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» 2017年12月01日 10時00分 公開

石川温のスマホ業界新聞:トーンモバイルがシニアをターゲットにしたサービスを強化――ARPU・1700円で、MVNOとして生き残る道を模索

トーンモバイル(TONE)が、主にシニアをターゲットとしたサービス強化を発表した。レッドオーシャン化が叫ばれて久しいMVNO業界において、このような差別化戦略はうまく行きそうだが、課題もある。

[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 11月22日、トーンモバイルはシニア向けサービス「お元気ナビ」を発表した。普段の歩数をもとに生活習慣病が発生する「確率」を表示する。当然、「診断」ではなく、統計的に算出された「発症率」を示すものとなっている。データの元となっているのは、青柳幸利医学博士(東京都健康長寿医療センター研究所)が群馬県中之条町で進めている「中之条研究」で得られた「中之条メソッド」だ。中之条町では2000年から65歳以上の住民5000人に加速度センサーをつけて、データを収集し、歩数と病気の発症率の関連性を調べているという。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年11月25日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


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 サービス内容は興味深いものがあるし、トーンモバイルはMVNOとしては、他社とは一線を画すサービスで独自路線を貫いているのは評価に値する。今後もすでにレッドオーシャンと言われるMVNO市場でも生き残っていけそうな雰囲気がある。

 ただ、中之条メソッドを紹介するにあたり、プレスリリースに「奇跡の研究」と安易に記載してしまうのはいただけない。「奇跡」と書いただけで、胡散臭さが増してしまうし、それを伝えるメディアとしても、一気に身構えてしまうからだ。健康がテーマだけにそのあたりの表記には細心の注意を払うべきだ。

 一方で、トーンモバイルでは、宿泊施設などを検索し、お得な料金で予約できるクーポン的なサービスを「TONE福利厚生」と命名している。キャリアのように、「dなんとか」というありきたりな名称にすることなく、ユーモアのある命名の仕方ができる会社だけに、安易に「奇跡」という言葉を使うのは慎んだ方が良いだろう。

 トーンモバイルでは、まずは子どもとシニアをターゲットにして、サービスを展開している。子どももシニアも、30代、40代の世代が買い与えて、スマホデビューすることになる。購入の決定権を持つ世代に、まずは子どもやシニアでお試し的に使わせ、最終的には自身のスマホも乗り換えてもらうという戦略だ。

 トーンモバイルは、月額基本料金が1000円で容量無制限ということもあり、そうした「初めてのスマホ」デビューの選択肢としてはちょうど良いのだろう。

 基本プランは1000円だが、これでは050の番号しか使えない。090などの通話を使うには別に月額953円が必要だ。さらに端末の補償オプションとなれば月額500円が加算される。容量無制限であるが、通信速度は500〜600kbpsとアナウンス。動画などを視聴する際には、1GB300円の高速チケットオプションの購入を推奨している。

 基本料金の1000円はかなり安く見えるが、実際、普通に使おうと思えば、それなりの出費が伴う計算だ。

 今回の発表会で、トーンモバイルのARPUが1700円ということが明らかになった。その内訳を聞かれた石田宏樹社長は「端末の補償サービスに入る人が多い。それに加えて通話料という感じだ」と答えている。いろいろオプションを用意しているが、実際はARPUで1700円しか稼げていない

 個性的なサービスで存在感はあるものの、そもそも容量無制限ということもあり、データ通信料金で稼げないのが弱点だ。端末も1機種のみで、初心者とすれば、選ばなくて良いというメリットがある一方、当然、「端末を選びたい」というユーザーからの支持を得られないのがつらい。

 ハイエンドな端末を提供すれば、それだけ流れるデータ通信量が増え、さらにデータ通信量収入を稼ぐということもできるが、いまのトーンモバイルにはそういった選択肢もない。

 「データ通信は容量無制限」「端末は1機種のみ」というなかで、ARPUをあげていくのは今後、困難なのかもしれない。

 トーンモバイルではTSUTAYAでの7泊8日の無料レンタルサービスなども開始した。ARPUをあげるのが難しい中、このお試し戦略によって、いかにユーザー基盤を拡大するかが、生き残っていく上で重要となっていきそうだ。

© DWANGO Co., Ltd.

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