「総務省の“天の声”で1事業者に決めていいのか」――携帯向けマルチメディア放送の行方民主党が「勉強会」を開催(1/2 ページ)

» 2010年08月04日 10時11分 公開
[田中聡,ITmedia]

 民主党が8月3日、携帯向けマルチメディア放送の勉強会を衆議院第2議員会館で開催した。

 今回の勉強会は、民主党が結成した情報通信議員連盟のワーキンググループ(分科会)の一環として開催されたもの。総務省と、マルチメディア放送の受託事業者として申請中のマルチメディア放送(以下、mmbi)とメディアフロージャパン企画(以下、MJP)が、マルチメディア放送の現状や実現に向けた取り組みなどを説明。その後、民主党衆議院議員らによる質疑応答が行われた。

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ケータイに最も優れた方式は何か――小野寺氏

photo NTTドコモ代表取締役社長 山田隆持氏

 総務省 情報流通行政局 総務課長の大橋秀行氏は、マルチメディア放送では、2011年に停波するアナログテレビのVHF帯(207.5MHz〜222MHzの14.5MHz)を用いること、端末に蓄積させた形でコンテンツを視聴できることや、(mmbiが推進する)ISDB-Tmmと(MJPが推進する)MediaFLOが技術基準を満たしていることなどを説明。「どういうサービスを誰に提供するかは、ソフトを提供する委託放送事業者が決める。たくさんのソフト事業者が多様な形で参画できるよう、しっかりした船(受託放送事業者)を決めたい」と話した。

 mmbi側の説明では、NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏が、サービス開始5年目で対応機種を累計5000万台出荷し、ドコモの動画サービス「BeeTV」の月額315円と大差ない料金にすることを言及。品質を保ちながら設備コストを削減できるよう、大規模局方式を採用する。またmmbiの資料では、設備投資額がMJPの961億円であるのに対し、mmbiは438億円。委託放送事業者向けの利用料金(1MHzあたり、5年契約)がMJP約29億円であるのに対し、mmbiは約10億円。これらの点から、mmbiの方が料金面で有利とする旨が説明されている。

photo MJP代表取締役社長の増田和彦氏

 MJP側は、まずKDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏が「何がケータイにとって最も優れたシステムか。ISDB-Tmmはモバイル用として本当に十分な規格なのかが疑問だ」と切り出した。「ISDB-Tmmは(ワンセグに使われている)ISDB-Tから何を変えたのかといった報告がいっさいない。当社の技術屋も私も分からない」と話す。「沖縄での実証実験を経てコンテンツプロバイダーとも十分に協議し、品質が十分であることも確認している。KDDIが80%出資していることもあり、MJPとは一体となって運営していきたい」

 MJP代表取締役社長の増田和彦氏は、MediaFLO端末は間欠受信で省電力を図ることができ、低速移動時にも品質が安定していることが優位点だとアピール。MediaFLOの商用サービスが提供されている米国では、シャープがMediaFLO端末を供給しており、「国際競争力にも寄与する」とした。

総務省の“天の声”で1事業者に決めていいのか――勝又議員

photo 総務省 情報流通行政局 総務課長 大橋秀行氏

 すでに受託放送事業者は“1社”という前提で検討が進められているが、衆議院議員からの質疑応答では、まず勝又恒一郎議員が「そもそも、マルチメディア放送の参入事業者の枠はなぜ1つなのか」と根本的な疑問を投げかけた。これに対し大橋氏は「2つの事業者がサービスを提供すると、インフラが単純に2倍になり、帯域は半分になる。また、各事業者が(MediaFLOとISDB-Tmm)を自社の端末のみに採用すると、どちらかの端末で他方のサービスを受けられないことが起こりうる。そうなると、同じ番組を異なる周波数で流さないといけない」と説明し、1社の方が健全なサービスを提供できるとした。

 マルチメディア放送の受託放送事業者は、2社が提出した開設計画案について、総務省が電波監理審議会へ諮問し、答申を得て決定する。この点について勝又氏は「電波監理審議会に受託放送事業者を判断する能力があるのか」と質問。大橋氏は「総務省が評価した上で第三者(電波監理審議会)から意見をもらう。総務省はプロフェッショナルな立場から評価するので、しっかりした結論を導き出せると考えている」と答えた。

 それでも、「利用者の立場で優劣が決まるのが世の中の主流なのでは? そこを総務省が天の声で決めた理由は何なのか」と勝又氏は迫る。すると大橋氏は「無限に帯域があれば話は違ったかもしれないが、14.5MHzを前提とすると、1事業者が適当だと考える。関係者や専門家の意見も取り入れた」と話し、独断で決めたわけではないことを強調した。

 マルチメディア放送の未来をどのように予測するのか、という点について大橋氏は「5年、10年後の確実な事業展開を予測する術はない」とコメント。「納得できるよう、(mmbiとMJPには)企業秘密に関わることも含め、詳細なデータの提出をお願いしている。それらを比較考慮しながら相当の時間をかけて議論している。最善を尽くすしかない」

電波オークションをすべき――岸本議員

 岸本周平議員は「パラダイムシフト(劇的な変化)を起こしてほしい」と話し、「設備投資をすることで雇用が起きて経済が活性化する」ことから、「2事業者にすべき」とのスタンスを取った。また、「電波監理審議会を経て手続きは万全だと言うが、そうではない」と疑問を呈した。「電波監理審議会は総務省の隠れ蓑になっている。審議会から上がってきたものが否定されたことは今までになかった。そもそも、審議会にはマルチメディア放送について理解できる方々はいない。私は主税局にいたことがあるが、審議会の方々は税制についてはほとんど素人だった」

 さらに、「役人がコントロールするのではなく、電波オークションをすべき」との提案もした。「今回は電波オークションをするには最適な事例。マルチメディア放送は規模の小さいマーケットなので、法外な値段になることは避けられる。官僚が○×を付けて恣意的に選ぶのなら、電波オークションをした方がいい」

mmbiのネットワークは本当に大丈夫?――高井議員

 今回の勉強会の司会を務めた高井崇志議員が、携帯向けマルチメディア放送の目的を総務省に質問すると、大橋氏は「放送のパラダイムシフトを起こし、新しい産業やサービスが生まれることを期待する」と回答。さらに、「放送会社の参画を排除するわけではないが、多様な放送事業者の参画を委託の世界で実現したい。ベンチャー系の企業にも大いに参加いただきたい」と期待を寄せた。

 マルチメディア放送は、まず受託放送事業者を決定してから委託放送事業者を募るが、高井氏は「受託放送事業者を先に決めてビジネスがうまくいくのか、委託放送事業者はどのように決めていくのか」と問いかけた。大橋氏は「連立方程式を解くような気持ちで、我々も悩みながら取り組んでいる。委託放送事業者は、コストが分からないと事業計画を立てられない。委託放送事業者の参入は、ある意味で入札のようなもの。金銭面の条件を示さないと参入できないのでは」と話した。

photo mmbi代表取締役社長 二木治成氏

 ただ、「正直、絶対の自信があるわけではない。これでは参画できないという声も届いている」と大橋氏が話すように、積極的な声があまり聞こえていないのも事実。同氏は「それでもあえてやっていくだけの価値はある」と考える。「大きな新産業が登場するかもしれない。潜在的な可能性はものすごい大きいマーケットだと考えている」と期待を込めた。

 高井氏はドコモに対しては「ネットワークの品質は本当に大丈夫なのか」と質問。これにはmmbi代表取締役社長の二木治成氏が「大規模の基地局だけでなく、その周辺を中規模局で固める。ビル陰にはギャップフィラーを使うので、エリアは問題ない」と回答した。「ISDB-Tmmの仕様を公開する予定はあるのか」という点については、「すでにチップは開発中。メーカーに作ってもらう運用規定も(2010年)秋には公表してすぐに対応できるようにする」とした。

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