年始記事では「Microsoft決算に注目」と書いていた。これが意図していたのは、MicrosoftがOEM経由のOSライセンス販売依存から脱却して、Office 365を含むクラウド事業へ2016年内にどれだけシフトできるのか、ということだ。
似たような話題は5月に公開した記事「Windowsの会社から脱皮するMicrosoft 悩ましいのはMobileか」でも触れているが、あらためて検証してみよう。
Microsoftは10月に同社会計年度で2017年度第1四半期(2016年7〜9月期)の決算を発表しているが、事業区分別に前年同期比の売り上げを見ると、「Productivity and Business Processes」が6%増、「Intelligent Cloud」が8%増、「More Personal Computing」が2%減となっている。
大まかに言うと、Officeを含むビジネスアプリケーション群がProductivity and Business Processes、Windows Serverを含むクラウドソリューションがIntelligent Cloud、それ以外のPC OSライセンスを含む個人向け事業がMore Personal Computingの内訳だ。つまり、クラウドとOffice事業の売り上げが伸びたことを示している。
ドル高の影響による売り上げの減少は2017年度第1四半期にも影響を与えており、ドル高がより進むと予想される第2四半期ではさらに減少が見込まれる。しかし、Windowsからクラウドへのシフトが着実に進みつつあるのは確かだ。少しずつではあるものの、2020年ごろにはより顕著になって業績に現われているはずだ。
先ほど「VR/ARが盛り上がった2016年のWindows」と紹介したが、筆者の視点では実際にこれらの分野が本当に盛り上がってくるのは2017年以降のことで、2016年は「エンタープライズとクラウドの年」だったと考えている。
2016年にはWindows Server 2016が正式にリリースされたほか、Microsoftとしては過去最大規模となるプロフェッショナル向けソーシャルネットワーク「LinekedIn」の2.8兆円での買収が完了など、今後につながるいくつか重要なトピックが出てきている。
この辺りの盛り上がりは、9月末に米ジョージア州アトランタで開催されたイベント「Ignite 2016」のレポートでも紹介した。クラウドを利用したAI Botの仕組みはビジネス事情も大きく変化させる可能性を秘めているなど、2017年以降に同社の中核となりそうな事業やサービスが2016年には多く発表されている。
後で振り返ってみて「2016年はMicrosoftの方向性を決定づけた年」と言われるようになるかもしれない。
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