MVNOの先駆者・日本通信が個人向け格安SIMカード事業から撤退――VAIO Phoneでキャリア型ビジネスへの転換を狙うも失敗か石川温のスマホ業界新聞

» 2016年08月19日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 8月10日、日本通信は同社の個人向けMVNO事業をU-NEXTに譲渡すると明らかにした。今後、日本通信ではMVNE事業に特化していく方針となった。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年8月13日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 日本通信は、先ごろ、ポケモンGOブームに乗じて、プリペイドでポケモンGOの通信しか行えない「ゲーム SIM」を発売したばかり。また、クルマ向け専用デジタルラジオ放送局Amanek向けSIMも提供するという。

 ここ最近、格安スマホが盛り上がる中、単なるデータ通信や音声通話対応SIMカードで存在感を発揮できない中、キワモノSIMカードで何とか個性を出そうと、もがいていた矢先であった。

 さらに会長がツイッターで、ソフトバンク網を使ったSIMカードをそのうち出すとアピール。すでにソフトバンクでiPhoneを使っている人たちが格安プランを使えると匂わせていたが、結局、いまのところ実現できていない。会長としては、ソフトバンク網を使えるようになるとアピールすることで、個人向けMVNO事業の延命を狙っていたのかもしれない。

 日本通信といえば、傍若無人な会長のもと、総務省やNTTドコモと戦い、ここまでMVNOの市場を作ってきた先駆者であり、功労者と言える存在だ。ここ最近の格安スマホブームも日本通信が下地を作ったと言っても言い過ぎではないだろう。

 数年前までのMVNO市場は、香港などから調達したSIMフリーiPhoneをNTTドコモ網で使いたいという一部ユーザーのためのSIMカードを提供していれば、それで存在価値はあった。しかし、格安スマホという新たな市場ができ、「いかに一般に知れ渡っているブランドか」という競争になると、認知度の低い日本通信にとっては不利な状況にならざるを得ない。

 やはり、日本通信にケチがつき始めたのは、2015年に発売したVAIO Phoneの存在だろう。これまで日本通信は「MNOにはできないことをやるのがMVNOの存在意義」を胸を張っていたにもかかわらず、垂直統合で自社で自ら端末を手がけるようになってしまった。しかも、VAIO Phoneとは名ばかりの出来損ないスマホだったものだから、一気に炎上してしまったのだった。

 あれだけ、キャリアのビジネスモデルを否定してきた日本通信が、自ら端末を発注し、販売するとなったら、当然、反発は避けられないだろう。

 今回の日本通信の個人向けMVNO撤退という決断は、格安スマホ業界にとって、歴史的な1日になりそうだ。すでに市場はレッドオーシャンであり、ブランド力のない会社は、これから淘汰されていくことが現実的になってきた。

 中途半端なブランド力では生き残っていけない。いずれ、日本通信のように、MVNO事業を他社に譲渡し、撤退する会社も続出することになるだろう。

 いよいよ、MVNOの生き残りをかけた戦いが始まろうとしている。

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