同質化の戦いから新しい価値の訴求へ――KDDI田中社長に聞く、2014年度の戦略(1/2 ページ)

» 2014年04月04日 10時11分 公開
[田中聡(撮影:市原達也),ITmedia]

 2010年12年に田中孝司氏がKDDIの代表取締役社長に就任してから3年がたち、2014年度の幕が開けた。2011年は「基盤事業の立て直し」と位置づけ、Androidスマートフォンを拡充し、9月にはMNP純増に転じた。10月にauとしては初のiPhoneである「iPhone 4S」を発売した。2012年は「成長起点の年」と位置づけ、3M戦略(マルチユース、マルチネットワーク、マルチデバイス)の第1弾として「スマートパスポート構想」を掲げ、「auスマートパス」や「auスマートバリュー」を発表。9月にはiPhone 5を発売し、「4G LTE」サービスも開始した。

 そして「新たなステージの初年度」と位置づけた2013年には、新たなユーザーを獲得すべく、「auスマートサポート」「auスマートバリューmine」や、タブレットとスマートフォンで通信量を分け合える「データシェア」などのサービスを続々と投入した。

 そうした中で、2014年はどのような戦略で携帯電話事業を展開するのか。端末、ネットワーク、サービスを中心に、田中社長と、広報部 部長の櫻井桂一氏に話を聞いた。

photo KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏

iPhoneの差分はネットワークが一番大きい

―― 2013年度を振り返っての手応えをお聞かせください。2013年度をどのように評価されていますか。

田中氏 秋にドコモさんがiPhoneを出されて、とんでもない戦いが来ると思ったけど、何とかしのぎきったというのが本音。お客さんがどのキャリアを選ぶかは、料金を除けば端末が大きい。日本市場はiPhoneが大きいじゃないですか。でもドコモさんがあまり慣れてらっしゃらないので、うまくいったのかなと。

 LTEのネットワークは、他社さんは違うように言っているので何ともいえませんけど、(auが)ダントツだと自分では思っていて、訴求も確実に効いた。auスマートバリューもうまく働いて、それなりの結果を出せたと思っています。

―― やはりネットワークの効果が大きかったと。

田中氏 LTEのローンチを1年遅らせて800MHz帯に集中してきました。2GHz帯はダメだと言われたけど、2GHz帯も(実人口カバー率が)84%ほどには改善しているので。ネットワークはうまくできたかなと思っています。

―― 2014年3月14日に、800MHz帯の実人口カバー率が99%に達しました(→プラチナバンドを使ったauの「4G LTE」、実人口カバー率が全国99%に)。13年3月時点の96%から3%を上積みするために、面積は1.5倍をカバーしています。

photo 800MHz帯の実人口カバー率が99%となった

田中氏 3%のために、基地局だけでも何千と打ってるんじゃないかな。ここから上はすごいところ。(基地局を)死ぬほど打っても上がらない。

櫻井氏 地方は面積が広いけど、少ない人しかいない。それをカバーするにはたくさんの基地局を打たないといけないので、労力とコストに大きなエネルギーをかけました。「なぜそんな非効率なことを?」と思われるかもしれませんが、ローカルの人たちにとって通信の価値は都会の人たちと違うんです。物を手に入れよう、人を呼ぼう、情報を得ようといったときに、地理的に不利になってしまう。それを埋めるのに通信インフラが有効なんです。エリアを広げることで、通信という基盤を全国の人たちに届けることができたので、社会的な意味が強いですね。

―― ドコモ、au、ソフトバンクでiPhoneが出そろいましたが、あらためて、KDDIのiPhoneの強みはどこにあるのでしょうか。

田中氏 iPhoneの差分はネットワークが一番大きいと思います。2つ目がauスマートバリュー、3つ目がauスマートパスぐらいな順番じゃないですかね。auスマートパスを3つめ目にしているのは、iPhoneのauスマートパス対応が少し遅れたから。あと、iPhoneにはiPhoneワールドがあるので、僕ら自身でいじれるところは少ない。とはいっても、iPhoneユーザーの8割近くはauスマートパスに入られますね。一番効いているのは、故障時に修理代金が2回まで無料になること(→KDDI、iOS向け「auスマートパス」でiPhone/iPad修理代金をサポート)。

―― この春から、ソフトバンクモバイルが900MHz帯でプラス10MHz(計15MHz×2)を使えるようになってLTEも開始します。ドコモは東名阪でも1.5GHz帯でプラス10MHz(計15MHz×2)を使えるようになり、ライバル2社のLTEが強化されます。そんな中で、御社はどのようにネットワークを訴求していくのでしょうか。

田中氏 800MHz帯はベースバンドだと思っていて、限りなくどこでもつながるようにします。2GHz帯も(実人口カバー率が)84%ぐらい行っているので、800MHz帯に重ねる。1.5GHz帯は10MHzで展開しています。あとは「B41」と呼ばれる、UQコミュニケーションズが使っている帯域(2.5GHz帯)を重ねていこうと。2GHz帯も広げていますよ。先日、記者さんに「2GHzもよくなりましたね」と言われました。

Firefox OS、WiMAX 2+、Windows Phoneはどうなる?

―― 春モデルでは「Xperia Z Ultra SOL24」や「G Flex LGL23」などのファブレットを投入されましたが、どう評価されていますか(→KDDI、auの2014年春モデル5機種を発表――世界最薄ファブレット「Xperia Z Ultra」と曲面ディスプレイの「G Flex」など)。

田中氏 マルチデバイスの方向に行くのか、大画面(スマートフォン)がタブレット市場を食ってしまうのかでけっこう悩んだんです。タブレットは「データシェア」でアプローチした。ファブレットはXperia Z UltraやG Flexなどのモデルを出した。どっちかな? と思ってやったんですけど、まだハッキリしない。(auの)タブレットは前年比で倍くらい伸びています。まだまだ少ないけど。大きい端末(ファブレット)もそれなりに、ぐらいかな。大成功というわけではないですが、14年度は両方狙っていこうかと思います。

photo auの春モデル。左から、「Xperia Z Ultra SOL24」「G Flex LGL23」「AQUOS PHONE SERIE mini SHL24」「URBANO L02」「AQUOS PAD SHT22」

―― ここ最近、各社ともスマートフォンの新製品の数を絞りつつありますが、御社の2014年はどうなるのでしょうか。

田中氏 極端に絞ることはないですよ。「少し多いかなー」ぐらいの話じゃないですかね。

―― 「IS01」ような、とがった端末は今後も出るのでしょうか。

田中氏 やりますよ。ひとつはFirefox OS。

―― 2014年度中に出すという話が出ています。

田中氏 そう、今年度に(→Firefox OS搭載端末は「来年度に発売」 KDDI田中社長)。

―― Mobile World Congress 2014では、25ドルの端末も発表されるなど、Firefox OSスマートフォンは低価格路線が目立ちました。ただ、KDDIが出すFirefox OSスマホは、日本のユーザーが満足できる、とがったものにするということですよね。

田中氏 そう。廉価版って、売れないんじゃないの? Web OSの良いところを訴求したい。「あまり売れなくてもいい」と言うと怒られるかもしれないけど、別だと思いながらやりたい。

―― auのFirefox OSスマホには、例えばFeliCaやフルセグなど、日本固有の機能も載ってくるのでしょうか。

田中氏 細かいスペックは覚えてないんで。うそを言いそうなのでやめておきます(笑)。危ないから。

―― HTCのスマートフォンが、ここ1年ほどお休みされていますが、次の夏モデルはいかがでしょう? 新モデルの「HTC One(M8)」も発表されましたが……(→「HTC One」新モデルは5インチで「Duo Camera」搭載)。

田中氏 なかなか言えないけど、(HTCは)経営でいろいろあって……。HTC J Oneを出すときも、製造が相当大変だったんですよ。(ほかのスマートフォンと)少し違うでしょ? アルミだし、色を出すのも大変だった。今は少しお休みした方がいいんじゃないかというフェーズにいますけど、やめたわけじゃない。

―― isaiを出すなど、LGさんとのパートナーシップを強めていますが、HTCからLGに移ったわけではない。

田中氏 そういうわけではない。

―― WiMAX 2+内蔵スマートフォンはいかがでしょう。

田中氏 出す出す。(広報担当者を見ながら)出すって言ったよね? 出す出す。いつ出すまでは言ってないけど(→KDDI田中氏、「スマートフォンでもWiMAX 2+を利用したい」)。

―― やはり夏に出てくるのでしょうか。

田中氏 なかなか鋭いね(笑)。余計なことを言っちゃうので。すいません、わきが甘いので。

―― もう何度も聞かれていると思いますが、Windows Phoneはどうなるのでしょう。Windows Phone 8.1も発表されました。

田中氏 今、どうだっていうのは、なかなかない。僕は大好きなんですけどね。でも相手もございますから。

 (ここで話題は新OSに変わり)マスコミは2極論で書かない方がいいんじゃないかな。(製品を)出す前からたたくから。ドコモさんのTizenも、あんなひどく書かれてかわいそうに……と。1発目から当たるなんてありえないよね? いろいろなことにチャレンジしないとよくならない。「そんなの売れないんじゃないか」というのを、見もしないのに言ったらダメですよ、マスコミさんは。いいところを言わないと。あまりこういう説教してもしゃあないけど(笑)。

―― iidaやINFOBARなど、デザインに振った端末も、最近ご無沙汰しています。このあたりはいかがでしょう。

田中氏 いや、あのー、やめたわけではない。まだ……(しばし沈黙)……うまいですね(笑)。言わないですよ、これ。やめてない(キッパリ)。

―― 分かりました。その言葉がすべてを物語っているということで(笑)。

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