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第1回 キヤノン「PIXUS」の売れ筋プリンタ3台を比較するプリンタ09-10年モデル徹底検証(4/5 ページ)

» 2009年12月18日 18時45分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]
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付属ソフトの構成と見どころ

 2009年末のPIXUSは新機能として新しい印刷ソフト「Easy-WebPrint EX」を用意してきた。当初はプリンタの目玉機能がユーティリティソフト、それも写真用ではなく、Webプリント用と聞いて面食らった。聞けばユーザーアンケートを実施した結果、写真に続いてWebプリントの用途が高く、またその出力結果に不満を持つ人が多かったためだという。

 不満というのはいうまでもなく、画面の表示通りに印刷されなかったり、余計な部分まで印刷されてしまう、ということだ。前者はInternet Explorer 7以降のプリント機能でかなり改善されたが、後者については、Webサイトにつきもののバナー広告やタブバーなどのせいで、印刷時に本当に必要な情報が欠落したり、無駄にページが増えてしまったりというケースがいまだに少なくない。

 Webサイト上でクリックできるバナーやボタンならまだしも、通常は紙にしてまで眺めたいわけはなく、印刷時は必要な情報のみを抽出して、極力コンパクトにまとめたいと思うのが人情だろう。印刷した紙を持ち運んだり、資料とするならば、なおのことだ。これを解消するためにEasy-WebPrint EXを開発したのだという。

 同種のソフトは日本HPが先行していたが、Easy-WebPrint EXは後発なだけあって、実際に触ってみると確かによくできており、利便性が非常に高い。操作は至って簡単で、目的のページをWebブラウザ(Windows XP/Vista/7の32ビット版IE8/IE9に対応)で開き、「自動クリップ」ボタンを押して、印刷したい範囲の大小を調整し、クリップリストに登録していくだけでよい。自動クリップによる範囲選択がうまくいかなくても、マウスのドラッグで範囲を自由に変更できる。また、「クリップ」ボタンを押せば、自動クリップを頼らずにユーザーが最初から手動で範囲選択することも可能だ。

 必要な部分を選択したら、クリップリストの「クリップの編集と印刷」ボタンを押してプレビュー/編集画面へ移行する。ここではクリップの順序やサイズ変更、範囲選択の微調整などといった最終的な印刷レイアウトを決めることができる。ツールバーの「自動整列」を押せば、各クリップをきっちりと詰めた状態で整列してくれるので、作業の手間は意外に少ない。

 また、クリップした内容に任意の文章を追記したい場合は、「テキストの追加」ボタンを押してから任意の場所をクリックすると、専用のダイアログが表示される。フォントや文字サイズ、装飾の指定も可能だ。レイアウト作業が完了したら、プリンタで印刷するか、PDFファイルとして保存すればよい。自動クリップ機能からのプレビュー画面では2〜3段組印刷が指定できる凝った作りになっており、プリンタ側の自動両面印刷機能と組み合わせて使えば、印刷枚数を大幅に削減できる。

例えば、IE8でPC USERの記事を印刷しようとすると、記事の下に並ぶ関連リンクのリストまで印刷されてしまう。IE8で印刷プレビューを行ったところ、枚数は全6ページになった
Easy-WebPrint EXを導入すると、IE7/8に専用のツールバーが追加され、ここから印刷範囲の選択が行える。選択した印刷範囲はクリップとして、左ペインに登録されていく
Easy-WebPrint EXで印刷範囲を選択してプレビューした状態。不要な情報を削除したことで、印刷枚数は4ページに収った。両面印刷や段組印刷を使えば、出力枚数がさらに減らせる

 なお、Easy-WebPrint EXは製品に添付されておらず、キヤノンのWebサイトからダウンロードする必要がある。とはいえ、付属のCD-ROMからドライバをインストールしてセットアップする際に、PCがインターネットに接続してあれば、画面の案内に従って同ソフトを自動でダウンロードしてインストールできるので、手間はかからない。

 また、最新機種に限らず、2世代くらい前のPIXUSシリーズのユーザーも無償でダウンロードして利用できるのはうれしい(対応機種はキヤノンのWebサイトを参照)。今後は対応するOSとブラウザが拡充すれば、より幅広いユーザーにとって有益なソフトになるだろう。

純正写真用紙プリントの画質

 ここからは複合機の根幹を支える出力性能について検証する。まずは画質だが、インクジェット複合機に求められるプリント、コピー、スキャンの3種で出力を行った。

 プリントでは、L判に最高品位で出力したものを評価した。プリンタドライバからは細かい色調整やカラーマネジメント印刷の設定も行えるが、印刷品位以外で画質に影響を与える項目はいじっていない。メディアはキヤノンの最上級写真用紙である「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]」だ。

 以下に掲載した印刷サンプルは、出力結果をスキャンした画像データの縮小表示だ。各サンプルをクリックすると、500×750ドットの画像が表示される。スキャンした段階で、色の表現方法がCMYKからRGBに変わり、ディスプレイやソフトウェアの環境で色が違って見えるため、色再現性は正確ではない。画像はあくまで傾向を把握するための参考で、評価は各画像のキャプションと本文を確認してほしい。印刷サンプルはAdobe RGBの色域を正しく扱えるアプリケーション(カラーマネジメント対応ブラウザ)とディスプレイで表示すると、最も色再現性が高まるようにスキャンしてある。

MP990:色鮮やかでメリハリが効いているにもかかわらず、不自然な感じがしない。グレーインクが奏効しているためだろう。金属の硬さや光沢、果物のみずみずしさも美しく再現できた
MP640:全体的に色がやや重たいものの、金属やビンの階調はうまく再現できた。メリハリが強めなので、キウイフルーツの断面やナイフ、フォークのエッジに若干の違和感が出た
MP560:MP640とよく似た傾向になったが、こちらは少しトーンがあっさりと出た。際立った色彩のインパクトはないが、オブジェクトのエッジに違和感は少なく、印象はよい

 細かい描写力を見るための参考として、各印刷サンプルの拡大画像も掲載した。各画像をクリックすると、印刷サンプルをスキャンした画像データの一部が1024×768ドットで実寸表示される。各画像は写真上では約43×32ミリと小さな範囲で、実際はここまで細部は見えることはなく、粒状感もない。

MP990
MP640
MP560

 なお、失敗写真をプリンタの自動補正機能で見栄えよく出力する機能はさらに進化した。2007年モデルから搭載している「自動写真補正」機能に新機能の「エリア別明るさ補正」を加えて、「自動写真補正II」と名付けている。

 自動写真補正IIでは、入力された画像データを「顔検出」「シーン分類」「適正化」の3ステップで処理するが、適正化の際にエリアごとに補正を行うのが特徴だ。画像に対して一律に補正すると、部分的に彩度の低下や白飛びなどが生じてしまうが、エリアごとに異なる明るさ補正を行うことで、階調と彩度を極力維持しつつ、全体の適正化が可能になった。これにより、背景と被写体の露出差が大きい逆光のような写真でも、空の青さや背景の明るさは維持したまま、被写体だけを明るく補正できるケースが増えている。

 また、画質面ではダイレクトプリントや写真コピー時において、暗い顔の検出能力の向上、写真を明るくした場合の彩度低下の防止、露出不足の画像と夜景を区別したうえでの露出不足エリアの特定といった細かな強化がなされた。

普通紙カラーコピーの画質

 コピーの検証では、A4カラー写真をA4普通紙に「標準」モードと「はやい」モードでコピーしたサンプルを用いた。「標準」モードでの普通紙印刷品質はもちろん、最速での出力が可能な「はやい」モードでも実用に耐えるかどうかを見ていきたい。

MP990 標準:十分な品質で、普通紙ながら細部の描写もしっかりと行えた。写真のカラーコピーは標準以上の設定がいい
MP990 はやい:階調の飛びやつぶれが目立つので写真には向かないが、イラストやチャートならば実用に耐えるだろう

MP640 標準:色彩がやや沈んでいるが、描写は細部までできている。グレーインクがないため、黒の主張が強い
MP640 はやい:粒状こそ目立つが、色彩の傾向は標準モードと似ている。黒はつぶれるものの、バランスはいい

MP560 標準:MP640よりも少し高彩度に出力された。普通紙ながらメリハリが効いており、一見した印象はよい
MP560 はやい:ほかの2機種と同様に、粒状が見られ、黒つぶれやにじみが生じたが、内容は細部まで判別できる

 なお、普通紙印刷ではインクの打ち込みによる紙のたわみも気になるところだが、3モデルともすべてのモードで問題ない結果だった。

反射原稿スキャンの画質

 スキャン品質では、L判の印刷物を取り込んだデータをサンプルとして掲載した。なるべく公平に素の状態を見てもらうため、スキャナドライバ(TWAIN)の設定は解像度を600dpiにした以外、デフォルトのままで使用している。出力結果に個人差が出てしまうため、きれいに仕上げるための色調整などはしていない。TWAINドライバはおなじみの「ScanGear」を採用しており、細かな調整も可能だ。

 各画像をクリックすると、600dpiでスキャンした画像の一部が1024×768ドットで実寸表示される。スキャン画像サンプルのICCプロファイルはsRGBとなっている点は留意してほしい。

MP990:全体的に明度が高く、色彩も強いため、見栄えはするが、色によっては蛍光色のようになった。黒も少し浮いている。解像感に不満はなく、ワインのラベルやトランプの模様も再現できた
MP640:シャドーに力がなく、全体に平坦な描写になった。ワインのラベルなどは上下の模様が消えかかっている。データでは残っているので、暗点の指定や事後のレベル補正で見栄えは整えられる
MP560:黒に締りがない割に濃淡のバランスが取れており、比較的良好な印象を受ける。ただし、それだけに事後の補正はしにくいので、事前に暗点と明点を指定する必要があるだろう

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