4月14日、NTTドコモが「新料金プランのさらなる拡充」記者会見を行った。終了後、阿佐美弘恭経営企画部長が囲みに応じた。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年4月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。
―― このタイミングで発表したのには理由があるのか。
阿佐美部長 「なるはやでという取り組みをしてきた結果、整備できた。今月末には決算発表もあるが、あまりそこまで遅らせる必要がないので発表させていただいた」
(★ 一部新聞が「4月末の決算会見時に料金の発表をする」と書いていたものだから、きっと前倒したのだろう。また決算会見となると大型連休前にもなるので、情報が広がらないという懸念もあったのかも。それにしてもシャープ「RoBoHoN」会見にぶつけなくてもいいのに)
―― フリーコースを選んだ人に向けて、キャンペーン的に「ずっとドコモ割コース」に戻るような施策を展開することはあるのか。
阿佐美部長 「どうしましょうかねぇ。やはり、フリーコースを選ばれるには、それなりの動機があるのだと思う。ちょっと様子を見てからかなと。フリーコースを選ばれた方がどういった動きをされるのか。今回は、ユーザーからのご要望に応える形で2700円を設けているので、戻っていただけるタイミングがあるのか、解約金がないから解約していくのか、様子を見たい。我々、ドコモの本領が発揮されるところかと思う」
(★ フリーコースからずっとドコモ割への移行に5000ポイントとかやってきそうだけど)
―― 5日の行政指導で、今後、端末の割引がしにくくなる。そういう点においても、更新ありがとうポイントは端末を安く買うために使ってもらいたいものなのか。
阿佐美部長 「それは当然あります。ポイントは去年から見直しをかけており、ほかでも使えるようになっている。昔と比べてdポイントの付加価値が上がっている。お客さんの使い方のひとつとして端末購入に使っていただけるのはハッピーなんだと思う」
(★ 更新時の3000ポイントにユーザーがどうなびくか見物といえる)
―― 行政指導に対して、すみやかに応えるとあるが、いつごろになるのか。
阿佐美部長 「速やかに応えるため検討している。具体的な時期はまだ言えない」
(★ すぐに対応できそうな気もするけど)
―― 行政指導があってから、端末割引はいまだに続いているのか。
阿佐美部長 「現状はそのままです。社内としては毎日、議論は続け、対策を考えている。いずれしっかり発表したい」
(★ これこそ、決算会見の時なのかな)
―― 発表にあわせて是正するのか。
阿佐美部長 「はい、そうですね」
―― フリーコースに変えると月々サポートがなくなるといったトラップはないのか。:阿佐美部長 「トラップ(苦笑)。いやそういうものは今回、ないと自信を持って作っている。端末のビジネスと完全に切り離して、ネットワークの料金面での拡充だと思っていただいて結構です」
(★ 割引がなくなるフリーコースを選ぶ人は実際、どれくらいいるのだろうか)
―― dカードにも更新サイクルがあるが、航空系カードのような優良顧客優遇策の考えはあるか。
阿佐美部長 「今日ご説明したものとは別に、月々のお支払いに対するポイントを優遇している。10年以上、15年以上、dカードを申し込まれた方にはかなり優遇をしている。それと合わせてご理解していただけば、かなりこれはお客様にとってお得なものといえる。今日はネットワークの料金の話だけだが、実際はすでにそういった取り組みをしている」
(★ カードと組み合わせるより、20年以上のユーザーをもっと優遇してもいいと思う)
―― ドコモ光、特に更新ユーザーとの連携は考えられないのか。
阿佐美部長 「いろんな可能性が出てきているので、参考にさせていただければ」
―― 他キャリアのように数百円高いという、2年後に縛らないプランを検討したりしたのか。
阿佐美部長 「それは当然、案のなかにはありますけど。ただ2年お使いユーザーがどうハッピーになるか考えると、やはり選べる自由という意味では値段が上がればハードルは高くなるので、我々としては、そこで止めるより、ずっとドコモにいていただきたいということで、ご要望通り、2700円でそのまま解約できるコースを今回作った。
よりこちら側へ居ていただきたいし、そのために深めているところもある。値上げという案もあったが、ちょっと我々のポリシーでは今回、選ぶことはなかった」
(★ 「選べる自由」という言葉はKDDI・田中孝司社長が発表会で連呼する常套句。あえて先行する2社と横並びになることなく、総務省からの要請を契機に独自色を出してきたNTTドコモが、他社のお株を奪った感がある)
―― フリーコースはどこまで大々的に告知していくのか。
阿佐美部長 「当然、ご要望に応えるものなので、それなりにしっかりとお客様にはお伝えしていく。
我々としてはずっとドコモ割コースがメインで、そこにいていただくことがメイン。あえて『フリーコースを選んでください』という方向はないのかなと。
とはいえ、お客様によってメリットの感じ方は違う。縛られたくないということで選ばれる方もいれば、先に解約を見越して(フリーコースを)選ばれる方もいるし、(ずっとドコモ割コースに)戻ってこられる方もいる。
そういう意味では、お客さんが自由に使えるコースでいいのかなと思う」
(★ そのうち、フリーコースは消滅していきそうな雰囲気も)
―― ドコモを契約して間もないユーザーからすると、割引などのメリットが少ないため、フリーコースのほうを選びがちになるのではないか。
阿佐美部長 「入ったばかりは、はじめの2年間なので、選ぶ必要はない。2年が満了する直前に選んでいただければいい。ドコモと契約するときはそういった迷いはなく、2年間使える」
―― 割引が適用されるのは4年目からではないのか。
阿佐美部長 「はじめの2年の後にずっとドコモ割コースに入っていただくと、ポイントは出る。
更新ありがとうポイントの3000ポイントが3年目に入った段階で出る。フリーコースを選ぶか、ずっとドコモ割コースで、初めての更新ありがとうポイントをもらうかどうかお客さんが選んでいただければいい」
(★ 更新時の3000ポイントがこの改定のポイントかと)
―― 更新時期には、フリーコースとずっとドコモ割コースを並列して紹介するのか。フリーコースを選びにくいようにしたりしないのか。
担当者 「具体的にサイトの構築はこれからだが、2つのコースがございますというのはしっかりやっていこうかと」
阿佐美部長 「恣意的に誘導することはしたくない。正直に2つあります、というのはアピールしていこうと思う」
(★ フリーコースの方が明らかに記載が小さいとかはなさそうで)
―― 選択自体はオンラインでできるのか。
阿佐美部長 「はい」
―― MVNOが「dマーケット」のコンテンツを扱うことになったが、その経緯はどういったものがあったのか。
阿佐美部長 「いろいろお話しさせていただくと、MVNOさんが自社の特徴として、格安というものを選ばれると、取り組みにくいところが出てくる。そこで、我々のサービスを持ってお客様に推奨すると、ブランドイメージを高めることができる。すでに数社、ご相談いただいているところを含めて、声をかけていただいている」
(★ 格安目当てのMVNOユーザーがどれくらいコンテンツに払ってくれるものなのだろうか)
―― 5月には禁止行為規制がなくなると思うが、阿佐美さんとしてはどういったことを仕掛けるのか。
阿佐美氏 「いや、仕掛けるというか。いろいろと法律の改正があるので、改正に向けた準備をしっかり進めている。ここも真摯に取り組んでいる」
(★ このあたり、5月以降に注目しておいた方が良いかもしれない)
―― 実質数百円はダメで実質1万円ならいいというのに合理性は感じるか。
阿佐美部長
「たぶん合理性というのではなく、事業者がどれだけ努力しているのか、という考え方だと思う。
OKを出しているという意識はなくて、どちらかというと努力不足の事業者が後ろからハッパをかけられている。当然、我々もハッパをかけられている事業者なので努力しなくちゃといけない。ゴールをめがけて走っているわけではないのかなと思う」
(★ 努力して実質0円を維持してくれた方がいい気もするが)
―― 現場で実質0円になって、それが代理店の判断だった、となると見えにくい。5月ぐらいになると責任も出てくるが。
阿佐美部長 「電気通信事業法の改正で、事業者が代理店への指導を徹底しなさいというのもあるので、価格を誰が決めているのか、という側面もありますけど、我々はしっかりと代理店込みでうまくやっていきたいと思っています」
(★ キャリアも代理店も厳しい立場に置かれるな)
―― 端末割引に関する現在の動きと昨年のタスクフォースの議論に乖離を感じたりしないのか。
阿佐美部長 「弊社も、ご説明していただいたなかで、急激な変化はお客さまに混乱をもたらすので、これはステップでやっていきたいというのは申し上げている。
そういう意味で時間をかけながらという認識でいる。しかし、それはデジタル的に時速何キロなのか、という話ではない。今回、我々はおしりを叩かれたということはもう少し努力しろ、という理解だと思っている」
(★ 時間をかけながらかと思いきや、総務省は急いでいる感があるな)
■取材を終えて
総務省のタスクフォースを受けて、ロビー活動が成果を出しているのか、NTTドコモに有利な空気となってきた。キャッシュバックや実質0円が規制されたことで、KDDIやソフトバンクからのMNP攻勢は沈静化。長期利用ユーザーを優遇するという総務省の意向により、NTTドコモは大手を振って、長期ユーザーへの割引を展開できるようになった。
NTTドコモには長期利用ユーザーが大半だ。新料金プランは、NTTドコモユーザーであるお父さんを中心に、家族をNTTドコモにまとめつつ、データ容量をシェアする使い方を提案しているが、今回の施策で契約年数と契約データ容量に応じて割引額をアップすることで、さらにユーザーを囲い込みやすくなるだろう。
これまでKDDIやソフトバンクは、NTTドコモのユーザーを奪うことで成長を続けてきた。MNPが形骸化し、ユーザーの流動性が少なくなることで、KDDIとソフトバンクは窮地に追い込まれるのではないか。
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