ファブレットを訴求するau春モデル/Tizenと明暗分かれるFirefox OS/ソフトバンクの新料金プランはお得?石野純也のMobile Eye(1月20日〜1月31日)(3/3 ページ)

» 2014年02月01日 12時06分 公開
[石野純也,ITmedia]
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ソフトバンクの新料金プランは本当におトク?

 ソフトバンクモバイルが「VoLTE時代を見据えて」発表した新料金プランも、この2週間で話題を呼んだトピックの1つだ。同社は1月24日に「革新的な新定額サービス」として、3つの新料金プランを発表した。

 特徴は音声通話の時間制定額と、パケット通信のプランがセットになっているということ。最も安い5980円の「Sパック」では、3分以内、月50回までの通話が無料になり、パケット通信も月2Gバイトまで利用できる。逆に、料金が一番高い「Lパック」は、5分以内、月1000回までの通話と、15Gバイトまでのパケット通信がセットになっている。この2つの中間で、同社が「メイン」(広報部)と考えているのが、「Mパック」だ。こちらは5分以内、月1000回の通話と、7Gバイトまでのパケット通信が可能となる。

ソフトバンクが発表した3つのパック
Sパック Mパック Lパック
国内音声通話 3分以内/月50回まで 5分以内/月1000回まで
パケット通信 2Gバイトまで 7Gバイトまで 15Gバイトまで
月額利用料 5980円 6980円 9980円
※料金はすべて税別

 新料金プランは4月21日に提供が開始される。利用には端末の購入が必要で、新規契約か機種変更時に、これらのパックプランを選択できる。ただし、このほかに「専用基本料」も支払わなければならない。月額利用料は2年契約の場合、980円だ。現行のホワイトプランと同額と思われがちだが、ホワイトプランは税込で980円(8%の消費税に換算すると1008円)、パックプランの専用基本料は税別で980円(8%の消費税適用時は1058円)と、わずかに値上げされている点には注意したい。また、ホワイトプランにあった、ソフトバンク同士の通話が1時から21時まで無料になる特典も用意されていない。S!ベーシックパックの月額利用料も別途発生する。なお、以降の料金はソフトバンクの表記にならい、税別を基本とする。

Mパックを利用した際の料金合計
専用基本料 Mパック S!ベーシックパック 合計
料金 980円 6980円 300円 8260円
※料金はすべて税別

 Sパックには3分50回、MパックとLパックには5分1000回という無料通話が設定されている。ウィルコムで人気の「だれとでも定額」に近い内容だが、こちらは1回10分、月500回なので制限が異なる。無料通話の時間を5分に絞った理由は、ソフトバンクモバイル広報部によると「総発信数の9割以上が、5分以内の通話のため」だという。つまり、一般的な利用の仕方であれば、9割の通話で、追加の料金がかからなくなるというわけだ。

 ただし、3分または5分を超えると、30秒30円という通話料が発生する。現行のホワイトプランが30秒20円、Wホワイト利用時で30秒10円だと考えると、かなり割高な設定だ。仮に5分を超える通話が全体の1割だとしても、その1割で長時間通話してしまうと料金が跳ね上がることになる。例えば、1日に1回、月30回程度電話する人が、Mパックで平均値に近い振る舞いをしたと想定して、9割は5分内で通話を終えたとする。すると、30回の通話のうち、27回は料金がかからないが、残りの3回は有料になってしまう。この3回で話が弾んでしまい、1回30分ほど通話したとしよう。ここでの課金対象は、「25分×3回」で、75分に対しては30秒あたり30円の通話料がかかる。シンプルな掛け算だが、1カ月の通話料を計算すると、超過分は4500円だ。

 仮に現行のWホワイトを利用し、27回の通話はちょうど5分、残り3回を30分、合計で225分通話したとすると、通話料は4500円。ソフトバンク同士の無料分を考慮すれば、さらに安くなる可能性も十分あり、Mパックの優位性はなくなる。なお、合計225分という数値は、やや通話が多いユーザーとなる。ソフトバンクはMOU(1カ月、1契約辺りの通話時間)を公開していないため正確な数値は分からないが、ドコモの2013年度は117分。パックプランをあえて契約するのは通話好きのユーザーと考えれば、ドコモのMOUの2倍にあたる合計225分という設定はそこまで大きく的を外してはいないだろう。

通話料金の比較(その1)
5分の通話 27回 30分の通話 3回 通話料合計
Mパック 0円 4500円(超過分25分3回) 4500円
Wホワイト 2700円 1800円 4500円
※5分の通話を27回、30分の通話を3回した場合の通話料比較。ホワイトプランの無料通話分は考慮していない。※料金はすべて税別

 また、もっと通話が多く、月の発信回数を倍の60回、超過した1割の通話は45分間と考えると、完全にWホワイトの方が安くなる。こちらのケースではMプランの通話料が1万4400円なのに対し、Wホワイトなら1万800円だ。長電話が多く、また長くなればなるほど、Mパックのデメリットが際立つというわけだ。

通話料金の比較(その2)
5分の通話 54回 45分の通話 6回 通話料合計
Mパック 0円 1万4400円(超過分40分6回) 1万4400円
Wホワイト 5400円 5400円 1万800円
※通話が多く、長くなると、Wホワイトの方が安くなる。※料金はすべて税別

 パックにしたという点は新しく、選択肢が増えたことも歓迎したいが、既存のプランより割高になるケースも多く、注意が必要となる。「今のプランはそのまま残す」(ソフトバンクモバイル広報部)というものの、デメリットがあることはきちんと把握しておきたい。逆に、長電話はなるべく少なくして、5分以内の通話の割合を高めていけば、新プランが安くなることもある。例えば、毎月20回電話して、平均に近い割合で2回ほど5分を超過し、10分程度通話した際の料金は以下のとおりだ。

通話料金の比較(その3)
5分の通話 18回 10分の通話 2回 通話料合計
Mパック 0円 600円(超過分5分2回) 600円
Wホワイト 1800円 400円 2200円
※5分を超過する通話が短ければ、既存プランより通話料が安くなる。※料金はすべて税別

 ただし、これもソフトバンク同士の通話無料は考慮しておらず、両者が逆転する可能性はある。いずれにせよ、変数が多く、本当に得なのかが分かりにくいプランといえるだろう。パック制を導入して分かりやすさを出したはずが、これでは本末転倒だ。通話をしやすくするはずのパックプランで、通話が少ない方が安くなるという点にも矛盾を感じる。

 また、毎月必ずかかる料金は、現行の標準的な「ホワイトプラン」「Wホワイト」「パケットし放題フラット for 4G」「S!ベーシックパック」の組み合わせで7367円。新プランの「専用基本料」「Mパック」「S!ベーシックパック」では8260円になるため、トータルでのコストはさらに差がつく。

 これらに加えて、パケット通信量が超過した際には、「通信が止まることはなく、そのまま料金がかかる」(ソフトバンクモバイル広報部)というデメリットがある。現行プランだと、通信量超過時は128Kbpsに速度が制限されるが、新プランではこれがオプション扱いで300円かかる。事実上、この300円も契約は必須といえるだろう。

 VoLTE時代の料金を見据えたというソフトバンクだが、同様にVoLTEの導入を予定している競合他社はこのプランに追随するのだろうか。年内にVoLTEを開始するドコモは「他社のことなので評価はできないが、大変工夫されているという気がした」(加藤氏)としながらも、すぐに対抗する予定はないという。加藤氏は「パックや定額などは、いろいろな選択肢をずっと考えているが、まだ答えは出ていない」といい、新プランの導入も「適切な対応をするタイミングがあればそうしていく」と述べるに留まっている。

 やや慎重な回答をした加藤氏に対し、KDDIの田中氏は「あれ、高いよね」とソフトバンクの新プランを一蹴。追随する意思はまったくないことを表明した。「VoLTE時代を見据えた」と大々的に打ち出したソフトバンクの新プランだが、落とし穴もあり、何らかの改善がなければ、これがきっかけで料金競争が起こる可能性は低そうだ。

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