“強いLTE”実現に向けた取り組みとは――ドコモに聞く、Xiのロードマップ接続率は「公表しない」(1/2 ページ)

» 2013年07月24日 10時45分 公開
[田中聡,ITmedia]

 現在の携帯電話では標準的な通信サービスになりつつあるLTE(4G)を、日本国内でいち早く展開したのがNTTドコモの「Xi」だ。ドコモは2010年末にXiの提供を開始し、2013年6月末時点で、Xiの契約数は1400万に上る。当初の通信速度は下り最大37.5Mbpsまたは75Mbpsだったが、現在は東名阪を除く一部地域で下り最大112.5Mbpsまたは100Mbpsの通信が可能になり、2013年度中には東名阪でも下り最大100Mbpsまたは150Mbpsの通信サービスも提供する予定だ。

photo 2010年12月24日にXiを開始して、2013年2月18日に1000万契約を突破。現在は1400万を超えていえる

 LTEサービスの先駆者ともいえるドコモは、現在どのような戦略でネットワーク事業を展開しているのか。そしてLTEの次世代通信サービス「LTE-Advanced」提供までのロードマップは――。NTTドコモ 無線アクセスネットワーク部 無線企画部門 担当部長の平本義貴氏、無線アクセス開発部 無線方式担当 主査の高橋秀明氏、無線アクセス開発部 無線方式担当 主査の柳生健吾氏に話を聞いた。

75Mbpsエリアは「面的にかなりのところは広げていきたい」

photo 無線アクセスネットワーク部 無線企画部門 担当部長の平本義貴氏

 現在、ドコモはどのような考えでXiのエリア化を進めているのか。平本氏は次のように話す。

 「Xiは高速スループットが一番の魅力。通信事業者からすると周波数効率が高く、増大するトラフィックに対応できるよう積極的に展開しています。特にトラフィックが高いところから中心に、エリアを広げていきたい。LTEは基地局からの距離によってスループットが大きく変わるので、ある程度の密度を保てるよう展開してきました。特に最近力を入れているのが、通勤通学の沿線上や、お客様がたくさん集まるショッピングモールなどのエリア化です。そういった場所でもしっかりとLTE通信が継続するよう、基地局をチューンアップしています」

 Xiの基地局は2013年3月時点で全国に2万4400局存在するが、これを2014年3月までに5万局に増強する。どのあたりを重点的に構築していくのだろうか。平本氏は「まずは都市部から順次展開していきます」と話す。「LTE化したにもかかわらず、『お客様がたくさんいてスループットが出ません』というわけにはいきません。現在、2GHz帯の10MHz幅を使った(下り最大)75Mbps化を進めつつ、1.5GHz帯の上にかぶせているエリアもあります。そうしたところも、5万局の中に含めて対策を打っていきたいですね」

 5万局を建てた後の見通しについて、平本氏は「明確にお出しできる数字はありませんが、引き続き、ゆるむことなく継続して展開していく必要があると思っています。我々は2011〜15年でトラフィックが12倍に増えると予測していますし、その後もそこで止まるとは思っていません。局数はさらに増えていくと思っています」と話し、インフラ構築にゴールはないことを強調した。

 Xiの契約が急増した1年ほど前は、増大するトラフィックに対してインフラ整備が追いつかず、Xiの通信速度が下がるケースが多く見られた。しかし75Mbps対応を含むXiの基地局の増設や、トラフィックの多いエリアでLTE電波を捕捉しやすくするためのチューニングなどにより、通信速度は改善されつつある。平本氏も「社内的な調査で(ドコモが速いという)結果が出ていますし、第三者機関の調査でも、ドコモの方がスループットが高いという結果が出ています」と手応えを感じている。一方で「努力が報われてきている部分もあると思いますが、トラフィックは今後も伸びていきます。今が良くても次のタイミングで良いとは限らないので、継続して対策を取ってます」と手綱を緩めない姿勢は変わらない。

 ドコモは現在、2GHz帯では20MHz幅(×2)のうち、5MHz幅(×2)を使って下り最大37.5Mbps、10MHz幅(×2)を使って下り最大75Mbpsのサービスを提供している。通信速度向上のためには、いかに75Mbps対応エリアを増やしていくかがカギを握っているが、75Mbps対応の基地局数は2013年3月末で6800局で、Xi基地局全体のうち約28%に過ぎない。これは、現在2GHz帯では3GとLTEで帯域を分け合っているため、3Gのトラフィックが減らないとLTE化を進められない事情によるところが大きい。それでも50%くらいには上げてほしいが、「半分といわず、面的にかなりのところは広げていきたい」と平本氏は意気込む。特に都市部は75Mbps化を進めやすいという。「Xi端末も増えていますし、リアルタイムで各基地局(3GとLTE)のスループットを見ているので、その状況を見ながら3GからLTEへ移行させています。都市部以外のエリアでも、広く75Mbps化を展開できると思っています」

 なお、7月24日時点で3月以降のXi基地局数は公表していないが、ドコモは6月末までに75Mbps対応基地局を1万5000局以上展開する予定としていた。

photo こちらは5月15日の発表会で公開された情報。山手線や大阪環状線では、Xiの接続率が約97%に達したという

7/26 16:55追記

 ドコモは7月26日の決算会見で、2013年6月末時点のXi基地局数が約3万局、75Mbps対応基地局が1万7300局であることを発表した。75Mbps対応基地局は、13年9月末で2万5000局に拡大することを目指す。また、下り最大150Mbpsのサービスは、13年10月末に開始する。

photo 7月26日に発表された、Xi基地局や通信サービスの最新情報

東名阪での150Mbpsサービスの見通し

 ドコモは1.5GHz帯では、15MHz幅(×2)を使って下り最大112.5Mbps、または100Mbps(上りはいずれも最大50Mbps)の通信サービスを提供しているが、これを利用できるのは現在、北海道、宮城県、青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県、新潟県、富山県、石川県、福井県、広島県、岡山県、山口県、島根県、鳥取県、香川県、愛媛県、高知県、徳島県、沖縄県の一部に限られる。1.5GHz帯は、現在タクシーなどで使われるMCA無線用に割り当てられている関係で、ユーザーの多い東名阪と九州で利用できるのは2014年春からとなる。

 トラフィックが比較的少ない地方から高速化が進んでいるというのももどかしいが、ドコモは2013年度中に、東名阪で下り最大150Mbps、または100Mbps(上りはいずれも最大50Mbps)の通信サービスを提供する予定。これは東名阪限定で使われている1.7GHz帯の20MHz幅(×2)をフルに使うことで実現する。下り最大150MbpsはLTE Category4、100MbpsはLTE Category3の端末が対応する。現在Category4に対応したモデルはHuawei製の「Ascend D2 HW-03E」のみだが、Ascend D2は1.7GHz帯には対応していないので、現在、150Mbps対応のドコモ端末はリリースされていない。150Mbpsの通信サービスは2013年度中に開始……ということで、2013年の冬〜14年の春モデルで対応機種が登場することが見込まれる。

 1.7GHz帯は東名阪を「かなり密に、広くカバーしている」(平本氏)が、全エリアをいっせいにLTE化するのではなく、一部エリアから進めていく見込み。エリアによっては半分の10MHz幅(×2)だけを使う可能性もありそうだ。平本氏は「そのあたりも含めて検討していますが、できれば(最初から)150Mbpsにしたいと考えています」と話す。

LTE-Advancedは187.5Mbpsかそれ以上を狙いたい

 37.5Mbps→75Mbps→100Mbps→112.5Mbps→150Mbps……と、順調に高速化を進めているXi。LTEの次期バージョンである「LTE-Advanced」では、複数の帯域を束ねる「キャリアアグリゲーション」によって、さならる高速化が可能になる。韓国では、6月にSK Telecomが世界初となるLTE-Advancedの商用サービスを開始した。

 ドコモは2015年度中にLTE-Advancedのサービス開始を予定している。LTE-Advancedは理論上、100MHz幅で下り最大3Gbpsまで高速化が可能だが、当初の通信速度はどれほどを想定しているのだろうか。SK TelecomのLTE-Advancedは、10MHz×2の20MHz幅を用いた下り最大150Mbpsだが、150Mbpsの通信サービスは2013年度中に東名阪で実現する。平本氏も「2年後の話なので、今年度に実現する150Mbpsでは面白くないですね。10MHz+10MHzでは特段何の魅力も感じないので、少なくとも10MHz+15MHzの187.5Mbpsか、それ以上のものを狙っていきたい」と話す。現時点で、どの周波数帯をどれだけ利用し、どのエリアから提供するといった詳細は、まだ決まっていない。「できるだけ準備を進めて、なるべく広いエリアでサービスを開始できるよう準備したい」(同氏)

 100Mbps前後の速度が出れば、スマートフォンの通信としては十分な感もあるが、LTE-Advancedでは何が変わり、どんなユーザーメリットがあるのだろうか。

 「スマートフォンが普及したことで、屋外で動画視聴をすることが増えて、最低限求められるスループットも増えています。そうした中で、LTE-Advancedは有効です。ピークスループットやキャリアアグリゲーションという技術が脚光を浴びていますが、LTE-Advancedのもう1つの特徴は、小さなセルをたくさん集めて全体のシステム容量を上げられる『ヘテロジーニアスネットワーク』にあります。これを活用して、一番混む時間帯でもスループットを底上げしていきたいと思います」と平本氏は話す。単純に通信速度が上がるだけでなく、トラフィックが多い場所でも安定して高速な通信が可能になり、いわゆる“パケ詰まり”がいっそう減ると期待される。

 LTE-Advancedをより効率よく展開できるよう、ドコモは「高度化C-RANアーキテクチャ」と呼ばれる高密度基地局装置の開発に取り組んでいる。マクロセルにスモールセルを追加して「アドオンセル」を構成することで、無線容量の拡大を図れる。平本氏は「装置の集約度が上がるので、コストを削減できます」とメリットを話す。

 LTEネットワークを用いた音声サービス「VoLTE(Voice over LTE)」については「並行して継続的に検討しています」(平本氏)とのことだが、提供時期などは未定。先日、ドコモが音声定額サービスを開始するといった報道があり、「VoLTE上で実現するのでは」との観測もあったが、「料金体系は、まだ検討しているかどうかも分からない」とのこと。

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