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» 2014年07月08日 15時43分 UPDATE

ようやく始まった台湾の4Gサービス――通信キャリアとメーカーの激しい競争が勃発 (1/2)

アジア各国の中でも4Gの開始が遅れていた台湾。この5月末から3社がLTE方式でサービスを開始した。サービス開始から1ヶ月で早くも料金競争が始まるなど、台湾の携帯電話市場は今、大きな盛り上がりを見せている。

[山根康宏,ITmedia]

 台湾でLTE方式による4Gサービスが始まった。国策によりWiMAXを次世代通信方式の柱としてきた台湾も、2013年末にLTE方式の免許が6社に交付された。他国に後れを取っていた4Gの普及がようやく始まろうとしている。

6社が4G免許を取得、中華電信が一番乗り

photo 台湾でもいよいよ4Gサービスが始まった

 日本や韓国、香港などアジア各国で4Gの普及率が高まる中、台湾では2013年末にようやく4G免許が交付された。通信方式はFDD-LTE、周波数帯域は700MHz(Band28)、900MHz(Band8)、1800MHz(Band3)の3つ。このうち900MHと1800MHz帯の一部は、既存の通信事業者がGSMで利用している周波数のうち、免許切れとなるものをLTEへと転用する。免許はオークションで落札され、既存の大手4事業者である「中華電信(Chunghwa Telecom)」「遠傳電信(Far EasTone Telecommunications)」「台湾大哥大(Taiwan Mobile)」「亜太電信(APTG)」に加え、新規参入の「國碁電子(Ambit Microsystems)」と「台湾之星移動電信(Taiwan Star Cellular)」の6社に免許が交付された。

photo 各通信事業者の獲得LTE周波数と帯域一覧

 各社は2014年後半からの4Gサービスインに向け2014年春から準備を行っていた。各社の店舗では4Gの体験コーナーを設置し、試験電波を使った高速通信速度のデモなどを展示。4G免許を取得した6社のうち、既存の大手3事業者である中華電信、遠傳電信、台湾大哥大の各社は7月中にLTEを始めるとみられていた。

photophoto 各社は5月上旬から店舗内に4G体験コーナーを設置(写真=左)。サービス開始前から4Gの予約を受け付ける事業者も(写真=右)

 ところが、台湾の携帯電話加入者でシェアトップの中華電信が、2014年5月30日に突如4Gサービスを開始。端末は春先からLTEスマートフォンを複数機種販売していたとはいえ、4G開始は事前の発表もなく、開始当日は料金表やカタログの印刷も間に合わず、店頭での料金説明のみという慌ただしいサービスインとなった。

 台湾では祝日に旧暦を採用している。2014年は6月2日が端午節(旧暦5月5日)であり、5月30日から6月2日までは土日を挟んで3連休となる。中華電信は人の出が多くなるこの連休に合わせ、他社を出し抜いてサービスインした格好だ。また、6月2日からは国際展示会でもあるComputex Taipeiの開催も控えており、台湾最初の4G開始事業者という点を国内外にアピールする考えもあったようだ。

photophoto 3社の中で最も早く4Gを開始した中華電信(写真=左)。サービス初日は4Gの料金表もなし。iPhoneはこの時点では同社のLTEは利用できないが、フライングのパンフレットが置かれていた(写真=右)

 中華電信はFDD-LTEの900MHzと1800MHzの2つの周波数を獲得しているが、まずは1800MHz帯のみでサービスを開始した。1800MHz帯はアジアからヨーロッパまで広く利用されていることもあり、各端末メーカーのスマートフォンの多くが対応している。そのため、中華電信は4Gサービス開始時点から10機種以上のLTEスマートフォンを用意し、新サービスや新製品に目がない顧客に「ハイエンドLTEスマートフォン+4Gプラン」を積極的にアピールしている。

 料金プランは236台湾ドル/月(約800円)から2636台湾ドル/月(約8940円)まで9種類。各プランで利用できる無料通話分とデータ通信分は料金ごとに異なるが、最上位プランでもデータ定額は廃止され、それぞれ200Mバイトから16Gバイトまでとなっている。ただし上限に達した際は、通信速度制限でそのまま利用できるほか、追加料金を払うことでLTEの速度をそのまま使うことも可能だ。超過時の料金は250台湾ドル/1Gバイト(約850円)となっている。一方で3G時代にあったデータ定額は廃止されている。

photophoto 豊富な4Gスマートフォンラインアップが強みだ(写真=左)。4Gタブレットも販売。中華電信の店舗店内は4G一色に染まる(写真=右)

 また、自分の住んでいるエリアが4Gのカバーエリアかどうかを確認したいユーザーには、7日間の無料体験SIMも提供している。これは中華電信の店舗で契約をして入手できるもので、最短5分で無料体験SIMが発行されるという。無料体験SIMではデータ利用が無制限(16Gバイトまで4G速度、以降速度制限)で、音声通話は利用できない。7日で自動失効するので解約も不要で、SIMの返却も不要となっている。なお、身分証明書1つあたり1回しか申請できない。連休中はこの無料SIMの申し込みも多く、中華電信の各店舗には多くの来客が訪れたという。

遠傳電信、台湾大哥大が追従、1週間で3社が出そろう

 中華電信の「抜け駆け」に他社も慌てて追従した。遠傳電信は6月3日、台湾大哥大は6月4日と大手2社が相次いで4Gのサービスを開始したのだ。これには台湾のユーザーからも大きな驚きの声が聞かれた。特に中華電信以外のユーザーからは、素早いサービスインに対して歓迎の声も高かった。すでに各社の店舗ではLTEスマートフォンを体験できるのにサービス開始時期がなかなかアナウンスされず、高速な4Gを利用したいユーザーはその開始を今か今かと待ちわびていたのだ。

 そんな中、わずか1週間で3社の4Gが出そろい、各社はサービスイン直後のキャンペーンを開始した。早くも激しい競争が勃発している。

 例えば、遠傳電信は199台湾ドル/月(約670円)という、3社の中で最安の料金プランを用意。また、基本料金に含まれる無料データ分も他社の倍とし、お得感を出している。これに対し、中華電信と台湾大哥大はLTEスマートフォンの同時購入などで無料データ分を倍にするキャンペーンを始め、遠傳電信とほぼ同料金で同量の無料データを利用可能にした。また、遠傳電信と台湾大哥大は高額プランで自社ユーザー間の通話料金を無料にした。6月にはこの2社が期間限定ながら「データ定額」を復活させるなど、各社が次々に対抗策を打ち出している。中華電信の好評な「7日間無料お試し」も遠傳電信が追従している。

photophoto 中華電信を追いかけて4Gを開始した遠傳電信(写真=左)。700MHzと1800MHzの2帯域をアピール(写真=右)
photophoto さらに翌日には台湾大哥大も追従。大手3社の4Gが出そろった(写真=左)。各店舗には4Gのキャンペーンガールを配置し高速通信をデモしている(写真=右)

 早くも料金の割引競争が始まった台湾の4G市場だが、遠傳電信と台湾大哥大の2社には、中華電信にはない大きな弱点がある。両者は700MHz帯と1800MHz帯の2つの帯域の周波数を持っているが、4Gサービスは700MHz帯のみからの開始となっているのだ。世界各国で700MHzの帯域はLTEに利用されているものの、台湾の700MHz帯はBand28で通称「APT700」とも呼ばれる上り703〜748MHz帯、下り758〜803MHz帯を利用する。このBand28は現時点ではオーストラリアなど一部の国のみでしか採用されておらず、対応するスマートフォンの種類がまだ少ない。

 Band28は日本でも利用される予定であり、いずれ対応端末も多数出てくるだろう。そして2社の1800MHz帯(Band3)での4Gサービスも2014年内には開始される予定だ。だが、中華電信の4Gが好調なスタートダッシュを切っている中、サービス開始時に端末種類で差をつけられているのは痛いところ。台湾で人気のiPhone 5/5sも中華電信では6月から利用可能になったのに対し、これら2社のiPhoneの利用は1800MHz帯の開始を待たねばならない。

 一方で、遠傳電信と台湾大哥大の2社は自社ブランドのLTEスマートフォンをサービス開始時から積極的に投入している。両者はOEM供給による自社ブランドスマートフォンをそれぞれ「FarEastone Smart」「Taiwan Mobile Amazing」のブランドで販売しているが、4G開始に合わせ700MHzに対応した製品の販売をいち早く始めているのだ。価格は大手メーカーの同スペック品よりも安く、単体価格で5000台湾ドル(約1万6950円)を切る低価格品も提供される。両者の自社ブランドスマートフォンは3Gのライトユーザーの4Gへの移行を促すだけではなく、中華電信の3G客を自社の4Gへと奪う戦略的な位置づけの製品にもなりそうだ。

photophoto Band28対応のスマートフォンが少ないのが2社の弱み(写真=左)。自社ブランドの4Gスマートフォンを積極的に投入している(写真=右)
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