ドコモ光パックへの対抗は? スマホのOSはどうなる?――田中社長に聞く 2015年のKDDI(2/2 ページ)

» 2015年02月06日 21時40分 公開
[石野純也,ITmedia]
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SIMロックを解除しても、マジョリティはあまり変わらない

―― 端末の話の流れでうかがいます。2015年はSIMロックの解除が義務化されます。こちらについては、どうお考えでしょうか。

田中氏 マジョリティはあんまり変わんないんじゃなかなと思ってます。それにペインポイントがあんまりないですからね。もっと言うと、別にSIMロックでもいいから、もっとサポートしてほしい、もっと料金を下げてほしいという人もいます。あんまり急激にやりすぎると、日本の本当にいいビジネスモデルがなくなるのが怖いというのが本音。お客さんが求めているのは日本並みのサポートですから。もちろん、そうじゃない人もいるので、選択肢が増えるのはいいことだと思っています。

―― 端末のロックが外れても2年縛りは残っています。キャリアの人は、SIMロックを過大評価しているのではという気がします。

田中氏 そうだとは思っていますよ。だけど、作ってきたビジネスフローもある。それをすべてレビューしなければいけないですからね。

―― 御社の場合、CDMA以外は技適を取っていない端末も多く、解除してもあまり意味がないのではないという意見もあります。

田中氏 そこは今、議論されていることで、割とちゃんとやっていこうとは思ってます。いろんなことがきちんと整備されないとダメという考えです。

auスマートバリューで「モバイル回線を1人1410円割引」にした理由

―― 冒頭のお話に戻りますが、ドコモがドコモ光でセット割を打ち出してきました。ここについて、改めてお考えをお聞かせください。また、どのように対抗してくのでしょうか。

田中氏 ドコモさんは、基本的な考え方が、回線を引いて、家族でシェアするというものですね。決算会見の場でも少し申し上げましたが、結局お客さんはスマホを買いたいんです。そのスマホを安くしないといけないのでバンドルを考え、できたのが「auスマートバリュー」です。

 もともと、「auひかり」は厳しかった。量販店ではNTT東西さんが冷蔵庫を10万円引きというようなキャッシュバックをやっていましたが、僕らは量が少ないのでそこにはついていけない。じゃあ自分たちの強みは何かということで、モバイルとのバンドルプランにしました。バンドルプランは料金理論の中ではあまり成功例がなくて、あくまで一番手ではなく、二番手、三番手の戦略です。料金を下げれば当然収入が減りますし、その分ユーザーが増えないとただの値下げになってしまいます。ポジションを考えて、初めて成り立つビジネスモデルなんです。

 もちろん、うちも2人目は1200円にしようということは考えましたよ(auスマートバリューは、家族でも1人ずつ、月最大1410円が割り引かれる)。考えましたけど、実際に買う人が私は2人目なのか、3人目なのかを気にするのは、やはり不公平です。いろいろなことを考え、料金を決めてブランドネームを決めて、「新しい自由」に変えていこうと始めたものです。お客さんのインサイト、これにマッチしているんですね。auひかりは少ないので、ケーブルテレビさんやケイ・オプティコムさんなど、資本関係のないところも一緒にやろうとなりました。彼らにとっては、NTTのシェアが高い中で、守りにもなりますし、攻めにもなりますから。それにトップアップして、auスマートパスをセットしたのが、僕たちの戦略です。

 もう1つ(料金プランで)悩んだのが、ギフト型とシェア型の2つです。日本人はどっちだろうと考えましたが、家族の絆が強いようで、意外とみんな自由。これは家族ではなく、1人1人にした方がいいとなりました。ドコモさんは、家族でシェアする形で、当然囲い込みは彼らの戦略です。それに対して、我々も攻めていかなければいけない。どちらにするかなら、お客さんの考えに寄ろうと考えました。もちろん、マーケットが違っていれば、微調整もしなければいけないし、そこにステイしていたら色あせてしまうんですけどね。

―― ギフトとシェアのお話が出たところでうかがいたいのですが、シェアプランはいつ始まるのでしょうか。ずっとキャンペーンが続いていますが……。

田中氏 シェア、大変なのよ(笑)。ちょっと遅れてます。

―― ちょっとじゃないような気もしますが、何か別のプランを考えているのでしょうか。

田中氏 ちょっと都合により……すいません。個人の中ではシェア、家族間はギフトという考えは変わっていません。

ミャンマーはもうかる事業?

―― 最後に、海外戦略についてうかがえればと思います。ミャンマーのMPTを共同で運営していますが、こちらについての手応えや課題をお聞かせください。

田中氏 ちょうどこの前行ってきたところですが、本当に急速に携帯の浸透が進んでいて、2社がいて競争もしている市場です。ディマンドが大きく、サプライを急いで拡張していかなければならない。そんな状況です。ネットワークは相当前倒してやる計画で、マーケティングも前倒しています。先方は音声通話が1分25チャット(約2.9円)で、MPTは50チャット(約5.7円)だったのですが、ここも35チャット(約4円)に下げました。ただ、料金はもう少し考えなければいけない。やることはいっぱいあります。

―― ドコモがインド事業に失敗した理由として、価格競争が激化しすぎて収益が上がらなかったことを挙げています。同じような心配はミャンマーにはないのでしょうか。率直に言って、これはもうかる事業なのでしょうか。

田中氏 こういうことでは、(Firefox OSと違って)もうからないことはやらない(笑)。長年に渡ってオペレーションするので、投資が先に来てお金が先に出ることはあります。ただ、インドほどは安くなっていないので、ARPUもそれなりにあります。プリペイドで、いわゆるサブシディ(定期契約)を入れて回収するモデルではないですけどね。

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取材を終えて:ドコモやソフトバンクの囲い込みにどう対抗する?

 よりユーザー層を明確にした端末を出しながら、Firefox OSのような次への種まきをしていく。これが2015年のKDDIの端末戦略で、料金までパッケージにしている点からも本気度がうかがえる。その料金については、auスマートバリューで他社に先行している。他社の反撃がいまいち精彩を欠く理由も明快で、特にドコモは単純な値引き額ではKDDIに追随しにくい。KDDIは2番手としての戦略を、堅実になぞってきたというわけだ。

 一方で、額はともかく、ドコモやソフトバンクにセット割が入ったことで、ユーザーを奪いづらくなった側面はある。ここに対してどのような施策を打ち出すのかは、注目したい。また、KDDI系MVNOはまだこれからの段階。MVNOが増える中で、UQ mobileがどこまで存在感を示せるのかも今後の取り組み次第といえるだろう。

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