―― 企画の検討は、いつ頃からスタートしたのでしょうか。
林氏 検討自体は、去年(2016年)の夏ごろからですね。
岩井氏 あとは、ビジネス的な判断で、いつ出せるかを模索していました。
―― VoLTEやDSDSは、OSがAndroidだからサポートできたということでしょうか。
岩井氏 OSというより、ミドルウェアの方ですね。その機能をサポートする、しないのポリシーによって決まっています。VoLTEやDSDS、キャリアアグリゲーションなどは、今年(2017年)のSIMフリースマートフォンでトレンドになる機能です。この価格で、いち早く搭載できたのは大きいのではないでしょうか。
―― 対応バンドも増えています。
岩井氏 当初は国内バンドを中心に開発してきましたが、やはり海外仕様への対応を求める声が強く、その中で3GのBand 5を使えるようにしました。これは、主に国内ユーザーが海外渡航することを想定しています。
―― 海外での販売も検討されているのでしょうか。
岩井氏 海外での販売ではなく、法人で海外赴任者が出る場合の問い合わせが多いですね。
―― 一方で、このタイミングでAndroidが6.0なのが、少々不思議に思いました。アップデートの予定も含め、なぜこのバージョンなのかを教えてください。
岩井氏 今のところ、具体的に、いつ、どういう形でアップデートするのか、そもそもしないのかも含めて、申し上げることができません。OSのバージョンについては、6.0である程度まとまったと思っています。
7.0に上げるメリットは細かいところではありますが、大きいのはマルチウィンドウぐらいで、5.5型、フルHDの端末で恩恵を受けられるかどうかは、正直微妙なラインです。ターゲットがビジネスパーソンということもあって、ある程度仕事で信頼して使えることに主眼を置きました。今まで使っていたアプリが使えなくなるより、慣れた環境で安心して使えることを重視しています。
林氏 重視したのは安定性です。6.0で出しましたが、ご存じのように、Android OSは毎月のようにセキュリティパッチが配信されています。その辺をしっかりサポートした方がいいというのが、内部で検討した際の結論です。今急いで7.0にアップデートするよりも、バグ出しがされている6.0を継続的に提供した方が、安定した環境で使えていいと判断しました。
―― ユーザーインタフェースですが、Androidそのもので、VAIOの手が入っていません。もう少し、VAIOらしさのようなものがあるといいなと思ったのですが、いかがでしょうか。
岩井氏 PCで長年培ってきたVAIOのイメージがあるとは思いますが、今のVAIO株式会社として発売しているVAIOは、ほとんど素に近いOSが搭載されています。昔はプリインアプリがてんこ盛りで、まずアンインストールから始めるというのはありましたが(苦笑)。デフォルト環境の軽さに価値を感じていただけるお客さまも、多くなっています。
―― PCとの連携についてはいかがですか。
岩井氏 その辺に新しいものを入れているわけでもありません。ただ、AndroidにはGoogleのソリューションがあり、Microsoftのクラウドサービスも一通り出ています。そのどちらかを使えば、連携も快適にできます。もちろん、スマホを操作しなくてもテザリングができるようなことはAndroidでもあるといいですが、やはりそういうものはWindowsならではです。
―― そのWindowsを搭載したVAIO Phone Bizについてですが、PCではCreators Updateの提供が開始されました。これについては、どうされていくのでしょうか。
岩井氏 Creators Updateも、今、準備しているところです。
林氏 事前にインサイダープログラムは配布済みで、弊社の中で問題がないか、検証をしています。Windowsは、Creators Updateで、さらにパワーアップします。想定よりちょっとペースが遅いのは事実ですが、スマホはやはり売った後が大事です。どうすればお客さまが安心して使えるのか。売り切りのスタイルになってはいけません。
―― Android版を開発する際に、何か苦労はありましたか。
林氏 特にこれというハードルはありませんでした。OSの大部分が安定していたので、あとは弊社のプラットフォームとファームウェアのマッチングだけでした。
岩井氏 Windowsを作ったときの苦労に比べれば(笑)。
―― そこまでスムーズだと、Androidを自分で入れたいという人も出てきそうですが。
林氏 いったん出荷して購入されたものは、お客さまの資産になります。それを100%保証しなければいけないのは、やはり難しい。そういうことを考えると、OSは分けて販売した方がいいかなと思っています。
―― ちなみに、auのネットワークへの対応はいかがでしょうか。
岩井氏 弊社から言えるのは、auのSIMカードはサポートできないということです。仮にSIMを認識しても、LTEの対応バンドが1だけなので、実用的に難があります。ですから、そこは保証対象外にしています。
林氏 「使えた」という声も聞こえてきますが、そこはあくまで自己責任でお願いしています。
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