Firefox OS端末が日本で年度内に発売されないであろう5つの理由

» 2014年06月10日 18時18分 公開
[工藤友資,ITmedia]

 iOS、Androidに続く“第3のOS”としてMozillaが提供している「Firefox OS」が注目を集めている。

 Firefox OSは、Web標準技術のHTML5をベースにしたオープンなモバイルOS。現在は新興国を中心に安価な端末が発売されているが、日本ではKDDIがFirefox OS端末の開発に参画しており、KDDIの田中孝司社長はFirefox OS端末を2014年度内に発売することを明言している(→Firefox OS搭載端末は「来年度に発売」 KDDI田中社長)。

 2014年2月の「Mobile World Congress 2014」では、楽天がコンテンツプロバイダーとして参加すること、またリクルートがMozillaと協働することを発表した(→リクルートとMozilla、「Firefox OS」の普及に向け協働開始――国内開発者支援など)。5月28日には、Mozilla Japanが開発者向けのリファレンス端末「Flame」を、近く日本国内で発売することを発表した(→Firefox OSの開発用端末「Flame」、近く国内販売へ)。

photophoto 25ドルのリファレンス端末。左からZTEの「Open C」とALCATELの「Fire C」(写真=左)。日本での発売を予定しているリファレンス端末「Flame」(写真=右)

 順風満帆に見えるFirefox OSだが、筆者は2014年度内にはFirefox OS端末は発売されないと考える(リファレンス端末を除く)。最初に断っておくと、筆者は開発中であるFirefox OS v2.0のソースコードをほぼ毎晩ビルドして、実機でFirefox OSの動作を確認している。2.0は1.1のころと比べると格段に進歩してはいるが、正直まだ製品版と呼べるものには程遠い。現在、Mozillaとパートナーシップを結んでいる携帯メーカーには、安定版としてv1.3が提供されているが、残念ながら、それでも最新のAndroidやiOSとは比べものにならないくらい機能が貧弱だ。

 Firefox OS端末が2014年度内に発売されないであろう理由を挙げていこう。

1.アプリの不安定さ

 国内キャリアから販売される場合には現在の開発版であるv2.0以降のものが搭載されて販売されると思われるが、現状のv2.0は極めて不安定だ。正規のアプリマーケットからダウンロードしたアプリの約6割はクラッシュする。特にハードウェアと密接な連携が必要なゲームにおいて顕著だ。

 また、ゲームがスマートフォンの売れ行きに貢献していることは読者諸賢におかれてはご存知のことと思う。しかも、国外ではすでにFirefox OS搭載端末の発売が発表されているにもかかわらず、海外の大手スマートフォンゲームベンダーは一切と言っていいほど参入していない。そのような状況で、国内のゲームベンダーが果たして本気で参入してくるだろうか?

photophotophoto Firefox OSのホーム画面

2.ブラウザの遅さ

 次に、設計思想に開発が追い付いていないことが挙げられる。そもそもFirefox OSには、「OSの基礎の部分の上に余計なものを載せないで、そのままブラウザを乗っけてしまえば、高速にWebアプリケーションを走らせられるはずだ」という設計思想がある。

 しかし2011年発売の「Xperia arc SO-01C」にFirefox OSを載せてみたところ(Xperia arcは古い機種だが、Mozillaが想定しているFirefox OSデバイスのスペックとしては高い方だ)、正直Android2.3のブラウザの方が速い。果たしてv2.0完成までにそこまでパフォーマンスを上げられるのだろうか? しかも、ほとんどのFirefox OS用アプリはWebアプリケーションだ。

 iOSとAndroid向けFacebookアプリがリリースされたころ、Facebookはガワだけネイティブアプリの形をとって、中身はHTML5だった。そしてユーザーからさんざん「遅い!」と言われ、ネイティブアプリに切り替えた経緯がある。筆者には、この壁をFirefox OSが乗り越えられるとは、残念ながら思えない。

3.アプリの少なさ

 スマートフォンはアプリをインストールして自分なりに使うものだ。しかし、インストールしたいアプリがないようなスマートフォンを誰が使うだろう? 現状、Firefox OSには「Marketplace」というアプリがあるが、その中のラインアップはひどいものだ。インタフェースもよくない。これではとてもお目当てのアプリを探すどころではない。

photophotophoto マーケットにはアプリが潤沢にそろっているとはいえない状況だ

 この点は開発陣も理解しているようで、最近のビルドから「Stage」と呼ばれる新しいマーケットアプリがバンドルされるようになった。しかしこれもマイナーバージョンアップに過ぎず、使い勝手は決してよくはない。

 そして致命的なのが、Firefox OS向けのアプリ数の少なさだ。いまだ数千アプリしかない。さらに失礼を承知で言うと、その中のほとんどが、まったくもってつまらないものだ。しまいには人気ランキングの上の方にiOSやAndroidで人気の「Fruit Ninja」のパクリアプリが載る始末で、そのアプリを立ち上げると、まともにゲームが遊べるどころか、ただただ退屈な広告を見せられるだけだったりもする。

 さらに言うと、まともな地図アプリさえないのだ! iOS6が発表になったときに、その地図アプリの出来の悪さが大いに話題になった。Firefox OSは、まだその土俵にさえ立っていないOSなのだ。

4.Firefox OS独自の特別な“何か”がない

 iOSには最初からiTunesがあった。Androidは当初よりGoogleのサービス群に容易にアクセスできるメリットがあった。Firefox OSには何があるのだろう? AndroidはオープンソースのOSだ。しかし、MozillaはFirefox OSはそれよりもさらにオープンだと公言している。

 実際、Firefox OSの開発はものすごい速さで進んでいる。メンテナー(開発を取り仕切る役割の人間のこと)がさばき切れないほどのコードが毎日アップロードされている。これはオープン化の恩恵といえるだろう。しかし残念ながら、Firefox OSを取り巻く現状は上記の通りだ。そしてオープン化はいいが、我々一般ユーザーに何のメリットがあるのだろう? いや、むしろそのオープン化があだにもなり得る。

 現在、Firefox OSのマーケットプレースに登録されているアプリは数千だが、最近はマーケットプレースを通さない野良アプリが増えている。AndroidにはGoogle Play経由でないアプリをインストールするにはユーザーの同意が必要だが、今のところFirefox OSにはその仕組みがない。セキュリティ的にも無法地帯というわけだ。“Firefox OSでないとできない何か”がなければ、スマートフォンOS後発の身として、参入は難しいだろう。

5.誰が使うのか?

 そして一番の問題が「誰が使うのか?」という点だ。今までiOSやAndroidデバイスを使ってきた人たちには、購入したアプリなりコンテンツなり、資産があるだろう。そういった人たちが、あえてまっさらなFirefox OSに乗り換えるとは考えにくい。これが、らくらくホンのようにターゲットが明確なデバイスなら状況も違うだろうが、そういうわけでもない。せいぜい考えられることは私のような(苦笑)ガジェットオタクだろう。そんなニッチな商売が成り立つとは到底思えない。

Firefox OSへの期待

 ここまで、Firefox OSについてネガティブなコメントを挙げてしまったが、筆者自身はFirefox OSを応援する立場であることを明言しておく。まず手元で最新版が気軽にビルドできるのがいい。そしてすぐに実機で試せる。さらに国内のコミュニティも熱がこもってきている。

 筆者はいずれハードウェアスペックの向上により、“アプリ”と言われるものは、HTML5とJavascriptで完結すると考えている。そうなった未来に、そのムーブメントの先べんをつけたのはFirefox OSということになる。いや、そうなってほしい。そしてKDDIの田中社長の口ぶりからすると、何かすごい隠し球があるのかもしれない。とにもかくにも、この新しくてオープンなOSがスマートフォン市場で花開くことを願うばかりだ。

著者プロフィール

工藤友資

株式会社タグレイルズ 代表取締役社長兼CEO

1976年11月20日生まれ、東京都出身。プログラマー、会社経営、ライターを兼業。人工知能の開発をライフワークとしている。Webサービス「BlogPet」を企画開発。2004年「BlogPet」にて「Internet magazine」のウェブサービスアワード ブログ関連サービス部門で最優秀賞を受賞。ガジェットオタクにしてマイナーOSマニア。運よくFirefox OSの発者向け端末を手に入れたときから、Firefox OS v2.0をビルドして試すのが日課。また、Firefox OS向けアプリケーション開発も手がける。


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