「HTC J butterfly HTL21」 新しいHTCのDNAを“中身”を分解して知るバラして見ずにはいられない(2/2 ページ)

» 2013年03月29日 13時00分 公開
[柏尾南壮(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ),ITmedia]
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健闘する日本メーカー

 通信用のベースバンドチップはQualcomm製、信号増幅ICは米国Skyworks製や同じく米国に本社を置くRF Micro Devicesの製品であり、目立つ大型ICは海外勢が多い。一方、10個以上搭載され、小型ながら通信には不可欠な雑音除去用の表面波フィルタや、送信と受信を分離するデュプレクサは、村田製作所とTDK傘下の電子部品メーカーEPCOSの製品である。

 無線LANは、村田製作所の白い長方形のモジュールでワンパックとなった部品が搭載されるケースが多いが、中身は米国Broadcom製の通信チップの場合がほとんど。本機ではこの部分はモジュール化されず、米国Broadcom製の通信チップと米国Skyworks製の信号増幅ICが直接実装されている。

 日本特有の機能であるワンセグチップにはシャープ製と思われるICが使用されている。また基板上に大きく「SONY」とマーキングされたチップは、RFID及びその次世代規格NFCの両方に対応したチップである。さらにRFIDのベースバンドチップと推定される東芝製チップも近くに実装されている。

 通信機には不可欠の水晶デバイスも日本勢が健闘している。チューニング用音叉、NFC/RFID用、電源管理チップ用、プロセッサー用にセイコーエプソン製品が採用されており、1個の採用にとどまったニュージーランドのRakon製と台湾のTXC製を大きく引き離す。

PhotoPhoto メイン基板のほかに、近接センサーやSIMスロット、ヘッドフォンジャックを備える基板が別途用意されている
PhotoPhoto マイクやバイブレーターを備える基板も、リチウムイオンポリマーバッテリーを取り巻くように配置されている

バッテリーと液晶ディスプレイも日本製

 メイン基板を分離すると、その後ろのスペースをほぼ覆うようにリチウムイオンポリマーバッテリーが搭載されている。表面の印刷には「SONY」とあった。今回は幸運な事にソニー製バッテリーであったが、この分野は日本・台湾・韓国・中国の間で激戦が続いており、HTC J butterflyの海外モデル(HTC Butterfly)に搭載されているバッテリーは違うメーカーが製造したものである可能性がある。

 バッテリーを取り除くと、マグネシウムを含むプラスチック製のセンターパネルが現れる。この裏側に液晶ディスプレイとタッチパネルが接着されている。ここは定番の家庭用ドライヤーを用意し、温風・最大風量にしてタッチパネル部の角を熱して、冷えないうちに鉄尺を差し込んでみる。十分に加熱されて糊が溶けている場合、鉄尺がスッと入る。鉄尺の両側をドライヤーで熱して鉄尺をゆっくりと移動させると、5分程で1周し、センターパネルから分離できる。

 本機ではタッチパネルと液晶ディスプレイは接着されている。この方式の最大の特徴は、タッチパネルとディスプレイ間のスペースを設ける必要がなく、薄型化が可能という点だ。一方、一度接着してしまうと分離が難しく、どちらかに不具合が発生しても両方廃棄となる可能性があり、コスト高である点も事実である。

 ディスプレイには、1920×1080ドットのフルHD表示に対応した「Super LCD」と呼ばれる新型液晶パネルが搭載されている。HTC J butterfly発表時には、どのメーカーがこのパネルを供給しているのかに大きな注目が集まった。今回調査した端末にはジャパンディスプレイ製(ソニーの技術で製造)のパネルが採用されていた。IPS方式で液晶画素の配置パターンに特徴があり、通常は短冊の直線配置が多いが、本機では各短冊の上下が「く」の字型になる配置である。

PhotoPhoto 液晶ディスプレイはジャパンディスプレイ製のパネル。ガラスとタッチパネルが接着されているタイプで、薄型化に貢献している。画素の配置パターンが「く」の字型になっているのが特長だ

これからどうなる?

 ハイエンド端末が抱えるさまざまな課題にあえて優先順位を付けるとすれば、最も喫緊の課題は熱対策である。

 本機のCPUは4つのプロセッサーコアを搭載するクアッドコアタイプである。省エネの切り札として注目されており、ハイブリッド自動車のように、使わない部分を止めておくことができる。しかし「全力運転」した場合、大量の電力を消費し、副産物として熱が発生する。電子部品は熱に弱いため、主にプロセッサーとDRAMが発する熱を拡散させ、端末全体がほんのり温かくなるよう設計されている。現在の熱対策の主力技術は、熱源の熱を素早く伝導するシートを介して放熱特性の良いマグネシウム含有プラスチックなどに導いて放熱させるもので、熱伝導シートのメーカーとしてパナソニックとカネカが知られる。これらは厳密には電子部品ではないが、今後のハイエンドスマートフォンに不可欠の素材として一層重要度が増すだろう。

 ハイエンドスマートフォンに求められる性能は増大し、機能も増加しつつある。消費電力は一層大きくなり、副産物として発生する熱も増大するだろう。使用する電子部品は基準的なラインアップが決められている場合が多く、選択の余地が少ないが、熱対策の機構、部材の選択・配置は、スマートフォンメーカーの実力差が顕著になる分野の1つと思われる。「熱を制する者、スマートフォンを制す」のだ。

著者プロフィール:柏尾南壮(かしお みなたけ)

タイ生まれのタイ育ちで自称「Made in Thailand」。1994年10月、フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズを設立し、法人格は有していないが、フリーならではのフットワークの軽さで文系から理工系まで広い範囲の業務をこなす。顧客の多くは海外企業である。文系の代表作は1999年までに制作された劇場版「ルパン三世」各作品の英訳。iPhone 4の中身を解説した「iPhoneのすごい中身」も好評発売中。主力の理工系では、携帯電話機の分解調査や分析、移動体通信を利用したビジネスモデルの研究に携わる。通称「Sniper Patent」JP4729666の発明者。


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