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» 2010年01月20日 11時20分 UPDATE

「VAIO F」2010年春モデル3台で検証:モバイル向け新Core iシリーズのCPU性能をじっくり調べてみた (1/4)

2010年PC春モデルではモバイル向け新Core iシリーズの積極採用が目立つが、従来のCPUとは何が違うのか? 多岐に渡るラインアップを整理し、その実力をチェックする。

[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

モバイル向け新Core iシリーズ11モデルが登場

 インテルは2010年1月8日、Core iシリーズの新CPUを一挙に17モデル発表した。デスクトップ向けの新Core iシリーズ(開発コード名:Clarkdale)はすでにPCパーツ取扱店などでも流通が開始されているが、ここではモバイル向けの新Core iシリーズ(開発コード名:Arrandale)にフォーカスし、その概要解説と、仕様が異なる3台のノートPC(ソニー「VAIO F」)による性能検証を行なっていく。

tm_1001ci01.jpgtm_1001ci02.jpg Arrandaleこと、新Core iシリーズのパッケージ

 Arrandaleことモバイル向け新Core iシリーズのラインアップは下表にまとめた。ハイエンドのCore i7、ミドルレンジのCore i5、ローエンドのCore i3と、3つのグレードがあり、通常電圧版(プロセッサナンバ末尾がM)だけでなく、低電圧版(同LM)、超低電圧版(同UM)も一度に投入され、11モデルと大所帯のラインアップになっている。

 これらは従来のモバイル向けCore 2 Duoを一気に置き換えるもので、2009年秋に発表ずみのモバイル向けCore i7(開発コード名:Clarksfield)を頂点として、ハイエンドからローエンドまで、ノートPC用のCore iシリーズが出そろったことになる。今後は一部のCULV(Consumer Ultra Low Voltage)版CPUを除き、順次Core 2シリーズからの置き換えが進んでいく見込みだ。

 下表には既存のモバイル向けCore i7(Clarksfield)、そして開発コード名「Penryn」こと、Core 2シリーズの主要モデルの仕様も掲載しているが、新Core iシリーズ(Arrandale)がこれらと決定的に違うのは、CPUにGPUの機能を統合していることにある。

 ただ、このGPU機能はダイ(半導体チップ)レベルで統合されているわけではなく、1つのCPU基板上にCPUとGPUの2つのダイ(半導体チップ)を実装する形で実現しており、CPU基板上でQPI(Quick Path Interconnect)により接続されている。QPIの転送レートはデスクトップ向けLGA1366版Core i7と同じ4.8GT/秒となっている。

 また、既存のCore i7(Clarksfield)ではCPUダイに統合されていたメモリコントローラやPCI ExpressコントローラはGPUダイ側に統合されている。

モバイル向け新Core i7シリーズ(Arrandale)の仕様
シリーズ Core i7
プロセッサー・ナンバー 620M 640LM 620LM 640UM 620UM
コア数 2 2 2 2 2
同時処理スレッド 4 4 4 4 4
基本動作クロック 2.66GHz 2.13GHz 2.0GHz 1.2GHz 1.06GHz
TB最大クロック 3.33GHz 2.93GHz 2.8GHz 2.26GHz 2.13GHz
2次キャッシュ 256KB×2 256KB×2 256KB×2 256KB×2 256KB×2
3次キャッシュ 4MB 4MB 4MB 4MB 4MB
GPU機能 内蔵 内蔵 内蔵 内蔵 内蔵
GPUクロック 500MHz 266MHz 266MHz 166MHz 166MHz
GPU最大クロック 766MHz 566MHz 566MHz 500MHz 500MHz
メモリコントローラ DDR3-1066 DDR3-1066 DDR3-1066 DDR3-800 DDR3-800
TDP 35W 25W 25W 18W 18W
パッケージ PGA988/ BGA1288 BGA1288 BGA1288 BGA1288 BGA1288
AES-NI/PCLMULQDQ
製造プロセス 32nm 32nm 32nm 32nm 32nm
価格 322ドル 322ドル 300ドル 305ドル 278ドル
※価格は1000個ロット時のOEM向け単価

モバイル向け新Core i3/5シリーズ(Arrandale)の仕様
シリーズ Core i5 Core i3
プロセッサー・ナンバー 540M 520M 520UM 430M 350M 330M
コア数 2 2 2 2 2 2
同時処理スレッド 4 4 4 4 4 4
基本動作クロック 2.53GHz 2.4GHz 1.06GHz 2.26GHz 2.26GHz 2.13GHz
TB最大クロック 3.06GHz 2.93GHz 1.86GHz 2.53GHz
2次キャッシュ 256KB×2 256KB×2 256KB×2 256KB×2 256KB×2 256KB×2
3次キャッシュ 3MB 3MB 3MB 3MB 3MB 3MB
GPU機能 内蔵 内蔵 内蔵 内蔵 内蔵 内蔵
GPUクロック 500MHz 500MHz 166MHz 500MHz 500MHz 500MHz
GPU最大クロック 766MHz 766MHz 500MHz 766MHz 667MHz 667MHz
メモリコントローラ DDR3-1066 DDR3-1066 DDR3-800 DDR3-1066 DDR3-1066 DDR3-1066
TDP 35W 35W 18W 35W 35W 35W
パッケージ PGA988/ BGA1288 PGA988/ BGA1288 BGA1288 PGA988/ BGA1288 PGA988/ BGA1288 PGA988/ BGA1288
AES-NI/PCLMULQDQ
製造プロセス 32nm 32nm 32nm 32nm 32nm 32nm
価格 257ドル 225ドル 241ドル NA NA NA
※価格は1000個ロット時のOEM向け単価

モバイル向けCore i7(Clarksfield)の仕様
シリーズ Core i7
プロセッサー・ナンバー 920XM Extreme Edition 820QM 720QM
コア数 4 4 4
同時処理スレッド 8 8 8
基本動作クロック 2GHz 1.73GHz 1.6GHz
TB最大クロック 3.2GHz 3.066GHz 2.8GHz
2次キャッシュ 256KB×4 256KB×4 256KB×4
3次キャッシュ 8MB 8MB 6MB
GPU機能
GPUクロック
GPU最大クロック
メモリコントローラ DDR3-1333 DDR3-1333 DDR3-1333
TDP 55W 45W 45W
パッケージ PGA988 PGA988 PGA988
AES-NI/ PCLMULQDQ
製造プロセス 45ナノ 45ナノ 45ナノ
価格 1054ドル 546ドル 364ドル
※価格は1000個ロット時のOEM向け単価

モバイル向けCore 2シリーズ(Penryn)の仕様
シリーズ名 Core 2 Xtreme Core 2 Duo
プロセッサー・ナンバー QX9300 T9900 T9600 P8800 P8600 SP9600 SL9600 SU9600
コア数 4 2 2 2 2 2 2 2
同時処理スレッド 4 2 2 2 2 2 2 2
基本動作クロック 2.53GHz 3.06GHz 2.8GHz 2.66GHz 2.66GHz 2.53GHz 2.13GHz 1.6GHz
IDAT最大クロック 2.8GHz NA 2.93GHz NA 2.66GHz 2.4GHz 1.8GHz
2次キャッシュ 12MB 6MB 6MB 3MB 3MB 6MB 6MB 3MB
GPU機能
GPUクロック
GPU最大クロック
メモリコントローラ
TDP 45W 35W 35W 25W 25W 25W 17W 10W
パッケージ PGA478 PGA478/ BGA479 PGA478/ BGA479 PGA478/ BGA479 PGA478/ BGA479 BGA956 BGA956 BGA956
AES-NI/ PCLMULQDQ
製造プロセス 45nm 45nm 45nm 45nm 45nm 45nm 45nm 45nm
価格 1038ドル 530ドル 316ドル 241ドル 209ドル 316ドル 316ドル 289ドル
※価格は1000個ロット時のOEM向け単価

CPUパッケージサイズの違い
パッケージ PGA988 BGA1288 PGA478 BGA479 BGA956
サイズ 37.5×37.5mm 34×28mm 35×35mm 35×35mm 22×22mm

CPUコアには32ナノメートルプロセスルールを採用

tm_1001ci03.jpg Westmere世代のCPUダイのイメージ

 新Core iシリーズ(Arrandale)のCPUダイは新しい32ナノメートルプロセスルールを採用している。ゲート長の微細化とさらなるリーク電流の低下によって、従来の45ナノメートルプロセスルールに比べて約22%トランジスタ性能が向上しており、低消費電力を保ちつつ、これまで以上に高速な動作が可能となっている。

 ダイサイズも81平方ミリメートルにおさまり、同じくデュアルコアで45ナノメートルプロセスルールを用いたCore 2 Duo(Penryn)の107平方ミリメートルに比べて、順当に小さくなっている。このNehalemアーキテクチャによる32ナノメートルプロセスルールを使用したCPUコア部は、開発コード名で「Westmere」と呼ばれている。

 また、新Core iシリーズ(Arrandale)はすべてデュアルコアのCPUであり、インテル ハイパースレッディング・テクノロジー(HT)を全ラインアップで標準サポートしている点も注目だ。HTは1コアにつき2コアぶんの命令(スレッド)を同時に取り込み、1スレッドの実行中に使われていない部分を使って処理を進めることで、処理性能を向上させる機能だ。シングルスレッドのアプリケーションにはほとんど効果がないが、マルチスレッド/マルチコアに最適化されたアプリケーションでは最大30%程度の性能アップが期待できる。

 インテル ターボ・ブースト・テクノロジー(TB)もこれまで以上に積極的に導入されている。これは、CPU内蔵のマイクロコントローラがCPUの温度、電流、電力を監視し、これらの条件に余裕がある場合、その余裕の範囲内で動作クロックを上昇させる機能だ。

 TBは各モデルごと、アクティブなコア(命令処理に使われているコア)の数によって上限が決められている。既存のクアッドコアCore i7(Clarksfield)では4コア全部がアクティブな状態になるとクロックアップが小幅に抑えられるが、デュアルコアの新Core iシリーズ(Arrandale)では2コア両方がアクティブな状態でも大幅にクロックアップするのが特徴で、特に上位グレードのCore i7はクロックアップの幅が大きく設定されている。TBの仕様は下表を参照してほしい。

 また、おなじみのEIST(Enhanced Intel Speedstep Technology)にも対応しており、CPU負荷に応じて動作クロックは頻繁に変化する。最低動作クロックは通常電圧版と低電圧版が1.2GHz、超低電圧版では667MHzとなっている。

 ちなみに、Core 2シリーズ(Penryn)でもTBのプロトタイプ的な機能としてIDAT(Intel Dynamic Acceleration Technology)という機能があった。しかし、電力管理機能がNehalemアーキテクチャほどインテリジェントでないうえに発動条件がシビアすぎてほとんど発動する場面がなく、実質的に意味がない機能となってしまっていた。

 また、一部モデルを除き、新Core iシリーズ(Arrandale)では「AES-NI(Advanced Encryption Standard-New Instruction)」および「PCLMULQDQ」という新命令にも対応している。前者はAESの暗号化/復号化処理を高速化するもので、後者はキャリーなしの64ビット整数乗算を2つ同時に実行する命令だ。このキャリーなし乗算の高速化も、いくつかの暗号化アルゴリズムの暗号化/複合化を効率化するのに貢献するという。すでにインテルのコンパイラには、これらを利用するための関数が提供されているようだ。

モバイル向けCPUにおけるアーキテクチャの違い
製品名 Core i3/i5/7 Core i7 Core 2 Duo Core 2 Quad
開発コード名 Arrandale Clarksfield Penryn Penryn
アーキテクチャ Nehalem Nehalem Core MA Core MA
内蔵GPU Intel HD Graphics
内蔵メモリコントローラ DDR3-1066/800 DDR3-1333
内蔵PCI Express 2.0 16レーン(1x16) 16レーン(1x16)
プロセスルール 32nm(CPU)+45nm(GPU) 45nm 45nm 45nm
ダイサイズ 81nm2(CPU)+114nm2(GPU) 296mm2 107mm2 214mm2
トランジスタ数 3億8200万(CPU)+1億7700万(GPU) 7億7400万 4億1000万 8億2000万

Core i5/7におけるターボ・ブーストの仕様
シリーズ プロセッサー・ナンバー 基本動作クロック TB最大クロック(3〜4コア使用) TB最大クロック(2コア使用) TB最大クロック(1コア使用) 最低動作クロック GPUクロック GPU最大クロック
Core i7(Clarksfield) 920XM Extreme Edition 2GHz 2.26GHz 3.06GHz 3.2GHz 1.2GHz
820QM 1.73GHz 2GHz 2.8GHz 3.066GHz 1.2GHz
720QM 1.6GHz 1.73GHz 2.4GHz 2.8GHz 933MHz
Core i7(Arrandale) 620M 2.66GHz 3.06GHz 3.33GHz 1.2GHz 500MHz 766MHz
640LM 2.13GHz 2.66GHz 2.93GHz 1.2GHz 266MHz 566MHz
620LM 2.0GHz 2.53GHz 2.8GHz 1.2GHz 266MHz 566MHz
640UM 1.2GHz 1.86GHz 2.26GHz 667MHz 166MHz 500MHz
620UM 1.06GHz 1.73GHz 2.13GHz 667MHz 166MHz 500MHz
Core i5(Arrandale) 540M 2.53GHz 2.8GHz 3.06GHz 1.2GHz 500MHz 766MHz
520M 2.4GHz 2.66GHz 2.93GHz 1.2GHz 500MHz 766MHz
520UM 1.06GHz 1.6GHz 1.86GHz 667MHz 166MHz 500MHz
430M 2.26GHz 2.53GHz 2.53GHz 1.2GHz 500MHz 766MHz

tm_1001ci04.jpgtm_1001ci05.jpg CPU-Z 1.53.3におけるCore i3-330Mの情報表示画面。左がアイドル時、右がSuperπとCINEBENCH R10の実行時だ。開発コード名の「Arrandale」、「32ナノメートル」のプロセスルールなどが確認できる。EIST(Enhanced Intel Speedstep Technology)によりアイドル時は1.2GHz前後で動作する。TBには対応しないため、Superπ、CINEBENCH R10のレンダリング時ともに動作クロックは定格の2.13GHzだった

tm_1001ci06.jpgtm_1001ci07.jpgtm_1001ci08.jpg CPU-Z 1.53.3におけるCore i5-520Mの情報表示画面。左がアイドル時、中央がSuperπとCINEBENCH R10の実行時、右が最高クロック時(Superπで一瞬だけ上がった状態)だ。画面中央の「Instruction」の項目内にAES-NIのサポートを示す「AES」が確認できる。TBとEISTにより、動作クロックは頻繁に変化する。CINEBENCH R10のレンダリング(xCPU)実行中の動作クロックは2.66GHz前後で安定、シングルスレッドのSuperπでも一瞬2.93GHz前後になったくらいで、ほぼ2.66GHzだった。Superπでも最高クロックにならないのは、Windows 7ではOSがスレッドをランダムに割り振ってしまい、1コアだけがアクティブな状態になりにくいためだろう。それよりも負荷の強いレンダリング中でも2コアの上限までクロックアップするのはかなり驚きだ

tm_1001ci09.jpgtm_1001ci10.jpgtm_1001ci11.jpg Core i7(Clarksfield)のCPU-Z 1.53.3による情報表示画面。左がアイドル時、中央がSuperπ実行時、右がCINEBENCH R10実行時だ。クアッドコアのため、定格動作クロックは1.6GHzと低く設定されている。EISTによりアイドル時は933MHzまで下がる。Superπ実行中はほぼ2.4GHzで、2コアアクティブ時の上限だ。4コアをフルに使うCINEBENCH R10のレンダリング(xCPU)中のクロックもキッチリスペック通り、4コアアクティブ時の上限である1.73GHzだった

Sony Style(ソニースタイル)

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