売は2014年度内とのことだが、田中氏が「年内」と間違ってコメントしたあと、広報から訂正が入る一幕もあった。こうした事情や現時点で漏れ伝わってくる情報を踏まえると、年末に発表して2014年中に間に合うかどうかのタイミングで発売される可能性が高そうだ。
同じ第3のOSとして語れることの多かったTizenとは、明暗が分かれた格好だ。本連載でも取り扱ったように、Tizenは発売が見送られることがドコモから発表された。ドコモの代表取締役社長 加藤薫氏は、31日に開催された決算会見の席で、「iPhoneを扱いながら、全体のマーケットが鈍化しつつあるときのことを考えて、見送らせていただいた」と理由を述べている。加藤氏は「Tizenは重要なOS」としながらも、「これからいろいろ考えていくことになる。決まったマイルストーンがあるわけではない」と計画が白紙に近い状態であることも明かしている。
先にiPhoneを手に入れAndroidやFirefox OSで差別化を狙うKDDIと、ようやくiPhoneがラインアップに加わり、今はそれで手一杯のドコモというように、両社の立場の違いが第3のOSの取り組みにも影響していることがうかがえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.