国内の通信事業は「退屈だけど順調」「端末ではなくサービスで収益を伸ばす」――孫氏

» 2016年11月07日 21時17分 公開
[田中聡ITmedia]

 ソフトバンクグループが11月7日に2016年度第2四半期の決算会見を開催。孫正義社長が、ARM買収の手応え、国内外の通信事業について語った。

ソフトバンク決算 ソフトバンクグループの孫正義社長

 孫氏はARMのCEOと一緒に、同社の主要顧客7社に訪問したそうで、その際に「ARMは自分たちにとって必要不可欠な会社、今後10年分ぐらい契約(共同開発)したい」といったポジティブな反応を得られたことを明かす。「ARMには、10年分の製品ロードマップができている。10年先のロードマップを明確にできる会社はそうたくさんない」と評価し、「非常に自信を深めた、買って良かったとつくづく思った」と手応えを語った。

 孫氏がARMのアーキテクチャで特に評価するのが「セキュリティ」だ。例えばクルマがインターネットに接続する「コネクテッドカー」が普及すると、人命を守るうえでもセキュリティが重要になる。「クルマが外部と通信をするということは、ウイルスやハッキングもコネクトされる(リスクがある)。でもクルマの中のチップが一切暗号化されていないと、世界中のクルマがウイルスに感染し、高速道路で同時多発的にブレーキがきかなくなって暴走する。高速道路のハイウェイシステムは壊滅的なダメージを受けるだろう」と危惧する。

 こうした、さまざまな日用品がインターネットに接続する「IoT」の時代に向けて、「ARMはセキュリティを一気に強化する」と孫氏。「サイズや消費電力が小さいのに性能が上がり、セキュリティも強化される。ARM=安心。これから二次曲線で伸びていくと確信できた」と自信を見せた。

 国内の通信事業について、孫氏は「退屈ではあるけれど」と前置きしつつ、営業利益や契約数が順調に伸びていることを説明。特に解約率については、ソフトバンクがモバイルサービスを開始してから最も低い数値(1.06%)となった。その背景として孫氏は、Y!mobileの成長、大容量プラン「ギガモンスター」の提供、長期ユーザー特典、ソフトバンク光のバンドルサービスが効果を出しているとみる。特にソフトバンク光は急成長しており、「顧客獲得の成長ドライバとして着実に機能している」と孫氏は手応えを話す。

ソフトバンク決算
ソフトバンク決算
ソフトバンク決算 営業利益や契約数は順調に推移し、解約率は過去最良を記録
ソフトバンク決算 解約率が下がった要因に挙がったもの
ソフトバンク決算 ソフトバンク光の契約数も増加している

 総務省のガイドラインによって実質0円販売が規制されたことの影響については、「いい悪いの議論はあると思うが、みな同じルールで規制の枠内に入るので、直接的な影響はない。(MNPなどで)入れ替わりは減っていくんだろうなと思う」とコメント。また今後については「新たな収益の伸びを考えると、通信料金だけでなく、安く、多くの人々に楽しんでもらわないといけないので、(データの)単価は改善しないといけない」と語ったが、具体的に何がどの程度安くなるのかについては言及しなかった。

 また通信料が安くなる代わりに「光ファイバーを家庭の固定通信に合わせて販売するとか、スポーツや映画の見放題とか、音楽の聴き放題とか、さまざまなコンテンツをセットで提供する。フィンテックやコンテンツなど、さまざまな複合的なサービスを付加していく」という考えを明かした。これによって「1顧客あたりのトータルの収益はまだ増やせると思う」とした。

 iPhoneをはじめ、3キャリアで端末が同質化しつつある中で、今後、端末がどこまで売れるのかも懸念材料だ。

 「われわれは端末の販売ではほぼ1円ももうかっていない。むしろ赤字の状況だと思う。回線が減ると、われわれの収益に決定的な打撃があるが、端末の入れ替わりが減っても経営的にはそれほど大きな打撃はない。台数の入れ替わりが減ることで一番打撃を受けるのは国内の端末メーカー。今までゼロサムゲームの中で競合各社(3キャリア)が戦っていたが、(ソフトバンクは)Yahoo!Japanとも連携しつつ、コンテンツや金融などで、付加サービスを増やして、サービスの収入を得る」と話し、端末ではなくその周辺領域で収益を上げる考えを示した。

 米Sprint事業については、契約数は純増を続けており、解約率もSprint史上最も良い1.37%を記録。「設備投資も数千億円規模で減らしているが、ネットワークの改善率は、米国の中で最も高い」(孫氏)そうで、「ソフトバンクで培ったネットワークの設計技術が機能し始めて、Sprintのネットワークは、着実に一番改善率が良くなっている」と、ネットワークについても手応えを語った。

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