フィルタリングか教育か、今すぐ対応が求められる“ケータイ以外”小寺信良「ケータイの力学」

» 2011年02月14日 19時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 前回、どうせ持たせるならケータイが一番マシという話を書いたばかりだが、それを実証するような事件が起こった。

 2月6日、2ちゃんねるの「自 称 古 参 に あ り が ち な こ と」というスレッド(参考:2ch勢いランキングの過去ログ)で、「2011年2月11日午後21時ピッタリに新宿駅(前、新南口だったところの階段の降りてハイウェイバスの入り口あたり)で3人組で通り魔を起こす。 死にたくない人はゲームに参加しないことだな!!」という無差別殺人をにおわせる書き込みがあった。報道によれば、警視庁は約80人体制で警戒、約500人のヤジウマが集まったとされるが、騒ぎはなかった。

 翌12日、警視庁は横浜市の中学3年の少年(15歳)を威力業務妨害容疑で逮捕したと発表した。書き込みでは29歳、27歳、30歳の男3人組を名乗っていたが、ふたを開けてみれば中学生1人のいたずらである。青少年の威力業務妨害の多くは、身柄を拘束しないで書類送検される例が多いが、この少年は大阪行き深夜バスのチケットを持っていたことから、逃亡の可能性ありとして逮捕されたというわけだろう。

 少年は、川崎市内の電器店で自分の「ニンテンドーDSi」を接続しているところを発見され、逮捕されている。

 類似のネット書き込み事件は、秋葉原無差別殺傷事件が起こった2008年に多発しており、今回と似たような例としては、2008年6月24日に携帯ゲーム機を使って他人の家の無線LANに接続し、「明日、東京の開成中学に討ち入りに行く」などと書き込んだとして、長野県の高校1年生が逮捕されている。このときのゲーム機が具体的に何だったかは報道されていないが、ネットに接続できる携帯ゲーム機で高校生が持つぐらいのものといえば、ニンテンドーDSシリーズかPSPぐらいしかないので、おそらくどちらかだろう。

 2008年には模倣書き込みで大人も子どもも大量に逮捕されているが、それがある意味見せしめ効果となり、翌年には減少した。3年が経過してまたこの事件の模倣が起こったということは、3年という時間がありながら、ネットリテラシー教育が十分に行なわれていなかったと考えていいだろう。ケータイを持たせる持たせないなどと議論している暇があったら、とっとと教育に着手すべきだったのだ。

この事件が指し示す課題

 この逮捕報道を読んで、疑問に思ったのが、電器店ではそんなに無線LAN回線をフル解放しているのか? という点であった。Twitterでこの疑問をぶつけてみたところ、興味深い答えがいくつか返ってきた。

  • パスワードを店番号に設定しているところがある
  • 各店舗に任されているので、フル解放している店もある
  • イー・モバイルなどのモバイルWi-Fiルーターのデモ機を利用する
  • ニンテンドーWi-Fiステーションを利用する

 特に今回はニンテンドーDSiであったことから、ニンテンドーWi-Fiステーションの線はありそうだ。Webブラウザ(ニンテンドーDSiブラウザー)は2009年秋以降出荷のDSiには標準で内蔵されているほか、DSiショップから無料でダウンロードできるという。標準ではフィルタリングはされておらず、フィルタリング機能を利用するには別途「i-フィルター for ニンテンドーDSiブラウザー」を月額315円払って導入しなければならない。

 このDSi版「i-フィルター」は、親がDSi本体を使って契約し、ブラウザに対してプロキシ設定を行なうことで動作する。しかし、そこまでやれる親がどれだけいるだろうか。おそらくゲームメーカーもケータイキャリアと同じように、フィルタリング無償提供、デフォルト設定オンという論調に巻き込まれるのは避けられないだろう。

 また電器店のネット回線をフィルタリングすべき、という意見もある。もちろんこれらのことが自主努力によって行なわれるのなら結構だが、制度化、法律化することに関しては、結局各地の青少年健全育成条例改正議論や青少年ネット規制法と同じ議論の繰り返しだ。それよりも先に、子どもへの教育があるべきだ。なぜならばネットリテラシー教育ならば、ケータイだゲーム機だパソコンだと個別対応する必要がなく、人のスキルとして身に付くからである。

 実は2008年に多発したネットの書き込みによる逮捕・補導事例は、教育に役立てられるよう特徴的な事件のみをピックアップして、MIAUのネットリテラシー読本のパワーポイント版セクション1(http://miau.jp/1286681400.phtml)に表組みとして収録している。そもそもセクション1のPDF版は、秋葉原無差別殺傷事件のすぐあと、2008年9月にはすでに無償公開している。教材はとっくにあったのだ。

 しかし防げなかった。それはMIAUというネットの組織の特性として、すでにネットに明るい大人・教育関係者には浸透してきたが、本当にネットリテラシー教育が必要な親・教員層にリーチできていないという弱点があるからである。これをカバーすべく、筆者があちこちのイベントや学校に出かけて講演をしているが、残念ながら1人での活動では草の根もいいところだ。ぜひネットに明るい人たちがリアル社会の現場で、MIAUの教材のことを広めてほしい。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は津田大介氏とともにさまざまな識者と対談した内容を編集した対話集「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(翔泳社)(amazon.co.jpで購入)。


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