では、IIJはゼロ・レーティングについてどう考え、どのように行動するのか。
「ゼロ・レーティングは悪だ、といいたいわけではない。ただし、これまでも非常にセンシティブな議論がされてきたテーマ。ゼロ・レーティングを提供する通信事業者は、いくつかの観点で何かしら検討をしなければならない。そして、その考え方をユーザーに説明することが重要だ」
佐々木氏はこう述べた上で、IIJとしての考え方をまとめた。
IIJは、電気通信サービスを開始した当初から通信の秘密を尊重してきたと胸を張る。通信の秘密の侵害も最小限となるように努力し、それは今後も変わらないと断言した。「まったく提供の予定はないが、もしゼロ・レーティングを採用する場合があるとしたら、ユーザーに対して権利がどれくらい侵害されるのか、何が起きるのかを十分説明した上で、必ず事前に個別かつ明確な同意をいただく」(佐々木氏)
ネットワーク中立性については、オープンインターネットがさまざまな新ビジネスを生み、それによってプラスの影響を与えてきたという考えの立場だ。ただ、インターネットは変化していく。「今後、どこまでだったら中立性は正しいのか、どこからだったら悪い影響が起きるかという議論が行われる場合には、IIJとしてその議論に参加したい」(佐々木氏)
利用者間の公平性については、サービス提供事業者がコストを負担しないモデルについて「現時点でまったく導入の意思はない」と明言した。サービス提供事業者がコストを負担するモデル(スポンサード・データ)については、「利用者間の公平性に問題がないと考え、提供することになったら、通信の秘密やネットワーク中立性の観点から検証を行った上でユーザーにサービスを提供する」(佐々木氏)と述べた。
最後に、MVNEとして100社以上のMVNOを支援しているIIJとして、MVNOがゼロ・レーティングのサービスを提供したいという要望があった場合に、どう応えるかも説明した。
「技術的にゼロ・レーティングサービスをやりたいというMVNOからの要望があれば、相談にはいつでも応じる。技術的なところ以外については、ゼロ・レーティングについての法令、IIJが電気通信事業者として尊重すべき考え方、さまざまなノウハウがある。そういったものをパートナーMVNOさんの求めに応じて提供し、一緒に考えさせてもらいたい」と佐々木氏は述べ、MVNEとしてゼロ・レーティングサービスの提供を支援することに対しては慎重な姿勢を示した。
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