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» 2014年09月12日 22時48分 UPDATE

2017年にはスマホに搭載:より低消費電力で、色の再現性も向上――シャープが「MEMS-IGZOディスプレイ」を説明

スマートフォンで特に電力を消費する部分は「ディスプレイ」だろう。シャープが開発している「MEMS-IGZOディスプレイ」は、さらなる低消費電力に貢献する。従来のディスプレイとは何が違うのか? 商用化のめどは?

[田中聡,ITmedia]

 シャープが9月12日、「MEMS-IGZOディスプレイ」の技術説明会を開催し、その特徴や商品化へのロードマップなどを説明した。

photo シャープのディスプレイ事業の取り組みを説明する方志氏

 MEMSとは「Micro Electro Mechanical Systems」の略称で、「微小電子機械システム」のことを示す。MEMSディスプレイには微細な加工技術を活用しており、優れた色再現性と低消費電力を特徴としている。シャープは、このMEMSディスプレイにシャープの「IGZO」を組み合わせた新しいディスプレイの開発を、2012年からQualcommの子会社であるPixtronix(ピクストロニクス)と進めてきた。Pixtronixは、後述するMEMSシャッターの基礎技術を開発している会社だ。

 シャープ 代表取締役 専務執行役員 デバイスビジネスグループ担当の方志教和氏は、「スマートフォンを中心に、大変なスピードで高精細化や狭額縁化が進んでいるが、(高精細化は)そろそろ人間の目の限界まで来ている。(スマートフォンやタブレットは)多機能化が進んでいるので、低消費電力も重要。一方で車載や医療、災害時などさまざまな分野に(ディスプレイの)用途が広がっており、新しい競争軸が生まれている」と市場動向を説明する。

photophoto ディスプレイにおける、現在と未来の競争軸(写真=左)。フリーフォームディスプレイとMEMS-IGZOディスプレイ(写真=右)
photo MEMS-IGZOディスプレイの特徴を説明するシャープの伴氏

 そんな中で、シャープが新しい競争軸として重視するのが「デザイン性能」「耐環境性能」「ユーザーインタフェース革新」の3点だ。

 デザイン性能では、デザインの自由度を上げていく。ディスプレイといえば、四角い形状がほとんどだが、同社が6月18日に発表した「FDD(フリーフォームディスプレイ)」は、文字どおり自由な形状を実現している。耐環境性能では、屋外や低温度下などでも表示性能を維持する。ユーザーインタフェースの革新においては「単なる情報の表示だけでなく、インタラクティブに情報をやり取りできる」(方志氏)ことを目指すという。

 今回説明したMEMS-IGZOディスプレイは、上記3つの中では耐環境性能に優れていることが特徴だ。その詳細をディスプレイ開発本部 副本部長 兼 デバイス技術開発センター 所長の伴厚志氏が説明した。

 MEMS-IGZOディスプレイは、TFT基板、MEMSシャッター、スリット、スリット基板、RGBバックライトという「シンプルな構成」(伴氏)で活用できる。現行の液晶は、バックライトがカラーフィルターや偏光板を通るので光のロスが多いが、MEMSでは、マイクロシャッターを使ってRGB(赤緑青)のLEDバックライトを1/10000秒と高速で開閉させる仕組みを採用しており、光の利用効率が高い。もちろんマイクロシャッターが開閉していることは肉眼では見えない。

photophoto MEMS-IGZOディスプレイの構造と動作原理
photo RGBのバックライトが超高速で切り替わる

 この仕組みにより、MEMSは4つのメリットを生み出す。1つ目は低消費電力。「MEMSは約2倍の透過性能を有している」(伴氏)ので、同じ輝度なら現行のIGZO液晶よりも消費電力を半分に抑えることができる。

 2つ目は色の再現性に優れていること。MEMSはバックライトのRGBをそのまま取り出せるので、NTSC比で120%という高色純度、高色再現性を実現する。

 3つ目は、表示コンテンツに応じて消費電力を最適化できること。伴氏はこれを「一番の特徴」と話す。例えば、鮮やかな写真や動画を表示するときは、MEMSシャッターの駆動速度が速いので消費電力も比較的増すが、表示色数が少なくなるほどシャッターの駆動速度が落ち、消費電力を抑える。加えて、白黒中心のテキスト系コンテンツを表示する際は、バックライトに白のみを使い、シャッターの駆動速度もさらに落ちるので、超低消費電力で済む。その際、輝度は「2000カンデラまで上がる」(シャープ)という。

 4つ目は先述した耐環境性能が優れていること。外光下でも画面が見やすく、高温下でも表示性能が落ちず、マイナス数十度の極低温下でも動作応答性を維持できるという。

photophoto MEMS-IGZOディスプレイはカラーフィルターや偏光板を使わないため、バックライトを高効率で利用できる(写真=左)。カラーフィルターを介さないので、色の再現性も高い(写真=右)
photophoto 表示コンテンツに応じてMEMSシャッターを制御できるのも利点だ(写真=左)。厳しい環境下にも絶える性能を持っている(写真=右)

 いいことずくめのMEMS-IGZOディスプレイだが、実際に商用化されるのはいつなのか。シャープは2014年度にタブレットや車載向けのサンプル出荷を始める。その後、さらに高精細化や高視認性化などを図り、2016年からスマートフォンやタブレットに向けたサンプル出荷、2017年に量産を開始する。MEMS-IGZOディスプレイを備えたスマートフォンやタブレットを一般ユーザーが手にできるのは、2017年以降となりそうだ。

 シャープが参考出展していた、MEMS-IGZOディスプレイを搭載した7型タブレットの画面解像度は1280×800ピクセル(ワイドXGA)だったが、シャープはさらなる高精細化に向けた取り組みを進めていく。

photophoto 今度のロードマップ。スマホやタブレットに搭載されるのは2017年以降になる予定(写真=左)。IGZOを核として、シャープはさまざまな分野にディスプレイを送り出していく(写真=右)
photo 左が従来の液晶、右がMEMS-IGZOディスプレイを搭載した1280×800ピクセルの7型タブレット。光が当たる環境でも鮮明に表示できていることが分かる
photophotophoto 左から、鮮やか、標準、グレースケール。グレースケールはバックライトに白だけを使うので、最も消費電力が少ない
photo Qualcommのグレッグ・ハインジンガー氏

 説明会では、Qualcommの上級副社長 兼 Pixtronix社長のグレッグ・ハインジンガー氏も登壇。「世界初となるMEMS-IGZOディスプレイの開発に取り組めるのは、両者(Qualcommとシャープ)が長年にわたって築いてきたオープンなコミュニケーション、相互にわたる尊重の関係があったからだと思っている。Qualcommはオープンにデータやプロジェクトの目的を共有しながら、両者が1つのチームとして共同作業に当たっている。ここまでの関係ができるのは稀なこと。協業の関係を非常に誇りに思っている」と、新技術が形になる喜びを語った。

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