新たな10年で変わるモバイルビジネス──NTTドコモ 辻村氏に聞く(後編):新春インタビュー(1/2 ページ)

» 2010年01月03日 10時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 モバイルIT業界が大きな転換期を迎えた2010年。これから日本のモバイル業界が向かうべき道はどこなのか。前編に引き続き、業界のキーパーソン、NTTドコモの代表取締役副社長 辻村清行氏に聞く。

5スクリーン時代の到来とクラウドへのスタンス

ITmedia(聞き手:神尾寿) 2010年以降のモバイル業界のトレンドはどのようになっていくと予測されていますか。

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辻村氏 いくつかのトレンドがあるとは思いますが、その中で重要なのは「ユーザーを取りまくスクリーン」をどう捉えるか、です。

 これまで「テレビ」「PC」「ケータイ」が(ユーザーの周りにある)3大スクリーンだったわけですが、私はここに「デジタルフォトフレーム」と「カーナビ」が重要なスクリーンとして加わると考えています。

 まず、デジタルフォトフレームですが、これは9〜10インチのサイズで、単なるアルバム代わりだけでなく、(モバイル通信を通じて)ネット上のさまざまなコンテンツを表示したり、タッチパネルを搭載して電話などのコミュニケーションサービスを利用するような用途も考えられます。それは1つの(ネットサービスの)ウィンドウになり、ケータイの3インチ画面の小ささを補う存在になるでしょう。

 そして、カーナビは言うまでもありませんが、クルマでの(ユーザーの)移動を支えるという点で重要なスクリーンになります。

ITmedia 今までは3スクリーンだったものが、5スクリーン時代になる、と。

辻村氏 そう、5スクリーンです。そして、それらはFTTHや3Gによってインターネットにつながり、クラウドサービスで連携していきます。

ITmedia そのような時代に、ドコモはどのようなビジネスやサービスを考えるのでしょうか。

辻村氏 こうした複数の端末を利用する時代になると、UIやパーソナルデータの同期がとても重要になります。個々の端末でサービスのUIが異なったり、電話帳や写真などのパーソナル情報がバラバラに管理されていたりしたら、ユーザーにとっては使いにくいですよね。

 そう考えますと、このようなマルチデバイスの環境で、いかに使いやすいクラウド型のサーバサービスを提供するかが重要になります。ここがドコモの仕事として大切になっていくのです。

ITmedia 通信インフラのサービスだけでなく、ユーザーのパーソナルデータを預かったり、通信メディアや端末の違いを超えてデータやサービスを連携させる領域に踏み出す、ということですね。

辻村氏 そのとおりです。LTE時代になれば、サーバ側に多くのデータやコンテンツを保管し、ユーザーはそれをTPOに合わせてさまざまな端末から利用できるようになります。そう考えますと、モバイルのインフラをしっかりと構築しつつ、そういった(マルチデバイスが)連携する仕組みも作らなければなりません。ユーザーが5スクリーンのどの端末を使っても操作感が統一されており、パーソナルデータの同期がしっかりと取れている必要があります。

ITmedia まさしくクラウドの世界ですね。そこで重要になる要素は何でしょうか。

辻村氏 やはり確実で安全なユーザー認証技術ですね。そこで鍵になるのは、携帯電話の認証情報だと考えています。お客様が1人ずつ持っている回線契約に紐づく形で個人認証を行うのです。携帯電話は究極の個人認証番号を持っており、(その認証情報は)なりすましや不正利用ができません。ここがマルチデバイス時代における携帯電話キャリアの強みになっていくでしょう。

ARは「広義のAR」で考えていくべき

ITmedia マルチデバイス以外に、今後のモバイルビジネスで重要になる分野とはどのようなものでしょうか。

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辻村氏 そうですね。まず最近話題のAR(拡張現実)は、今後さらに重要な分野になっていくでしょう。しかし、ここで重要なのは、ARは「広義のAR」と「狭義のAR」に分けて考えるべきだということです。

 狭義のARは、ドコモでいう「直感検索」や「直感ナビ」のように、携帯カメラで撮影した映像にデジタルタグの情報が重なり合うようなものです。これはARの歴史では、とてもクラシカルなものですね。ビューワー的なARとでも言いましょうか。

ITmedia iPhoneなどで展開されている「セカイカメラ」もその範疇ですね。では広義のARとは?

辻村氏 広義のARは、現実空間の「見える部分」だけでなく、ユーザーの実空間での行動そのものを補強・強化していくものです。例えば、おサイフケータイやiコンシェルで、ユーザーの行動履歴を通じて提供される情報の最適化や選別を行う。これもまたARなのです。

ITmedia なるほど。実空間での行動を、サーバから提供されるコンテンツやサービスが支援する。これが広義のARというわけですね。しかし、そう考えますと、2004年のおサイフケータイ登場以降のドコモの取り組みの多くが、この広義のARに向かっていると言えそうです。

辻村氏 まさにそれを言いたいのです(笑) もちろん、直感検索・ナビのようにビューワー型のARも今後さらに進化し、さまざまなビジネスのチャレンジが起きるでしょう。しかし、実空間を補強するというARの本質的な可能性で考えますと、そういったビューワー型のサービスだけでなく、もっと広くARの可能性を捉えておいた方がいいと思います。ドコモはビューワー型のサービスにも取り組みますが、(おサイフケータイやiコンシェルを通じて)これら広義のARの開発に注力していきます。

ITmedia 医療・ヘルスケア分野はいかがでしょうか。こちらも2010年に大きく成長しそうです。

辻村氏 ウェルネスケータイなど携帯電話で気軽に健康情報を管理するというサービスは定着していくと思います。そして、その上で今後注目なのは、病院サービスとの連携ですね。すでにドコモでは東大病院との実証実験をしていますが、病院の予約からおサイフケータイを使った電子診察券、お薬手帳機能の対応など、(病院のサービスを)ケータイで利用しやすくなるスキームを開発しています。

 また、さらに長期的に考えますと、診察履歴や健康履歴情報はサーバ上で一元管理する世界になる。PHR(Personal Health Record/個人健康記録)ですね。こういった分野にも、携帯電話サービスは関わっていけると考えています。

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