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» 2010年03月15日 22時30分 UPDATE

「技術面は我々がリーダーシップを発揮している」――Ericssonの戦略と優位性

モバイルブロードバンドがHSPAからLTEへの移行期に入りつつある現在、世界トップシェアのネットワーク機器ベンダーであるEricssonは、どのような戦略で事業を展開していくのか。また同社の優位性とは。日本エリクソン 代表取締役社長のフレドリック・アラタロ氏が説明した。

[田中聡,ITmedia]

 日本エリクソンが3月15日、「新時代に向けたVisionと技術戦略セミナー」を開催。LTEやHSPAのネットワーク技術におけるEricssonの戦略や、Mobile World Congress 2010で披露したサービスの中から、同社の新しい取り組みを示すものを紹介した。

モバイルブロードバンド機器の中心は「テレビ」

 日本エリクソン 代表取締役社長のフレドリック・アラタロ(Fredrik Alatalo)氏は、モバイル市場のトレンドとして、ユーザーが携帯端末(モバイルインターネットデバイス)を使用する際に操作性を重視するようになったことと、ネットワークの世界ではクラウドコンピューティングが普及していることを挙げた。「GoogleやMicrosoftが注力しているクラウドのメリットは、1カ所へサービスを集中できること。これにより、開発コストを下げ、幅広い機器へサービスを提供できる」(アラタロ氏)

photophoto 日本エリクソン 代表取締役社長 フレドリック・アラタロ(Fredrik Alatalo)氏(写真=左)。Ericssonが考えるケータイ市場のトレンド。同社はアジアも重要な市場とみている。「アジアの中心的な存在である日本はもちろん、バングラディッシュや中国、ベトナムなどの新興国をカバーすることも重要。これはEricssonだけでなく、多くの企業が感じていることだ」とアラタロ氏は説明する(写真=右)

 HSPAやLTEをはじめ、これからはモバイルブロードバンドが携帯電話事業のカギを握っている。Ericssonが目指すモバイルブロードバンドの世界は、さまざまな機器をネットワークにつなげ、通信事業者が提供するサービスを利用できるというもの。こうした機器の中で同社が注目しているのが「テレビ」だ。「テレビはモバイルブロードバンド機器の中心にある。(インターネット経由で映像を配信する)IPTVは標準化が進められており、ユーザーはテレビからさまざまなサービスに接続できるようになる。新しい広告配信や、ケータイと組み合わせたメッセージサービスも可能になるだろう」(アラタロ氏)

photophoto テレビを中心に自宅のモバイルブロードバンド環境を構築することを狙う

Ericssonの優位性はネットワークの品質

photo ケータイの音声サービスの加入数は現在は約80億で、ユーザーは約43〜44億に上る

 携帯電話市場は成熟期を迎えたともいわれているが、アラタロ氏は「まだ成長の余地はある」とみている。「ケータイのサービスはまだ音声が大多数を占めているが、モバイルブロードバンドのトラフィックは2009年から2015年にかけて約1000倍伸びると予想している。トレンドの成長を予測してどう対応するかが重要だ」と同氏は説明する。

 モバイルブロードバンドは現在、HSPAからLTEへの移行期にさしかかっており、Ericssonは2020年までに500億の機器がLTEに接続することを目指す。「LTEチップセットの価格はそれほど高くはない。カメラや冷蔵庫、PCなどにも無線技術を搭載していきたい」と同氏は意欲を見せる。通信事業者にとっては、音声サービスに加えてモバイルブロードバンドサービスに課金をすることで、年間28%の収益増加が見込まれるという。

 HSPAについて、Ericssonは現在315の商用ネットワークを提供しており、対応機器は2100以上に及ぶ。日本ではイー・モバイルが下り最大21MbpsのHSPA+サービスを提供している。2010年は下り最大42Mbpsのサービスを日本を含む世界で開始する予定だ。LTEはHSPAのソフトウェアをアップグレードすることで利用可能になることから、「HSPAもビジネスとして生き残っていける」(アラタロ氏)という。

 また、3GPPが策定する仕様の1つ「Release 9」では、(2つの基地局から電波を受信する)デュアルセルで(複数のアンテナを組み合わせて電波を受信する)MIMOを利用でき、下り最大84Mbpsを実現する。

photophotophoto HSPAは現在、133カ国で315の商用サービスが提供されている(写真=左)。HSPAの速度についてのロードマップ(写真=中)と速度ごとのエリア分布(写真=右)

 ほかのネットワークベンダーと比較した場合、Ericssonの優位性はネットワークの品質が優れていることだとアラタロ氏は強調する。2009年の調査によると、欧州やアジアをはじめとする全地域で、Ericssonのネットワークを利用したダウンリンクが最速との結果が出ており、アラタロ氏は「技術面では我々がリーダーシップを取っていると信じている」と胸を張る。

photo ダウンロードの時間と速度は、Ericssonのネットワークが最速という調査結果が出ている
photophoto EricssonはCO2削減の取り組みも積極的に行っている。ソーラー発電なども開発し、年間10%ずつエネルギーを効率化する取り組みを続けている

HSPAかLTEかの選択は「難しい問題」

 EricssonはLTEで150Mbpsの通信速度を出すことを2010年の目標としている。すでにVerisonやAT&T、NTTドコモなど主要な通信事業者がEricssonのネットワークを選定している。一方、KDDIはLTEのネットワークベンダーに日立製作所を選定しているが、アラタロ氏は「まだ何も決定していない」と前置きしつつ、EricssonもKDDIとの事業展開を検討していることを明かした。また同氏は、Ericssonの機器は、HSPAからLTEへアップグレードする時期を選択できることも強みとした。

photophoto LTEの商用サービスを予定している通信事業者(写真=左)。日本4キャリアのLTEのロードマップ(写真=右)
photophoto Ericssonが実施したLTEのドライビングテスト。多くのエリアで30〜40Mbpsの速度が出ている(写真=左)。LTEにおけるEricssonの実績(写真=右)

 通信事業者にとって、LTEとHSPAどちらを選択すべきかは「難しい問題」とアラタロ氏は話す。「HSPAの通信速度は、初期のLTEと比べて大きくは変わらない。これから数年は、通信業者はどのようにLTEに移行すべきか模索するだろうが、(通信事業者は)W-CDMAやHSPAのサービス提供を経験しているので、LTEへの移行は難しくはないだろう。ただ、通信事業者はネットワークだけでなく、端末コストも気にかけている。LTEの初期段階では端末を大量生産しないことが予想されるので、その点は課題といえる」

車の事故防止サービスや家電制御サービスも開発

 Ericssonは無線通信のインフラを提供する一方で、ユーザーの生活に密着したサービスの提供にも注力しており、Mobile World Congress 2010でその一端を披露した。その中の1つが、無線LANを利用した車向けのサービス。前方の車が急ブレーキをかけると後続車に知らせる(モニターに危険信号を出す)「Hazard Warning」や、映像や音楽の配信サービスなどを利用できる。

 ホームゲートウェイを利用した家電制御サービスでは、自宅に設置したホームゲートウェイを経由することで、ケータイから(自宅の)家電の電力消費量を確認できるほか、電源をオン/オフにできる。家電と制御装置の通信には短距離無線通信規格の「ZigBee」を使用している。

photophotophoto 無線LANを利用した車向けのネットワークサービス「Connected Car」(写真=左、中)。ケータイから自宅の家電をコントロールできるサービス(写真=右)
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photophoto 通信事業者向けにアプリケーションストアの"仕組み"を提供する「eStore」。ストアの提供者は通信事業者となる。Ericssonの名前は出さず、アプリの開発環境やサーバを提供する
photo テレビ、PC、ケータイとして利用できる「IPTV REMOTE」

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