理想的な上司と部下の関係とは――部下の育成方法何かがおかしいIT化の進め方(17)(4/4 ページ)

» 2005年06月21日 12時00分 公開
[公江義隆,@IT]
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もう1つ、大切なことがある

 例えば、外国人と仕事をしていて、同じ問題に対して同じことをお互いにいいながら、「相手の考えていることと、自分の考えていることが何となく違う」と感じることがある。これはその問題の背景にある概念(コンセプト)に違いがある場合によく起こる。

 IT・情報システムというものに対する概念も、米国と日本では、また会社や業種によって何か違いがあるように感じることが時々ある。

 当人にとっては、新しい概念(考え方や価値観、全体がどんなことか、どんなものか……)の把握や理解は、分かってしまえばなんでもないようなことでも、そこへ至るまでには大変苦労する場合が多い。世の中の多くの具体的な事象は、ある概念の上に構成されている。概念は全体と個の関係からいえば全体に相当するものであるが、抽象性が高いために言葉の説明だけでは理解や納得が難しい場合が多い(概念について関連記事:本シリーズ 8910回)。

 自分にとって新しい概念を理解しようとするときにも、自分の持っている既存の概念で新しいものを理解しようとしている。そのため、聴いたことや書いてあることは知ることができたが、理解できない・納得できないといったことがよく起こる。

 自分の既成の概念との間で合理性に反するものであったり、そもそも自分の中になかったものであったりするからである。合理性に反するものは、“その新概念は間違っている”とそのものを否定するか、新概念に対する“自分の理解が間違っている”と思ってしまうかのいずれかになる。いずれの場合も、結果的に理解できなかったことになる。

  話を聴く、会話やディスカッションの相手をするなど、分かっている人の助けの有無が新しい概念理解のスピードを大きく左右する。また、ここでの会話の中では、比喩が理解の助けになることがよくある。

 まず、身近なところで、自社の経営戦略を部下に理解させることなどを考えてみてはどうだろうか。経営戦略を、言葉として知っているだけでは役に立たない。自分たちの日常の仕事に具体的に反映されるようになって、初めて本当に理解できたことになる。

 皆でいろいろ議論してみると良い勉強になるはずだ。“経営”という自分たちの日常とは異なるレベルでの問題を理解する“戦略”とはどういうことか、また、経営改革を進める会社では、従来の常識にはない考え方があったりするはずだ。

 なお、会社の方針、自分の管理する組織の方針を部下に理解させることは、管理者のリーダーシップの重要な要件でもある。

profile

公江 義隆(こうえ よしたか)

ITコーディネータ、情報処理技術者(特種)、情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)

元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にかかわる


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