「使いやすさとデザインを重視」 日本参入を目指すSmartisanは文科系ユーザーを狙う山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)

» 2016年03月28日 17時08分 公開
[山根康宏ITmedia]

 中国から次々と生まれるスマートフォン新興メーカー。その中にあって、北京に本社を置く「Smartisan」(錘子科技)は、CEOが“元英語教師”という異色の会社だ。2015年8月には日本市場への参入を表明、現在は参入の準備中とのこと。

 各新興メーカーが機能やコストを売りにする中、Smartisanの製品はそれに加えデザインや使い勝手を強化するなど独自の路線を走っている。Smartisanの日本進出はいつになるのか、その製品魅力はどこにあるのか。同社CEOのルオ・ヨンハオ(羅永浩)氏に話を聞いた。

美しさと使いやすさを第一に考えたSmartisanのスマートフォン

――(聞き手:山根康宏) 中国の新興スマートフォンメーカーの多くの創業者がIT関連企業の出身者という中にあって、Smartisanは異業種からの参入です。なぜスマートフォンの開発を始めたのでしょうか?

ルオ・ヨンハオCEO(以下、ルオCEO) 私自身は長らく英語教師も務め、その後は教育関連企業を経営していました。しかし40歳に近づいたとき、教育業界にこのまま身を置くよりも、自分の好きなことをやってみたいと考えたのです。

 その際、出資者が「長く続く企業をやるべきだ」とアドバイスしてくれました。私は小さいころから大工にあこがれていましたし、またPC時代からAppleの製品を使っていました。そこで思い浮かんだのがスウェーデンのIKEA、米国のAppleです。この2つの企業の業界が自分の進む道だろうと考えたのですが、当時の私の知識や能力から考え、IT系の会社を起業しようと結論を出したのです。

Smatisanのルオ・ヨンハオ(羅永浩)CEO Smatisanのルオ・ヨンハオ(羅永浩)CEO

 個人的にもソフトウェアのUX(User Experience)やHCI(Human Computer Interaction)に興味があり、その研究を7〜8年続けていました。またインダストリアルデザインも同じくらい勉強をしていたのです。この知識を基にIT製品を作れば、使いやすいだけではなく美しいデバイスが作れるだろうという自信もありました。それに加え、教育系の会社をやっていた時にマーケティングやPRのノウハウも身についていました。そこでスマートフォン市場へ参入することを決めたのです。

―― とはいえ、ゼロからスマートフォン業界へ参入するのは簡単ではありません。

ルオCEO スマートフォンメーカーを創業すると決める半年前から、さまざまな出資相手に話をしましたが、誰からも「それはやめたほうがいい」というアドバイスを受けました。

 また投資家たちからも同じ警告を受けました。なぜならスマートフォンメーカーの運営は複雑で、サプライチェーンが長すぎること、さらに私自身にIT関連の人脈などが全くなかったことからです。技術系、IT系出身でなくてはスマートフォンメーカーを創業し成功する可能性はゼロ、と誰もが考えたのは当然の判断でしょう。

 それでも自分の好きなことをやるべく半年間がんばってみたのですが、ある出資者からWebサービス運営の計画の話を受けたのでひとまずそちらを立ち上げようと考えました。このサービスを成功させ、それを売却してスマートフォンメーカー起業の資金にしようと考えたのです。

 ところがとあるWebサービスのCEOに会い、自分がWebサービスを立ち上げる理由を話したところ、スマートフォンメーカー起業の話に興味を持ってくれ、資金集めを助けてくれる話が進みました。その結果、Webサービスを立ち上げる必要性はなくなり、無事にSmartisanを立ち上げることができたのです。

―― Smartisanの製品には独特のデザインセンスが感じられます。

ルオCEO 私たちの製品デザインは3者が一緒になって生み出しています。そのうちの1つは米国のデザイン会社Ammunitionです。同社のロバート・ブルーナという、元アップルのデザイナーを通じ、同社のシュウ・ズアン(Xu Xuan)という中国人が基本デザインを設計しました。そして弊社のID部門副総裁のリ・ジェンイー(Li JianYe)と、私の3者がコミュニケーションを密に取り初代モデル「T1」のデザインを考えていきました。その後はXu氏を弊社に引き抜き、Smartisan製品のデザインを担当してもらっています。なお私自身はデザインのことはあまり詳しくありません。しかし何がいいデザインか、といった本質を知っていると自負しています。

―― 中国には今、スマートフォンメーカーがたくさんあります。Smartisanのスマートフォンが他社の製品と違う点はどこにあるのでしょうか?

ルオCEO 私たちの製品が他社のものと決定的に違う部分は、ソフトウェアのUXとインダストリアルデザインです。多くのメーカーもこの2つをスローガンに掲げていますが、ただ訴えかけているだけのメーカーも少なくありません。しかし私たちはこの2つを製品開発のフィロソフィーにしているのです。

Smartisan「T2」を手に自社製品の特徴を語るルオCEO Smartisan「T2」を手に自社製品の特徴を語るルオCEO

―― 競合他社も多く競争は厳しいと思います

ルオCEO 今、スマートフォン業界は中国でも世界でも密度の濃い「レッドオーシャン」といわれています。この過酷なレッドオーシャンに後から飛び込む理由を出資者からよく問われます。しかし私は今のスマートフォン市場を以下のように考えています。

 世界のスマートフォン市場で成功している企業の筆頭はAppleとSamsungです。この2社は成功しすぎた結果、現在は利用者も増えターゲットユーザーがぼやけてきているように感じます。しかしこの2社が成功したのは初期ターゲットを明確にしたからでしょう。

 Appleの初期のターゲットユーザーは文科系の人、Samsungは理数系の人、と2社は異なる方向を向いていたと私は考えます。文科系のユーザー層とはデザイナーやメディア、写真家、ミュージシャンなど、感性的な人たちです。この層は生活の質を追求し、センスのいいものを求めます。一方理数系ユーザーはエンジニア、ビジネスエリートなどで、この層の人たちはなによりも理性的な人たちです。このユーザー層の差がAppleとSamsungの製品の差に表れていると思います。

 では他のメーカーはどうなのかと考えると、デザインのいい製品を出しているメーカーもありますが、その多くはSamsungと同じ道を目指していると思われます。例えば今、Huaweiが急成長していますが、統計を見るとユーザーの多くはSamsungからの乗り換えで、Appleからの移行はほとんどないそうです。

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