「GALAXY S II WiMAX ISW11SC」 3G+WiMAX端末の“中身”を分解して知るバラして見ずにはいられない(1/2 ページ)

» 2012年06月12日 00時00分 公開
[柏尾南壮(フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ),ITmedia]

 今回は、2012年1月20日に発売された、韓国Samsung電子製のAndroidスマートフォン「GALAXY S II WiMAX ISW11SC」中身を見てみたい。GALAXY S II WiMAX ISW11SCは、au初のSamsung端末として注目を集めたモデル。型番からも分かるとおり、3G(CDMA)に加えてWiMAXに対応しているのが特徴だ。auのWiMAX対応スマートフォンは、auのスマートフォン型番「IS」の後に「W」が付き、WiMAX対応であることが一目で分かるようになっている。

Photo Samsung電子製の「GALAXY S II WiMAX ISW11SC」

 WiMAXというと、真っ青なガチャピンとムック、段ボール箱に突っ込むネコ「まる」のテレビCMなどが話題になったUQコミュニケーションズがおなじみだが、同社はKDDIと資本関係があり、KDDIはWiMAXを積極活用している。海外に目を向けると、WiMAXは韓国、台湾、ロシア、米国、欧州などでサービスが提供されている。国や地域によっては、国策として普及に力を入れているところもある。今回紹介するSamsung電子は日本に加え、米国でもWiMAX対応端末をリリースしている。

無線LANと携帯電話とも異なる部品が必要なWiMAX

 ところで、WiMAXとは何だろうか。ITmediaの読者には今さら説明は不要かもしれないが、改めて簡単に振り返っておこう。WiMAXは、Worldwide Interoperability for Microwave Accessの略語であり、世界共通の無線規格の1つである。もともとWiMAXは、光ファイバーやADSLによる高速インターネット網を敷設することが難しい地域向けに、家とインターネットを結ぶ無線インフラとして活用が検討されていたもので、モバイル用途に合わせて開発されたものではなかった。無線LANで安定してデータ通信が可能なのは、基地局から100メートル程度であったのに対し、WiMAXでは数十キロの通信距離があり、通信速度も最大70Mbpsと、当時の無線LANよりも優れていた(IEEE802.16-2004規格)。用途としては「未来型無線LAN」と言えるかもしれない。ここに時速100キロを超えるような速度で移動中の端末でも使えるようにしたのがモバイルWiMAX(IEEE802.16e規格)である。国内でWiMAXと呼ばれているのはこのモバイルWiMAXのことで、サービスは2005年に始まった。

 データ回線が空いていれば自由にデータを送ることが可能な無線LANに対し、WiMAX(モバイルWiMAXを含む)はデータ回線を細切れにするなどして送信者が特定可能な状態にした上で通信を行う。これは携帯電話と同じ仕組みだ。携帯電話は移動しながら使用することを前提に作られており、基地局との通信距離は10キロ以上である場合も多いのに対し、モバイルWiMAXの場合、高速移動は可能であるものの通信範囲は実質1キロ程度とされている。このようにモバイルWiMAXは、発想として高度な無線LANであり、仕組みは携帯電話に近く、それぞれの長所を併せ持つ存在である。このため、部品という観点では、モバイルWiMAX機能を実現するには、無線LANとも携帯電話とも異なる独自の部品を必要とする。まさに「第3の通信機」だ。消費電力の優劣については、今回調査するISW11SCを製造したSamsung電子が個別のバッテリ稼働時間を明らかにしていないため言及しない。

まずはSUPER AMOLEDディスプレイから取り外し

Photo GALAXY S II WiMAX ISW11SCを分解すると大きくこのような感じに分かれる

 ISW11SCの分解は、背面のカバーを外してバッテリーを取り外し、筐体外周のネジを緩めてケースを外す。すると基板が見えるようになる。基板にはさらにネジ止めされている部分があるのでネジを取り外し、基板に接続されているコネクタ類もすべて外すと、基板が筐体から外れる。

 基板は3枚構成で、メイン基板、SIMカードスロット等を搭載するサブ基板、アンテナ等と接続される下部基板に分けられる。サブ基板は両面テープでメイン基板に貼り付けられており、急いではがすとメイン基板上のEMIシールドも一緒にはがれてしまうので、注意が必要だ。メイン基板は片側に鉄板のEMIシールドがあり、背面は向かい合うセンターパネルがシールドの役割を果たしているため、カバー類はない。下部基板にシールド部は存在しないので、これで基板の分解は終わりである。

PhotoPhoto 左の写真はケースの背面をはがしてメイン基板を露出させたところ。基板は3枚構成で、SIMカードスロット部分と本体下部のアンテナ部分は別基板になっている。右の写真はメイン基板のディスプレイ側(組み込んだ状態の前面側)になる。Qualcomm製のベースバンドプロセッサ「QSC6085」とSamsung電子製のアプリケーションプロセッサ「Exynos C210」を搭載する
PhotoPhoto メイン基板の背面側。パーツが多いので写真が2枚あるが、同じものである。WiMAXチップやNFCコントローラ、電子コンパス、ジャイロ、加速度センサーなど多数のチップが所狭しと並んでいる

 次にディスプレイとセンターパネルを剥離する。ISW11SCはタッチパネルと有機ELディスプレイを接着して1つのユニットを構成しており、このユニットはさらにその下のセンターパネルと両面テープで接着されている。ここで登場するのが家庭用ヘアドライヤだ。温風にして最大風量でタッチパネルに近付け、周縁部に吹き付けて熱し、両面テープの接着剤を柔らかくする。タッチパネルの角を加熱して少し経つと、この部分にステンレスの定規(鉄尺)を差し込む隙間が生じる。定規を差込み、ドライヤーをあてる場所を少しずつずらしてゆき、定規をヘラのようにしてタッチパネルの加熱された部分を下からそっと押し上げる。表面のガラスは薄く簡単に割れるので注意が必要だ。

 ときどき横から内部を確認し、タッチパネルと基板を接続するケーブルを切断しないように注意しながら作業を進める。数分あれば、タッチパネルを割らずに取り外すことができる。有機ELは液晶と異なり反射板や偏光板が不要なうえ、画素が自発光するためバックライト用LEDも不要で機構は液晶よりシンプルだ。薄型化にも貢献している。

分解はこれで終了である。ここからは搭載部品について解説する。

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