ゆでガエルになる前に情報子会社は経営の見直しを何かがおかしいIT化の進め方(33)(3/3 ページ)

» 2007年11月14日 12時00分 公開
[公江義隆,@IT]
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真に親孝行な情報子会社とは?

 親会社にとって一番ありがたいパートナーとしての子会社はどんな会社であろうか。

 客観的に考えてみれば答えは明白である。

 ほかにはできない高品位・高信頼性・高質のシステムを提供し、それが親会社の競争相手との競争力を増していることになるのがベストパートナーの要件だ。

 親にいくら従順であっても、この要件が満たされないなら、ビジネスパートナーとしての存在価値は低い。

 世界のITベンダに対して差別化できる競争力を持つことが真の親孝行のはずである。ベンダとユーザーの間には利害が相反する問題もある。ベンダ支配となった会社は、元の親会社から見て、ベンダ間の競争から得られるメリットはすでに失ったことになる。この先のストーリーをよく考えておく必要がある。

 繰り返しになるが、いま情報子会社にとって、中長期の経営計画の設定と実行の最後の機会のように思う。経営計画の策定にIT分野だからという特殊性はない。枠組みは教科書どおり、内容と、実行の徹底の勝負の問題であろう。うまい話はないはずだ。

 ここまで広がったIT分野の中では、数十人や100、200人規模の情報子会社でカバーできる範囲は知れている。あれこれやろうとしても中途半端なこと、即ち競争力のない結果になる。覚悟して競争力を蓄える分野を決め、ほかを捨てることだ。「できれば、あるいは余力があればやりたい」などというのが一番良くない。集中してやる分野をはっきりさせないといけない。やらないことをはっきりさせよう。この内容が戦略の中心になる。

 やると決めたことは歯を食いしばってもやるしかない。

 何もしないで、そのうちできるようになるといったうまい話はない。すぐには要求レベルに満たない課題は具体的な目標と政策を設定し、今日から行動に取り掛かるべきなのだ。

量の競争から質を問う世界へ

 量の戦い=コスト競争だ。シェアの取り合いの泥仕合である。業界全体がこの流れをつって疲弊し、また魅力にないものにしてきた。この流れの中からは、インドや中国、それらに続く国々に勝てるチャンスは少ない。

 グローバル化した今日、親会社に対してではなく、世界に対してアピールできる「質的側面の追及」戦略が求められる。過去数十年、日本の製造業のたどった経緯が参考になる。先輩分野の経験を生かすことだ。ITだけは別などということはない。強いていえば資本が少なくて済むソフト産業の「動きの速さ」と、「厚い人材や技術の蓄積のあった製造業の分野と、これがないIT分野」ではより条件は厳しいかもしれない。

 製造業で、安い労働力を求めて海外生産へのシフトが始まったのは30年前の話で、当初はコストダウンで業績を伸ばした企業も、やがて国内が空洞化した。生産技術を失い、結果的に、新製品開発技術の低下や効率的な工程設計に支障を来たすところも出てきた。

 このような状況は徐々に進行するため、気が付くのが遅れる。気が付いたころには相手は相当に力を付けた状態になっている。

 どの産業の中にも、大変嫌な言葉だが「勝ち組」と「負け組」企業がある。この違いはどこにあるだろうか。対岸の火事ではなく、他山の石にしてほしい課題である。

 国内で国際競争が起こり、あるいは長年付き合ってきた国内の顧客の需要が海外に取られるのがグローバル化だ。そんなことはよく分かっているとほとんどの方はいわれるだろう。しかし、日常が、本当にそれに基づいた行動になっているだろうか。

筆者プロフィール

公江 義隆(こうえ よしたか)

情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)、情報処理技術者(特種)

元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にもかかわる。


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